黒と白の狭間でみつけたもの (2)
トウコとベルは抱えていたツタージャとミジュマルを。
チェレンはボールから出したポカブをみせた。
「あら、すごーい!ポケモン勝負をしたからかしら。もうポケモン達も君たちを信頼しはじめた……そんな感じがするわね!ところで、ニックネームはつけてみた?」
あ、そういえば私たち、ポケモン勝負に夢中でつけてない。
「ニックネームをつけると、より信頼感が高まるわよ。もちろん、つけなくてもいいんだけれどね」
どうする?とアララギ博士は聞いてきた。
じゃあねぇと、始めに切り出したのはベル。
「あなたはマルちゃん。ミジュマルのマルちゃんよ」
「ミジュマ!」
ベルに名前を付けられて、ミジュマルはすごく嬉しそう。
ツタージャは、ぼくはどうするの?といった様子でみつめてきた。
どうしよう、トウコは悩んだ。
「僕は、このままにします」
チェレンはそう言った。
ポカブもそれでいいようで、コクンと頷いた。
2人とも、決めるの早いよう!
「トウコは?トウコは何にするの?」
「私は……。私は」
ええーっと……。
いいかな、これでいいかな?
「タッくんじゃ、いや?」
このツタージャ、男の子みたいだし。
「タージャ!」
ツタージャは気に入ったようで、トウコに向かって微笑んだ。
よかったぁ。
「ふふ、すごく良い名前ね!さぁて、本題に入るわよ!あなた達にポケモンを渡したのも、ちょっとお願いしたいことがあってのことなの」
そう言って、博士はトウコ、ベル、チェレン、それぞれに1つずつ何かを手渡した。
「これって、ポケモン図鑑!?」
チェレンが興奮気味に言った。
「ポケモン図鑑って、あの有名な?」
「すごーい。本物はじめてみた」
「そう、大当たり!これはポケモン図鑑。出会ったポケモンのことが自動的にわかるし、捕まえるとさらに詳しいことがわかるのよ。あなた達には、イッシュ地方を巡って、この図鑑の完成をお願いしたいの。お願いできるかしら?」
「もちろんです!」
「おもしろそう」
「はぁーい、あたしもやりたい!」
大賛成の3人の反応に、博士も満足そうだった。
「博士、ポケモンから図鑑まで本当にありがとうございます」
「本当にありがとうございます。博士のおかげでトレーナーになれたし」
「こんなにかわいい、ミジュマルもらえて幸せです」
「喜んでもらえたならよかったわ。じゃあ、図鑑の完成を目指して……。いいえ、もちろんそれだけが目的じゃなくて、これからいろんなことが旅の中であると思うけれど、それぞれ頑張って良いトレーナーになってね!」
アララギ博士に見送られ、トウコ達は研究所を後にした。
研究所を出ると、そこにはなぜかトウコとチェレンとベルの3人のお母さんとお父さんが待っていた。
ベルのパパだけは、いなかったけれど……。
「ポケモン図鑑の完成を頼まれたんだって?すごいじゃない……なんてね、実はその話、既に知ってることなのよね。」
トウコのお母さんはにやにやしながらそう言った。
「なんで?」
「実はね、前々から博士に頼まれてたの。だから知ってるってわけ。ほら、旅に出るなら地図は必需品でしょ?これをもっていきなさい」
お母さんは、タウンマップを手渡してくれた。
「ありがとう、お母さん」
チェレンもベルも、お母さんからタウンマップをもらっているようだった。
「大変だよ?ポケモントレーナー。でも、たくさんの出会いがあるわ。旅はきっとトウコにいろんな事を教えてくれる。頑張ってらっしゃい」
「はい」
ありがとう、お母さん。
町を出て行くのが、少しだけ寂しくて、切なくなった。
絶対に帰ってくることを約束して、それぞれの家族に見送られながら、トウコ、ベル、チェレンは歩き出した。
町はずれの1番道路。
草むらの生い茂る道。
きっと野生のポケモンも飛び出てくる。
そう思うと、不安と緊張と嬉しさが入り交じった。
「ねぇねぇ、最初の一歩は3人で一緒に行こうよ」
ベルが良いことを言い出した。
「いいね」
「ベルもたまには良いこというじゃない」
「もう、たまにってひどいよ、トウコ……」
「ほら、喧嘩しないでみんなで行こうよ」
チェレンがコホンと咳をした。
「じゃあ、私がかけ声するからね!」
ベルの指示に従って、3人は草むらに向かって横一列に並んだ。
「じゃあ行くよ!」
ベルが大きく息を吸った。
「せーのっ!!」
ベルのかけ声に会わせて、3人は大きな始めの一歩を踏み出した。
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (2) 作家名:アズール湊