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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (4)

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〈 第4章 謎の青年 「N」 〉

アララギ博士を見送ったあと、チェレン、ベルと別れたトウコはポケモンセンターにいた。

「ごめんなさい。わからないわ」

「そうですか」

何度目かの同じ返答を聞いて、トウコはため息をついた。

カラクサタウンにくれば、持ち主がいるんじゃないかと思ったんだけど……。

新しく仲間になった、ヨーテリーのテリムが拾ってきた、金色の四角いキューブ。

目立つから、持っているトレーナーがいれば、見た人くらいいるんじゃないかと思って、ポケモンセンターで聞き込みをしてみたけれど、情報はゼロ。

容易に見つかるんじゃないかと思った、自分の考えの甘さを思い知る。

「誰か探してるんじゃないかと思ったんだけどな……」

探し物を探している様子の人も見当たらない。

もしかしたら、もう他の町に移動してしまったかもしれない。

あきらめた方がいいのかな。

交番に預けようかと考えながら、トウコはベンチに腰かけた。

向かい側のベンチでは、2人の女の子が、楽しそうに話している。

ポケモンのコーディネートについて話しているようだ。

リボンとか、タッくんやテリムにつけたらかわいいだろうな。

盗み聞きしているわけじゃないけれど、笑い声と一緒に話し声が聞こえてきた。

「それでね!わたしのクルミルは、赤いリボンがお気に入りなんだけれど、この前草むらで落としちゃって大変だったの」

「えーー!かわいそう」

「そうなの。クルミルは泣いちゃうし、なかなか見つからなくて」

「そうだよねぇ、で、どうしたの?」

「それがね!きた道を戻って探してみたら、偶然あったの!」

「うそー!すごい!」

「ねぇー、わたしもびっくり!よく落とし物は、きた道戻れっていうけど、ほんとみたい」

落とし物は、きた道もどれ?

トウコはハッとして立ち上がった。

そうか。もしかしたら、落とした人、戻って探してるかも。なんで思いつかなかったんだろう!

トウコはポケモンセンターを飛び出すと、1番道路まで走った。

これで誰もいなかったら、あきらめる。

そう決めた。

1番道路の手前。

町と道路の境目にたどり着いたとき、トウコはすぐ側の草むらの中でしゃがみこんでいる人を見つけた。

若草色の長い髪を後ろに束ね、黒いキャップをかぶった、たぶん、男の人。

もしかして、落とし物を探してる人かな?

でも、草むらの中で、物探しをしているようには見えなかった。

視線を下に向けて、何かを話している。

丸っこいポケモン。

もしかして、野生のヨーテリー?

トウコはゆっくりと近づいた。

「あの……」

トウコが青年に声を掛けたとたん、野生のヨーテリーは慌てて逃げ去った。

青年が振り返る。

あ、悪いことしちゃったかな……。

トウコに気づいた青年は、立ち上がった。

すらりと背が高い、年齢もトウコより少し上だろうか。

怒ったのかな?

向き合った青年は、整った顔に、帽子を目深くかぶっていた。

帽子の影に透きとおった青色の瞳がみえたが、表情は無表情に近く、何も読みとれない。

青年はトウコに言った。

「君は、今のポケモンが話していたことがわかるかい?」

唐突な質問をされ、トウコは戸惑った。

え……?

どう返していいかわからず、黙り込むトウコ。

「そうか、君にも聞こえないんだね。かわいそうに」

青年はそう言って、草むらの方を見た。

「さっきのポケモンを見ただろう?あれがポケモン本来の姿だ。ボールに入れられてる限り、ポケモンは完全な存在になれない」

哀れむように青年は言った。

よく口が回ると思うくらい、早口に。

……ちょっと変わった人。

このままだと、青年のペースに巻き込まれそうだ。

トウコは、思い切ってきりだした。

「……あの、この辺りで落とし物をしていないですか?こういうのを、拾ったんだけれど……」

金色の四角いキューブ。

トウコがそれを鞄から取り出して見せると、青年は明らかに今までの人とは違う表情をした。

少年が宝物をみつけた時のように、あどけない笑顔を浮かべたのだ。

突然の笑顔にドキリとする。

「ボクのだ!」

そう言って、手を伸ばして受け取った。

嬉しそうに、金色の四角いキューブを握りしめる。

見た目は大人っぽいのに、まるでおもちゃを見つけてはしゃぐ子供のようだった。

こんなに喜んでくれたなら、返せてよかったわ。

その意外すぎる行動に、トウコは驚いたが、同時に、落とし物を持ち主に返せてほっとした。

青年は、その笑顔のまま、トウコを見る。

お礼を言われると思うと、ちょっと照れくさかった。

「ちょうど探していたところだったんだ。まさか、君が拾ってくれた人間だったなんて!」

青年は、笑顔でそう言ってトウコを抱きしめてきた。

え?!えーー!?

突然のことに、狼狽した。

心臓が跳ね上がって、動悸が激しい。

ぎゅーと抱きしめてくる感じから、ありがとうと言われているような気もする。

それでも…、それでもだ!初対面の相手に突然、抱きつく人なんているだろうか?!

しかも、こんなにきつく!

「わ、わかったから、離してくだあさい!」

声が裏っかえってしまった。

あたふたとしながら、青年の身体を引き離す。

青年に悪びれた様子は見られない。

むしろ、何で嫌がられたのかわからないといった風だった。

「トモダチに聞きながら探していた。さっき、仲間が人間に渡してしまったと聞いたから、もう戻ってこないと思っていた。君が拾ってくれた人間だったなんてね。君はトウコというんだろう?」

その言葉に、トウコは耳を疑った。

なんで…?まだ名前も言ってないのに……。

初対面のはずだ。知り合いから、紹介された覚えもない。

「名前、なんで知ってるの?」

「さっきのポケモンが話してくれたよ。君はポケモンの言葉は聞こえないんだね。でも、ポケモンの心をよみとることはできるんだろう?初めてだよ、そんな人間に出会ったのは」

「ポケモンと話したって……!?」

そういえば、さっきポケモンの声が聞こえるとか、そんなことを言っていた。

突然のことに動揺する。

ポケモンと話せる人間なんて会ったことがない。

トウコにとって、そんな人と出会うのは、夢みたいなものだった。自分と似たような力をもつ人が、もしかしたらどこかには、いるのかもしれないと、そんな人がいるなら話してみたいと、淡い期待を抱いたことはある。

それでも、こんな突然に現れるものなのだろうか。

今まで期待を裏切り続けられたこともあって、こんな突然のこと信じられなかった。

信じられない!……信じられないけれど、誰にも教えていない秘密を、彼はなぜか知っている。

知られたくない秘密。

誰にも話していないのに!

あの状況で、秘密を知ることができたのは、ポケモン達だけだ。

そう考えると、嘘を言っているようには思えなかった。

「ポケモンたちの声が聞こえるボク、ポケモンたちの心を読みとる君、似ていると思わないかい?もしかしたら、君なら僕たちのことを理解し、トモダチを救うことができるかも知れないね」