二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

黒と白の狭間でみつけたもの (4)

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

トウコの様子を見て、チェレンは青年に敵意をもったようだった。口調を強めて言う。

「……僕はチェレン。トウコの友達だ。博士に頼まれて、ポケモン図鑑を完成させるための旅に出たところだ。もっとも、僕の最終目標はチャンピオンだけど」

「ポケモン図鑑ね…。そのために幾多のポケモンを、モンスターボールに閉じこめるんだ。ボクもトレーナーだが、疑問で仕方ない。ポケモンはそれで幸せなのかって」

Nは哀れみにも似た表情を浮かべた。

そして、動揺しているトウコを見る。

タッくんのモンスターボールが、カタカタと音を立てて震えていた。

Nはそれをわかってか、にっこりと微笑んだ。

「……そうだね、トウコ。君のポケモンは、まだ何かを話したいようだ。君のポケモンの声をもっと聞かせてもらおう!」

人の気も知らないで、Nは早口で言うなり、勝負を仕掛けてきた!

Nの放ったボールから、チョロネコが飛び出してきた。

「チョロネッ!」

トウコは震えているモンスターボールをつかむと、叫んだ!

「タッくん!お願い!」

この人の言いたいこと、少しはわかる。

それでも、勝手にチェレンの前で、あのことを話すなんて!

絶対許さないんだから!

ボールから放たれた、ツタージャのタッくんは、すでに臨戦態勢だった。

「タージャーー!!」

飛び出したタッくんは、長くのばしたツルをチョロネコにくりだした!

大きくしなったツルが、チョロネコにむかう!

ツルはチョロネコの頬をかすめたが、うまく避けられてしまった。

「チョロネコ、なきごえだ」

「チョロ~~!!」

チョロネコは、大きな、なきごえをあげた。

チョロネコのなきごえがわんわんと木霊した。

タッくんが少し萎縮した。

「タッくん、たいあたり!」

「タジャ!」

チョロネコに、タッくんのたいあたりが決まるが、あまり効いていないのか、チョロネコは余裕の表情で立ち上がった。

「もっと!君のポケモンの声を聞かせてくれ!」

Nが言う。

負けたくない!

「タッくん、頑張って!」

トウコの声に、タッくんはうなづいた。

「チョロネコ、ひっかく」

「避けて!タッくん!」

すばしっこいチョロネコの攻撃が、ジャンプしたタッくんのしっぽをかすめた。

が、タッくんは機転を利かせて、尾のツルをぐいぐいとのばした。

急にのびた、緑のつるが、チョロネコの足に絡まる。

「チョロ!」

空中で足をとられたチョロネコは、そのまま、つまづいて転んだ。

地面に落ちる。

スキあり!

「とどめよ!タッくん。つるのムチ!」

バシンとチョロネコに直撃する。

チョロネコは、起きあがろうと必死に足の力を入れたが、そのまま起きあがれず、鳴き声を上げると倒れ込んだ。

タッくんは、ガッツポーズをした。そして、Nをにらむと、指さして何かを言った。

「タジャ! タージャジャ!タジャーータッ!!」

何を言っていたのかは、わからない。

それでも、私の代わりに怒ってくれたような気がする。

Nはタッくんの言葉に、驚きを隠せない様子だった。

「そんなことをいうポケモンがいるのか……!?」

信じられない様子で、そう呟いた。

ふんっと鼻息混じりに、苛立ったタッくんは、Nにもう一度にらみをきかせ、自分からモンスターボールの中に戻ってしまった。

「ありがとう、タッくん」

トウコがそう言うと、ボールの中で、タッくんは照れくさそうに頭をかいた。

トウコはボールをしまい込んだ。

Nは傷ついたチョロネコに近づいて、チョロネコをそっと抱きしめていた。

「ボクがふがいないばかりに、ごめんねチョロネコ」

そう言うNの表情を見て、トウコはハッとした。

泣いてしまうのではないかと思うくらい、苦しそうな表情だった。

見てるこっちが痛々しいくらいだ。

不思議な人。

はじめは、変わった人だと思った。そして、勝手な人だと思った。

大人なのか、子供なのか…。

考え方もどこかずれているし、よくわからないことも言う。

何を考えているのか、つかめない人。

秘密をばらされた時には、かっともなった。

それでも、チョロネコを大事に抱える姿を見ていると、怒りはだんだんとどこかへ消えていった。

この人、ポケモンが大好きなんだ。

傷ついたポケモンを見て、自分が辛くなるくらい。

本当は、ポケモンバトルをすることさえ、彼は嫌なのかも知れない。

大好きなポケモンを思う、Nの気持ちがひしひしと伝わってきた。

優しい人……なんだろうな。

勝負に勝ったら、一言くらい何か言ってやろうと思っていたはずなのに、忘れてしまった。

Nは、チョロネコをモンスターボールにそっと戻すと、握りしめたそのボールを見つめた。

「……モンスターボールに閉じこめている限り、ポケモンは完全な存在になれない。 ボクはポケモンというトモダチのため、世界を変えなければならない」

そう言って、Nはトウコとチェレンを気にもかけずに、足早にどこかに行ってしまった。

「……おかしなやつ。だけど、気にしなくていいよ。トレーナーとポケモンは、お互い助け合っている!」

チェレンはそう言って、トウコを見つめた。

何か言いたそうなことはわかった。

無意識に目を逸らしていた。

「……じゃあ、僕は先に行く」

チェレンは、何か考えているようではあったけれど、問いつめてはこなかった。

「次の街、サンヨウシティのジムリーダーと早く戦いたいしね」

じゃあね、とチェレンは手を振って、2番道路の方へ行ってしまった。

ごめんね、チェレン。

言えなかった。

いつか、楽に話せるときがくるといいんだけれど……。

トウコは、遅れた冒険の買い物をすませるために、フレンドリィショップへと向かった。