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アズール湊
アズール湊
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黒と白の狭間でみつけたもの (6)

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( 第6章 夢の跡地 )

ポケモンセンターの前では、すでにベルが待っていた。

まだ少し怒っているのか、膨れっ面だ。

「もーう、トウコ!」

「ごめん、ごめん!」

「どうせ、ジムにでも行ってたんでしょ?」

ギクリとした。

さすが、幼なじみ。すべて見透かされていたみたいに、ばれているようだった。

「やっぱりー…。トウコのことだから、絶対どっかに行くとは思ったけどね。勝ったんだよね?」

「うん、ばっちり!」

「はぁー、やっぱりすごいや。あたしも明日、頑張らないと!」

ベルは、決意なのか、あきらめなのか、どちらともとれるような大きなため息をつくと、気持ちが入れ替わったのか、にっこりと笑った。

「じゃあ、行こうか夢の跡地」

ベルに連れられて道なりに歩く。ちょうど、トウコがきた道を戻るかんじだった。

さきほどのサンヨウジムを通り過ぎ、さらに町の奥。町や住宅地とも逸れた場所に向かった。

そして、公園とも違う不思議な場所に到着した。

緑が多く、整えられているようにも見えるが、わざと整備せずに放っておいて、自然を残したような所。近くには、色あせた看板もあった。

【新人トレーナーの遊び場 夢の跡地】と書かれている。

アスレチックとも違う。新しい建築現場、ってわけでもなさそう。

昔、何かの建物があったのか、それとも作りかけのまま終わったのか、建物の骨組みや屋上へつづく階段が、そのまま残っている。

そこに、空のドラム缶やら、木の材木やらがところどころに置いてあって、門のように、柵の囲いまでしてあった。

ひょろりとのびた木の裏側には、街の中の一角だというのに、草むらが茂っている。

静かな場所。

まるで、道路にある自然の草むらみたいだった。

「ここが、夢の跡地だよ!」

にっこりと笑ってベルが言った。

「へぇ~、じゃあここにムンナがいるの?」

「そうなの!さっそく、草むらに入らないとね!」

到着するなり、トウコがいるのもお構いなしに、ベルは柵の中へ嬉しそうに駆けていった。フェンスを越えて、緑の深い草むらに入っていく。あっという間に建物の奥へ行ってしまった。

「もーう!勝手に行っちゃうんだから……って私も人のこと言えないか」

トウコはくすりと笑って、ゆっくりベルのあとを追いかけることにした。

夕方で薄暗くなってきたせいか、辺りにトレーナーは見当たらなかった。

それでも、地面にはポケモン達の足跡がたくさん残っていた。昼間はトレーナーがたくさんいたのかもしれない。

新人トレーナーの遊び場ってくらいだ。新しいトレーナーと友達になれるチャンスだったのかもしれないと思うと、もっと早くくればよかったかなと、トウコは思った。

柵の中に入ると、建物の名残を残した真っ白な大きな壁や柱が、夕日に照らされてオレンジ色に染まっていた。

まわりに生えた緑の草むらと合わさって、なんとも幻想的な風景になっている。

「綺麗…」

こんな素敵な場所に住んでいる、ムンナってどんなポケモンなんだろうか。

トウコも草むらの中で、探してみようと思った、その時ベルの叫び声が上がった。

「きゃーーー! やめて!!」

なに?どうしたの!?

ベルの声のした方へ、トウコは急いで走った。

ベルが大声で叫ぶなんて、よっぽどのことがあったに違いない。

トウコが駆けつけた時、ベルは銀色のコスチュームに身を包んだ、2人組と向かいあっていた。

この2人に何かされたのかと思ったが、ベルに傷はなかった。では何がと思ったとき、小さな鳴き声が聞こえた。

ポケモンの苦しそうな鳴き声をきき、ハッとする。

怪しい2人組に挟まれるようにして、彼らの足下に小さなポケモンが横たわっている。

小さな丸いピンク色の可愛らしいポケモン。そのポケモンを2人がかりで蹴り上げていた。

「ほらほら!ゆめのけむりをだすんだよ!」

「オラッ!とっとと、ゆめのけむりをだせ!!」

何度も、何度も蹴り上げる。

トウコは目を疑った。

「やめてあげてよぉ!! ムンナが可哀想だよ!!」

ベルは、ムンナを庇うように手を伸ばしたが、大人の力に跳ねのけられた。

倒れそうになったベルを、トウコは急いで支える。

「むぅ!」

ムンナは嫌そうに声を上げるが、2人に挟まれて身動きが取れないようだった。

苦しそうに、何度も鳴き声をあげる。

ひどい……。

「何やってるの…やめなさいよ!あなた達、何なの?!」

ポケモンに暴力をふるっている、その目の前の光景が信じられなくて、トウコは声を荒上げた。

「我々はプラズマ団は、愚かな人々からポケモンを解放するため、日夜、闘っているのだ」

ムンナを蹴り上げる男が、言った。

プラズマ団!?

カラクサタウンでのことを思い出した。

ゲーチスとかいう男がひきつれていた団体だ。

目の前の2人組も、あの男の周りを囲っていた人達と、同じ制服を着ている。

なんでこの人達がこんなことしてるの?!

「何のためにこんなこと……!?」

「何のために?ポケモンの解放のためよ。ムンナやムーシャナというポケモン、ゆめのけむりとかいう不思議なガスを出して、いろいろな夢をみせるそうじゃない。 それを使い、人々がポケモンを手放したくなる……そんな夢をみせて人の心を操るのよ」

ポケモンの解放のため?

それで、ポケモンを傷つけていいっていうの!?そんなの間違ってる!

「ひどい!そんなの間違ってるよ!」

ベルが大きく怒鳴った。

「なんでこんなことできるの!? ゆめのけむりを出させるためにムンナを蹴るの?ひどいよ!
どうして? あなた達だって、ポケモントレーナーなんでしょ!」

「そうよ、私たちもトレーナー」

平然と答える2人組を、トウコは信じられない思いでみつめた。

ベルもショックを受けているようだった。

「だけど、闘う理由はあなた達とは違って、ポケモンを自由にするため!」

プラズマ団の女が言った。

「そして、私たちがポケモンを自由にするとは!勝負に勝ち、力ずくでポケモンを奪うこと! というわけで、お前達のポケモン、私たちが救い出してやる!」

プラズマ団の男がそう言うと、ボールを身構えた。

「えええ!助けてトウコ」

恐がったベルが、あわててトウコの腕にひしっとしがみついた。

トウコはベルをかばうようにして、プラズマ団を睨み付ける。

ただの、考え方が違う団体なのかと思ってた。

でも、そうじゃないみたい。こんな事するなんて間違っている!

「そんなの絶対許さない!」

「いけ!ミネズミ!」

プラズマ団の男は、ミネズミを出してきた!

「ズミ!」

「お願い!ヒヤリン!」

「ヒヤヤーン!」

トウコがヒヤリンを登場させると、ミネズミは身構えた。

「ミネズミ!がまんだ!」

プラズマ団の命令に、ミネズミは、身体を縮みこませた。

力をためて、解放する気だ。

そんな手にはのらない!

「ヒヤリン、ふるいたてる!」

ヒヤリンは気力を上げた。

「そのまま、みずでっぽう!!」

「ヤーッ!」

トウコの声とともに、勢いのあるみずでっぽうが、ミネズミにむかう!