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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (6)

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刺さるようなみずでっぽうが、ミネズミに当たると、がまんしていた力を解き放つ前に、そのまま目を回して倒れこんだ。

ヒヤリンの一撃。

あっという間の勝負。

「プラーズマー!夢が……」

プラズマ団の男は情けない声を上げた。

「子供相手に何をやってるの!」

今度は、プラズマ団の女がボールをつかんだ。

続けざまに勝負のようだ。

「子供だと思ってみくびったか? まぁいい、次はわたしだ!」

「チョロ~!」

放たれたボールからチョロネコが飛び出しきた!

トウコはヒヤリンをボールに戻して交代させる。

「絶対負けないっ!タッくん!たのんだわ!」

「タジャ!」

了解!とばかりに返事をしながら、ボールからタッくんは飛び出した。

「チョロネコ、ひっかく!」

チョロネコのとがった爪が向かう!

タッくんは、余裕の表情だ。

ひらりと身をかわして避ける。

今までの戦ってきたチョロネコより、ずっと遅いわ。

「タッくん、つるのムチ!」

バシンッ!と力強く決まった。

チョロネコは、地面にたたきつけられて、そのまま動けなくなった。

「プラーズマー!これは悪夢ね!なんてことなの!」

信じられないっといった様子で、女が叫んだ。

プラズマ団の2人組は、じりじりと後ずさりする。

「……まさか2人して負けるとはな!だが、ゆめのけむりは入手せねばならない!」

2人組は、勝負がついたというのに、足下のムンナを再び蹴りだした!

かなりの力で、ムンナを痛めつける!

「おら!ゆめのけむり、だせ!」

小さなムンナの体がはねる。

「む、むぅ…」

ムンナは痛々しい声を上げた。

「やめてよぉ!!!」

ベルの叫ぶ声。

何を言っても、非道なことをやめない2人組に怒りが募った。

許せない!

「タッくん!つるの……」

ムンナを助けようと、プラズマ団に向かって、攻撃をしようとした時だった!

突然、辺りが白い光にのみこまれた! 思わず、目をつぶる。

いったいなに!?

ぱっと何事もなかったかのように、光が消え去ると、突然誰かの声が聞こえ始めた。

「……おまえたち、何を遊んでいるのだ?」

声と共に、草陰からぼうっと姿を現したのは、カラクサタウンでみかけた、あのゲーチスという男だった。

いったい、いつの間に!?

「我々、プラズマ団は愚かな人間とポケモンを切り離すのだぞ!」

もう一つ同じ声がおこる。

草陰からもう一人のゲーチスが現れた。

「!?」

「その役目、果たせぬというのなら……!」

ゲーチスの姿が、幾重にもわかれ、重なって、まるで何人もいるように見えた。

声が反響し、耳の中に響いているのか、頭の中に響いているのか、方向がよくわからない。

めまいのような感覚。

いったいどうなっているの?

タッくんもどうしていいか戸惑っている。

ゲーチスは、トウコと、ベルを気にする様子もなく、プラズマ団2人組の目の前で、1つに重なり、団員達に襲いかかるように迫ると、突然消えた。

消えた!?

辺りを見渡してみるが、ゲーチスの姿はない。

「……ゲーチス様!?」

様子を一変させ、あわてふためくプラズマ団。

「かなり、お怒りだったわ……ゲーチス様!」

「大変だ!……あやまりにいかなければ!」

プラズマ団の2人組は、真っ青な顔をして、飛び出して行った。

「何? 今の?」

トウコと、ベルが顔を見合わせていると、ぼやぼやと、霧の中から出てくるように、徐々にはっきりと、目の前に大きなピンク色のポケモンと、いじめられていたムンナが姿を現した。

「ムンナ?」

でも、その隣にいるのは?

「ムーシャナ…」

ベルが驚きながらつぶやいた。

「もしかして……ムーシャナが、ムンナを助けるために夢を見せたの?」

このポケモンが、今のを……?

さっきのは、夢の幻?!

あんなことが、できるポケモンがいるの!?

「むぅ」

「むぅん」

ムンナとムーシャナは、互いに呼びかけ合っているようだった。

優しい声。お互い体をすり寄せて。

大きなムーシャナと、小さなムンナ。

もしかしたら、親子なのかもしれない。

「あら、ムーシャナじゃない!」

突然、明るい声がして振り返ると、長い黒髪にめがねをかけた、白衣の女性が立っていた。

研究者? と、ふと思った。

2人の視線に気づいてか、女性は自己紹介をする。

「あたしはマコモ。トレーナーについて研究している、研究者よ。ムンナやムーシャナたちの出す、ゆめのけむりが研究の完成に必要だったから、もらおうと思ってここまで来たんだけれど、もうその必要もないみたいね!」

そう言って、マコモという人は、トウコ達のすぐ側に浮かんでいた、紫色の煙を瓶の中に集めた。

それが、ゆめのけむり?

「ゆめのけむりはね、使うと誰にでも、夢をみせることができるのよ。もちろん、ポケモンにもね。そして、その夢をみる機械をあたしが開発したの」

夢をみせられる煙。

どうやって使うのだろうか。

それにしても、マコモさん……どっかで聞いたような…?

「あー!マコモさんって、もしかしてアララギ博士の友達ですかぁ?」

ベルが思い出したように大きな声を出した。

ああ、そうだ! 博士が言ってた!

「そうだけど……。ああ!もしかして、君たちが新しくトレーナーになるっていう子達ね!アララギから、あなた達が町に来たら、手助けするように言われていたわ。後であたしの研究室に寄ってちょうだい。ここからすぐ側なの。渡したいものがあるから」

そう言って、マコモさんは夢の煙が入った瓶をうれしそうに抱えて、行ってしまった。

「むぅん、むぅん」

「むぅ、むぅ」

ムンナとムーシャナの声がした。

こちらをみている。

助かってほんとによかった…。

2匹は、しばらくじーっと、トウコとベルをみつめたあと、寄り添いながら草むらの方へ帰って行った。

お礼を言ってくれたんだと思う。

「行っちゃったね……」

「うん」

もう空も暗くなってきた。

そろそろ、ポケモンセンターに戻って休んだ方がよさそうだ。

「ベル、もうポケモンセンターに行こうよ。マコモさんのところに寄ってさ」

トウコが言った。

「トウコ、悪いけれど先に行ってて! あたし、やっぱりどうしてもムンナが仲間にほしいの」

ベルは帽子をかぶりなおしながら、真剣な顔でトウコに言った。

こうなると、何を言っても聞いてくれない。

ベルだったら、ムンナとすぐ仲良くなれそう。

トウコは、「わかった」と頷いた。

「じゃあね。私は明日の朝、サンヨウシティを発つよ」

「うん、じゃあね!トウコ」

ベルが草むらに向かうのを見届けて、トウコはサンヨウシティの街中に戻った。

マコモさんの研究室によると、ひでんマシンの【いあいぎり】をプレゼントしてくれた。

冒険の必需品アイテムだ。

マコモさんに、ベルは後から来ることと、お礼を伝えて、トウコはポケモンセンターに戻った。

今日はここに泊まる。

なんだかんだで、1日たった。

今日はサンヨウシティで、ジム戦をするつもりで進んできた。