黒と白の狭間でみつけたもの (7)
〈 第7章 朝の公園で 〉
さわやかな朝の日差し。
中心に置かれた噴水を囲むように、ある間隔を保って綺麗に整えられた木は、ポケモンの形に葉を切りそろえられていた。
そのポケモン達が映えるように、植えられた花々。
その花々のみつや、木の実を食べにくる野生の小さなポケモンたち。
3番道路とサンヨウシティの間にある、緑と綺麗な水に囲まれた小さな公園。
この場所は、人とポケモンたちの憩いの場所となっているようだった。
トウコは丸い噴水のふちに腰かけて、さっき買ったサンドイッチを食べていた。
まだ、明け方のせいか、肌寒い。
こんなに早く起きるつもりはなかったのに、昨日は早く寝たせいか、目覚まし時計も鳴る前に目が冷めた。
もう一度寝ようかとも思ったけれど、せっかくだし、早く出発することにしたのだ。
噴水の周りに水をのみに、野生ポケモンたちが集まっている。
足下には、トウコのおこぼれをもらいにやってきた、ポケモンたちも寄ってきていた。
さっきから、こぼれたパンくずをつつくマメパトが可愛らしい。
警戒しながらも、トウコに近づいてくる。
こんなにおもしろい光景がみられるなら、早く出発してよかったかもしれない。
隣では、タッくんとマメパトの攻防戦が繰り広げられている。
タックンが食べているポケモンフードをじぃっとみながら、タッくんの真横に居座るマメパトと小さなミネズミ。
様子をうかがわれているタッくんは、ポケモンフードをとられまいと、両手に抱えながら、必死で食べていた。
それでも、ぼろぼろと時々こぼれてしまうポケモンフードを、トウコの足下にいるマメパトたちが、ついばんでいった。
口からあふれてしまうほど、ほっぺたを大きくして食べているタッくんの様子をみて、トウコはくすりと笑った。
「そんなに焦らなくても、なくならないよ」
タッくんにあげているのとは、別のポケモンフードを細かくして放り投げると、トウコの足下でパン粉を食べていたマメパトや、近くのミネズミなんかが、一斉に群がった。
タッくんの側にいたマメパトとミネズミも急いで飛んでいく。
「タータ…」
ほっとしたようで、ゆっくりと食べ始めるタッくん。
トウコは、朝ご飯を食べ終わると、テリムとヒヤリンもボールから出した。
「ほーら、そろそろ起きてちょうだい」
「…ヒヤ~……?」
「……リリィ…?」
寝ぼけたヒヤリンと、テリム。
ヒヤリンは、目を擦ってあくびをすると、タッくんと一緒にポケモンフードを食べ始めたが、テリムはボールから出たというのに、手足をのばして、トウコの足下でもぞもぞしているだけだ。
目がまだあいていない。
「ちょっと、テリム~!」
「…リリィ?」
トウコが身体を揺すってみても、テリムは全然起きない。
「もう~…」
お寝坊なんだから。
どうしようかと考えて、トウコは溢れ出る噴水をみてニヤリとした。
手ですくった噴水の水をテリムにふりかける!
「えい!」
「テリリ!」
冷たい水に驚いたテリムが、飛び跳ねるように起きあがった。
何が起きたかわからないのか、辺りをきょろきょろしている。
「あはは、テリムってば」
おかしくて、吹き出したトウコを見て、テリムはムッとする。
「テリリ~!」
テリムは、噴水に向かってとっしんすると、ジャンプした!
バシャーーーン!!
テリムが噴水に飛び込むと、大きな水しぶきがトウコにかかった。
「テリテリテリー!」
おかしそうに笑うテリム。
服はすっかりびしょぬれだ。
「テリムー!よくもやったわね!」
トウコは、噴水の水たまりの中に腕まで入れると、ケラケラ笑うテリムの顔めがけて、思いっきり水をかけた!
テリムは負けじと、手足をバタバタさせて、トウコに水をかける!
水しぶきは、トウコとタッくんにもふりかかった。
「タージャ!」
水浸しになったタッくんが、2人を注意するように、声を張り上げたが、トウコと、テリムの水かけ合戦は終わらない。
再び激しくなった、水かけに、タッくんはまた大きな水しぶきを被った。
今度は、ヒヤリンにも降りかかる。
「ヒヤヒヤ~!」
遊んでいると思ったのか、ヒヤリンまで噴水池に飛び込んで、水かけ合戦を始めてしまった。
ぴゅーっとトウコとテリムに大きなみずでっぽうを続けてかけはじめた!
「ヒヤリン、ずるい!」
「テリテリ!」
「テリム!私たちもみずでっぽうよ!」
「テリー!」
トウコとテリムが一緒になって、ヒヤリンに大きなみずしぶきをかける!
「ヒヤヒヤ! ヒヤリ~!」
ばしゃばしゃ、水をかけてくるトウコたちに、ヒヤリンはすっかりごきげんだ。
大きな水しぶきがかかると、それをのみこんで、トウコたちにかけかえす!
きゃーきゃー騒ぎだすみんなにあきれているタッくんをみつけて、ヒヤリンは大きなみずでっぽうをはなった。
顔面直撃!
「ヒヤヤ!」
クスクスと笑うヒヤリン。
頭から足の先までタッくんはずぶぬれだ。
「タジャジャーー!」
怒ったタッくんまでが、噴水池に飛び込んだ!
大きな水しぶきが、トウコ達に降りかかった!
ばしゃばしゃ、ばしゃばしゃ!
辺りは、すっかり水浸し。
いつの間にか、怒っていたタッくんも笑っていて、トウコ達は水遊びに夢中になっていた。
水を飲みに来ていたシママも驚いている。
おかしくて、おかしくて、しばらく笑いは絶えなかった。
ようやく、笑いがおさまった時、辺りを見渡すと、いつの間にか野生のポケモン達がトウコたちがいる、噴水の周りに集まってきていた。
おもしろそうに見えたのか、ミネズミたちまで、まねして水遊びをはじめている。
マメパトは、トウコに興味をもったのか、足下までくると、靴をつんつんとつつく。
側にいたシママもトウコに顔をすりよせてきた。
トウコはそれぎゅっと抱き寄せた。
温かい。
目を閉じると、シママの声が聞こえた。
『楽しそうだね』
『こんなに楽しそうなポケモンたちは、はじめてみたよ。君はいい人なんだろうね。こんなに楽しそうなら、仲間になってみても楽しそうだ』
シママの気持ちが響く。
「ありがとう。でも、今のあなたにはもっと大事なことがあるのね」
トウコの言葉に、シママは少し驚いた様子をみせたが、すぐに優しい眼差しをトウコに向ける。
シママの側には、大きなゼブライカが一匹、シママを見守るように立っていた。
きっと、このシママのお母さん。
毎日、草むらを一緒に走りながら笑い合っているビジョンがみえた。2匹はいつも寄り添っていて、シママは大好きなお母さんの側にいられることが、一番うれしそうだった。
「じゃあね、シママ」
トウコの腕をゆっくりとすり抜けたシママは、母親のゼブライカに寄り添った。
ゼブライカは、トウコのことをじっと見つめたあと、シママとゆっくりと歩き出し、草むらの方へ帰って行った。
マメパトも、ミネズミも、しばらくトウコの服をひっぱったり、水遊びをまねていたが、もう遊んでもらえないと思ったのか、だんだんと数を減らし帰っていった。
さわやかな朝の日差し。
中心に置かれた噴水を囲むように、ある間隔を保って綺麗に整えられた木は、ポケモンの形に葉を切りそろえられていた。
そのポケモン達が映えるように、植えられた花々。
その花々のみつや、木の実を食べにくる野生の小さなポケモンたち。
3番道路とサンヨウシティの間にある、緑と綺麗な水に囲まれた小さな公園。
この場所は、人とポケモンたちの憩いの場所となっているようだった。
トウコは丸い噴水のふちに腰かけて、さっき買ったサンドイッチを食べていた。
まだ、明け方のせいか、肌寒い。
こんなに早く起きるつもりはなかったのに、昨日は早く寝たせいか、目覚まし時計も鳴る前に目が冷めた。
もう一度寝ようかとも思ったけれど、せっかくだし、早く出発することにしたのだ。
噴水の周りに水をのみに、野生ポケモンたちが集まっている。
足下には、トウコのおこぼれをもらいにやってきた、ポケモンたちも寄ってきていた。
さっきから、こぼれたパンくずをつつくマメパトが可愛らしい。
警戒しながらも、トウコに近づいてくる。
こんなにおもしろい光景がみられるなら、早く出発してよかったかもしれない。
隣では、タッくんとマメパトの攻防戦が繰り広げられている。
タックンが食べているポケモンフードをじぃっとみながら、タッくんの真横に居座るマメパトと小さなミネズミ。
様子をうかがわれているタッくんは、ポケモンフードをとられまいと、両手に抱えながら、必死で食べていた。
それでも、ぼろぼろと時々こぼれてしまうポケモンフードを、トウコの足下にいるマメパトたちが、ついばんでいった。
口からあふれてしまうほど、ほっぺたを大きくして食べているタッくんの様子をみて、トウコはくすりと笑った。
「そんなに焦らなくても、なくならないよ」
タッくんにあげているのとは、別のポケモンフードを細かくして放り投げると、トウコの足下でパン粉を食べていたマメパトや、近くのミネズミなんかが、一斉に群がった。
タッくんの側にいたマメパトとミネズミも急いで飛んでいく。
「タータ…」
ほっとしたようで、ゆっくりと食べ始めるタッくん。
トウコは、朝ご飯を食べ終わると、テリムとヒヤリンもボールから出した。
「ほーら、そろそろ起きてちょうだい」
「…ヒヤ~……?」
「……リリィ…?」
寝ぼけたヒヤリンと、テリム。
ヒヤリンは、目を擦ってあくびをすると、タッくんと一緒にポケモンフードを食べ始めたが、テリムはボールから出たというのに、手足をのばして、トウコの足下でもぞもぞしているだけだ。
目がまだあいていない。
「ちょっと、テリム~!」
「…リリィ?」
トウコが身体を揺すってみても、テリムは全然起きない。
「もう~…」
お寝坊なんだから。
どうしようかと考えて、トウコは溢れ出る噴水をみてニヤリとした。
手ですくった噴水の水をテリムにふりかける!
「えい!」
「テリリ!」
冷たい水に驚いたテリムが、飛び跳ねるように起きあがった。
何が起きたかわからないのか、辺りをきょろきょろしている。
「あはは、テリムってば」
おかしくて、吹き出したトウコを見て、テリムはムッとする。
「テリリ~!」
テリムは、噴水に向かってとっしんすると、ジャンプした!
バシャーーーン!!
テリムが噴水に飛び込むと、大きな水しぶきがトウコにかかった。
「テリテリテリー!」
おかしそうに笑うテリム。
服はすっかりびしょぬれだ。
「テリムー!よくもやったわね!」
トウコは、噴水の水たまりの中に腕まで入れると、ケラケラ笑うテリムの顔めがけて、思いっきり水をかけた!
テリムは負けじと、手足をバタバタさせて、トウコに水をかける!
水しぶきは、トウコとタッくんにもふりかかった。
「タージャ!」
水浸しになったタッくんが、2人を注意するように、声を張り上げたが、トウコと、テリムの水かけ合戦は終わらない。
再び激しくなった、水かけに、タッくんはまた大きな水しぶきを被った。
今度は、ヒヤリンにも降りかかる。
「ヒヤヒヤ~!」
遊んでいると思ったのか、ヒヤリンまで噴水池に飛び込んで、水かけ合戦を始めてしまった。
ぴゅーっとトウコとテリムに大きなみずでっぽうを続けてかけはじめた!
「ヒヤリン、ずるい!」
「テリテリ!」
「テリム!私たちもみずでっぽうよ!」
「テリー!」
トウコとテリムが一緒になって、ヒヤリンに大きなみずしぶきをかける!
「ヒヤヒヤ! ヒヤリ~!」
ばしゃばしゃ、水をかけてくるトウコたちに、ヒヤリンはすっかりごきげんだ。
大きな水しぶきがかかると、それをのみこんで、トウコたちにかけかえす!
きゃーきゃー騒ぎだすみんなにあきれているタッくんをみつけて、ヒヤリンは大きなみずでっぽうをはなった。
顔面直撃!
「ヒヤヤ!」
クスクスと笑うヒヤリン。
頭から足の先までタッくんはずぶぬれだ。
「タジャジャーー!」
怒ったタッくんまでが、噴水池に飛び込んだ!
大きな水しぶきが、トウコ達に降りかかった!
ばしゃばしゃ、ばしゃばしゃ!
辺りは、すっかり水浸し。
いつの間にか、怒っていたタッくんも笑っていて、トウコ達は水遊びに夢中になっていた。
水を飲みに来ていたシママも驚いている。
おかしくて、おかしくて、しばらく笑いは絶えなかった。
ようやく、笑いがおさまった時、辺りを見渡すと、いつの間にか野生のポケモン達がトウコたちがいる、噴水の周りに集まってきていた。
おもしろそうに見えたのか、ミネズミたちまで、まねして水遊びをはじめている。
マメパトは、トウコに興味をもったのか、足下までくると、靴をつんつんとつつく。
側にいたシママもトウコに顔をすりよせてきた。
トウコはそれぎゅっと抱き寄せた。
温かい。
目を閉じると、シママの声が聞こえた。
『楽しそうだね』
『こんなに楽しそうなポケモンたちは、はじめてみたよ。君はいい人なんだろうね。こんなに楽しそうなら、仲間になってみても楽しそうだ』
シママの気持ちが響く。
「ありがとう。でも、今のあなたにはもっと大事なことがあるのね」
トウコの言葉に、シママは少し驚いた様子をみせたが、すぐに優しい眼差しをトウコに向ける。
シママの側には、大きなゼブライカが一匹、シママを見守るように立っていた。
きっと、このシママのお母さん。
毎日、草むらを一緒に走りながら笑い合っているビジョンがみえた。2匹はいつも寄り添っていて、シママは大好きなお母さんの側にいられることが、一番うれしそうだった。
「じゃあね、シママ」
トウコの腕をゆっくりとすり抜けたシママは、母親のゼブライカに寄り添った。
ゼブライカは、トウコのことをじっと見つめたあと、シママとゆっくりと歩き出し、草むらの方へ帰って行った。
マメパトも、ミネズミも、しばらくトウコの服をひっぱったり、水遊びをまねていたが、もう遊んでもらえないと思ったのか、だんだんと数を減らし帰っていった。
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (7) 作家名:アズール湊