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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (7)

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〈 第7章 朝の公園で 〉

さわやかな朝の日差し。

中心に置かれた噴水を囲むように、ある間隔を保って綺麗に整えられた木は、ポケモンの形に葉を切りそろえられていた。

そのポケモン達が映えるように、植えられた花々。

その花々のみつや、木の実を食べにくる野生の小さなポケモンたち。

3番道路とサンヨウシティの間にある、緑と綺麗な水に囲まれた小さな公園。

この場所は、人とポケモンたちの憩いの場所となっているようだった。

トウコは丸い噴水のふちに腰かけて、さっき買ったサンドイッチを食べていた。

まだ、明け方のせいか、肌寒い。

こんなに早く起きるつもりはなかったのに、昨日は早く寝たせいか、目覚まし時計も鳴る前に目が冷めた。

もう一度寝ようかとも思ったけれど、せっかくだし、早く出発することにしたのだ。

噴水の周りに水をのみに、野生ポケモンたちが集まっている。

足下には、トウコのおこぼれをもらいにやってきた、ポケモンたちも寄ってきていた。

さっきから、こぼれたパンくずをつつくマメパトが可愛らしい。

警戒しながらも、トウコに近づいてくる。

こんなにおもしろい光景がみられるなら、早く出発してよかったかもしれない。

隣では、タッくんとマメパトの攻防戦が繰り広げられている。

タックンが食べているポケモンフードをじぃっとみながら、タッくんの真横に居座るマメパトと小さなミネズミ。

様子をうかがわれているタッくんは、ポケモンフードをとられまいと、両手に抱えながら、必死で食べていた。

それでも、ぼろぼろと時々こぼれてしまうポケモンフードを、トウコの足下にいるマメパトたちが、ついばんでいった。

口からあふれてしまうほど、ほっぺたを大きくして食べているタッくんの様子をみて、トウコはくすりと笑った。

「そんなに焦らなくても、なくならないよ」

タッくんにあげているのとは、別のポケモンフードを細かくして放り投げると、トウコの足下でパン粉を食べていたマメパトや、近くのミネズミなんかが、一斉に群がった。

タッくんの側にいたマメパトとミネズミも急いで飛んでいく。

「タータ…」

ほっとしたようで、ゆっくりと食べ始めるタッくん。

トウコは、朝ご飯を食べ終わると、テリムとヒヤリンもボールから出した。

「ほーら、そろそろ起きてちょうだい」

「…ヒヤ~……?」

「……リリィ…?」

寝ぼけたヒヤリンと、テリム。

ヒヤリンは、目を擦ってあくびをすると、タッくんと一緒にポケモンフードを食べ始めたが、テリムはボールから出たというのに、手足をのばして、トウコの足下でもぞもぞしているだけだ。

目がまだあいていない。

「ちょっと、テリム~!」

「…リリィ?」

トウコが身体を揺すってみても、テリムは全然起きない。

「もう~…」

お寝坊なんだから。

どうしようかと考えて、トウコは溢れ出る噴水をみてニヤリとした。

手ですくった噴水の水をテリムにふりかける!

「えい!」

「テリリ!」

冷たい水に驚いたテリムが、飛び跳ねるように起きあがった。

何が起きたかわからないのか、辺りをきょろきょろしている。

「あはは、テリムってば」

おかしくて、吹き出したトウコを見て、テリムはムッとする。

「テリリ~!」

テリムは、噴水に向かってとっしんすると、ジャンプした!

バシャーーーン!!

テリムが噴水に飛び込むと、大きな水しぶきがトウコにかかった。

「テリテリテリー!」

おかしそうに笑うテリム。

服はすっかりびしょぬれだ。

「テリムー!よくもやったわね!」

トウコは、噴水の水たまりの中に腕まで入れると、ケラケラ笑うテリムの顔めがけて、思いっきり水をかけた!

テリムは負けじと、手足をバタバタさせて、トウコに水をかける!

水しぶきは、トウコとタッくんにもふりかかった。

「タージャ!」

水浸しになったタッくんが、2人を注意するように、声を張り上げたが、トウコと、テリムの水かけ合戦は終わらない。

再び激しくなった、水かけに、タッくんはまた大きな水しぶきを被った。

今度は、ヒヤリンにも降りかかる。

「ヒヤヒヤ~!」

遊んでいると思ったのか、ヒヤリンまで噴水池に飛び込んで、水かけ合戦を始めてしまった。

ぴゅーっとトウコとテリムに大きなみずでっぽうを続けてかけはじめた!

「ヒヤリン、ずるい!」

「テリテリ!」

「テリム!私たちもみずでっぽうよ!」

「テリー!」

トウコとテリムが一緒になって、ヒヤリンに大きなみずしぶきをかける!

「ヒヤヒヤ! ヒヤリ~!」

ばしゃばしゃ、水をかけてくるトウコたちに、ヒヤリンはすっかりごきげんだ。

大きな水しぶきがかかると、それをのみこんで、トウコたちにかけかえす!

きゃーきゃー騒ぎだすみんなにあきれているタッくんをみつけて、ヒヤリンは大きなみずでっぽうをはなった。

顔面直撃!

「ヒヤヤ!」

クスクスと笑うヒヤリン。

頭から足の先までタッくんはずぶぬれだ。

「タジャジャーー!」

怒ったタッくんまでが、噴水池に飛び込んだ!

大きな水しぶきが、トウコ達に降りかかった!

ばしゃばしゃ、ばしゃばしゃ!

辺りは、すっかり水浸し。

いつの間にか、怒っていたタッくんも笑っていて、トウコ達は水遊びに夢中になっていた。

水を飲みに来ていたシママも驚いている。

おかしくて、おかしくて、しばらく笑いは絶えなかった。

ようやく、笑いがおさまった時、辺りを見渡すと、いつの間にか野生のポケモン達がトウコたちがいる、噴水の周りに集まってきていた。

おもしろそうに見えたのか、ミネズミたちまで、まねして水遊びをはじめている。

マメパトは、トウコに興味をもったのか、足下までくると、靴をつんつんとつつく。

側にいたシママもトウコに顔をすりよせてきた。

トウコはそれぎゅっと抱き寄せた。

温かい。

目を閉じると、シママの声が聞こえた。

『楽しそうだね』

『こんなに楽しそうなポケモンたちは、はじめてみたよ。君はいい人なんだろうね。こんなに楽しそうなら、仲間になってみても楽しそうだ』

シママの気持ちが響く。

「ありがとう。でも、今のあなたにはもっと大事なことがあるのね」

トウコの言葉に、シママは少し驚いた様子をみせたが、すぐに優しい眼差しをトウコに向ける。

シママの側には、大きなゼブライカが一匹、シママを見守るように立っていた。

きっと、このシママのお母さん。

毎日、草むらを一緒に走りながら笑い合っているビジョンがみえた。2匹はいつも寄り添っていて、シママは大好きなお母さんの側にいられることが、一番うれしそうだった。

「じゃあね、シママ」

トウコの腕をゆっくりとすり抜けたシママは、母親のゼブライカに寄り添った。

ゼブライカは、トウコのことをじっと見つめたあと、シママとゆっくりと歩き出し、草むらの方へ帰って行った。

マメパトも、ミネズミも、しばらくトウコの服をひっぱったり、水遊びをまねていたが、もう遊んでもらえないと思ったのか、だんだんと数を減らし帰っていった。