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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (8)

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「そうよ!返しなさい!」

チェレンと共に、ボール片手にプラズマ団に迫った。

後ずさりする団員たち。

青ざめる表情に、勝利を確信したときだった。

「「返す必要はないぜ!!」」

洞窟の奥から、2つの声が響いた。

まだ仲間が!?

走り込んでくる2つの影を見て、プラズマ団の2人組に笑みが戻る。

脇に逸れた2人の団員と入れ替わるように現れたのは、新たな2人組。

「大変だよな。理解されないばかりか、邪魔されるなんて」

「相手は2人、我々も2人。我々の結束を見せつけ、正しいことを教えてやるよ」

再び迫る団員。

今度は同時に2人だ。

チェレンは呆れたように言う。

「まだいたとはね……。それにしても、ポケモン泥棒が何を開き直っているんだか…」

その通りだ。

「トウコ。幼なじみのコンビネーションで、彼らに思い知らせよう!」

「オッケー!まかせて~!」

チェレンと共にダブルバトル!!

プラズマ団は、ミネズミ2匹をくりだしてきた。

こちらも、自慢の2匹を登場させる!

「いけ!タッくん。もう1回おねがい!」

「いけ!ポカブ!相手を圧倒しろ!」

「タッジャ!」「ポカー!」

かみつきに向かってきた、ミネズミを、タッくんとポカブがよける。

レベルの差は画然だった。

トウコとチェレンは顔を見合わせて頷いた。

わかってる。

みせてやるわ!私たちのコンビネーション!

合わせ技を!

「トウコ!」

「まかせて!タッくん、せいちょう!そして、グラスミキサー!」

「タジャーー!」

タッくんの葉っぱが生え替わる。

大きくなった葉をのせて、力の増した緑のつむじ風が起こる!

大きなつむじ風!

相手に向かう!

「ポカブ!ひのこだ!」

「ッカブーー!!」

グラスミキサーに火の粉がまきこまれ、中の葉っぱに引火する!

つむじ風は大きな炎の渦となった!

「くっそー!ミネズミがまんだ!」

2匹のミネズミは、あわてふためき、命令を聞いていない。

「何やってるんだ!なんとかしろ!」

荒々しい声をあげるプラズマ団。

もはや、コンビネーションのかけらもない。

炎のうずとなった、グラスミキサーがミネズミの体を巻き込んだ!

ぐるぐるとまわり、ミネズミの体を離さない。

風が収まったときには、ミネズミ2匹は目を回して倒れていた。

「プラーズマ!負けちまった…」

「プラーズマー!まさかやぶれるとは」

団員たちがくやしそうに吠える。

勝負は終わった。

きっちり、奪った物は返してもらわないと!

「勝負はついたわ。返してもらうわよ」

トウコが言うと、プラズマ団の男が口調を強めて言った。

「俺達は、ポケモンを解放するため、愚かな人間達からポケモンを奪っていくのだ!!」

「やれやれ、本当にメンドーくさいな。どんな理由があろうと、人のポケモンをとっていいわけないよね?」

チェレンが呆れて言った。

プラズマ団の男は、別の団員に慰められるように肩をたたかれた。

何かを言おうとして、口ごもった。

なぜそこまで、意地を張るのかわからなかった。

「お前達のようなポケモントレーナーが、ポケモン達を苦しめるのだ……」

小さな声でそう言った。

「……なぜトレーナーがポケモン苦しめているのか、全く理解できないね!」

チェレンが強い口調で言い切った。

そして、早く渡すようにと、手を差しだした。

後ろにいる、ポカブをみせつけながら。

団員の一人が動く。

手には、モンスターボールを持っていた。

あの女の子のポケモンだろう。

「ポケモンは返す……。だが、このポケモンは人に使われ可哀想だぞ」

プラズマ団員が、そう言って、チェレンにボールを返した。

チェレンがボールを受け取ると、プラズマ団員たちはとぼとぼと、洞窟の外に出て行った。

「……いつか自分たちの愚かさに気づけ…」

そう言い残して。

「ポケモンの力を引き出すトレーナーがいる。トレーナーを信じてそれに答えるポケモンがいる。これでどうして、ポケモンが可哀想なのかわからないね」

そうだよね。

私たちは、そうやってポケモンたちとの絆を大事にしているんだもん。

ポケモントレーナーって、そういうものじゃないのかな。

むやみやたらに、ポケモンを傷つけるのとは違う。

私たちは、お互い信頼しあった形で、一緒にいるんだ。

バトルも、旅も、辛いことも多いけれど、一緒に乗り越える仲間。

楽しいことも、苦しいことも、一緒だから乗り越えられる。

そうだと思うのに……。

「さてと……トウコ。僕がポケモンを返してくるよ」

「うん…」

チェレンがそう言って、洞窟を出ていった。

トウコもゆっくり、その後に続く。

ポケモンを取り返せたのになんだろう。

あんまり、いい気持ちじゃなかった。

幼稚園までの道のりを戻ると、ベルと女の子が待っていた。

「トウコ、本当にありがとうね!2人でポケモンを取り返してくれたんだよね。ほんとトウコ達と友達でよかった!!」

「おねえちゃん、ありがとう!!」

小さな女の子は、取りもどしたモンスターボールを握りしめて、嬉しそうに笑っていた。

よかった…大事なお友達を取り返せて。

「あれ?チェレンは?」

先に出ていった、チェレンの姿が見えなかった。

「あ、なんか先に急ぐとかで、すぐ行っちゃったよ。先生もお礼がしたいって言ってたのに……」

「そっか」

ズボンの裾を、くいくいと引っぱられた。

「お礼にこれあげるね!」

女の子はそう言って、ヒールボールをトウコにくれた。

特別なモンスターボールだ。

「あ、ヒールボール!それで捕まえたポケモンは、体力満タンになるんだよね」

「それ、せんせいとみんなから。おねえちゃん、きっといそいでるって、せんせいがおしえてくれたから」

女の子が言った。

なんだか、気を遣わせてしまったみたい。

にしても、さすがは先生!

チェレンや、私が先に進みたいことをお見通しみたいだった。

「トウコも先に行っちゃうんだね」

「うん、できれば先に進みたいかな」

予定より、ずっと滞在しちゃったし。

ちょっと、申し訳ない気もするけれど。

「そっか、じゃあ、あたしが上手く言っておくよ!あたし、この子を送っていくから。じゃあね!トウコ、バイバーイ!」

「ばいばい~!おねえちゃん!」

ありがとね!ベル。

そう思いながら、手を振って、トウコは先に進むことにした。

ボールの中で、タッくんも、テリムもヒヤリンもぐっすり眠っていた。

今日は当分、バトルは、お預けかも知れない。

みんなにあんなに手伝ってもらっちゃったし、朝からたっぷり遊んだし、くたくたのはずだ。

「ゆっくり進むかな」

大きな欠伸をすると、トウコもシッポウシティ目指して、のんびり歩き出した。