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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (8)

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テリムももうバテてきているし、ヒヤリンはマイペースで、自分が園児と混じって遊んできちゃっているし、タッくんはまだ立ち直ってくれないし。

きっと、チェレンのポカブたちも教室で、同じ状況じゃないだろうか。

教室も、運動場も散らかり放題。

荒れ果てていく幼稚園。

それでもつきない園児達の遊ぶパワー。

トウコも先程から、あっちやこっちに引っぱられながら、何をしているのかわからなくなってきていた。

「トウコせんせ~、大丈夫?」

元気なく見えたのか、女の子が声を掛けてきた。

「大丈夫よ、ありがとう」

いけない、いけない。

こんな小さな子に、気を遣わせてどうするのよ!

よ~し!

トウコは気合いを入れると、大きな声で運動場に呼びかけた。

「はーい!みんな!トウコ先生と、かくれんぼする人、この指と~まれ!」

「する!」

「するする!」

「わたしも~!」

一斉に園児がトウコに向かって走り込んできた。

うわぁ~すごい数。

いいわ、もう、頑張っちゃうんだから!

大人数 対 トウコ。

はっきり言って、ルールなんて途中から変わって、おにごっこが始まったりしていたけれど、良しとして、2回目のゲームを始めているときだった。

「どけ、どけっーー!」

3番道路幼稚園のすぐ側を、銀色のコスチュームをした2人組が、大声を上げながら走り去って行った。

あれって、プラズマ団?

人目も気にせず、全速力で駆けていった。

また、何かの演説活動でもしているのだろうか…。

半分あきれながらそう思っていた。

「なんなんだよ、いまの……?」

教室からみていたらしい、チェレンもあきれながら言った。

「待て~!」

声が聞こえた。

こっちに向かってくる。

よくみると、幼稚園の先生と、育てやさんのお姉さん。

そして、ベルだった。

小さな女の子を連れている。

もしかして、いなくなっていた園児?

でも、なんでベルまで?

「……ってベル? どうして走ってるの?」

チェレンも同じ事を思っていた。

2人で顔を見合わせる。

走ってきたベルは、トウコとチェレンの顔を見るなり、息を切らしながら早口に言う。

「ねぇねぇ、今の連中、どっちに向かった?」

「あっちだけど……」

チェレンがプラズマ団が走っていった方を指さした。

「ああ、もう!なんて早い逃げ足なの!?」

「だから、どうして走ってるのさ。よくわからないけれど、いなくなっていた子は見つかったんですよね?」

ベルの後ろに立っている、幼稚園の先生と育てやのお姉さんにチェレンが聞く。

「実は……いなくなっていた子は見つかったんだけれど…」

困ったように、黙り込む。

何かあったの?

小さな園児の女の子は、泣きそうな顔をしていた。

「…おねえちゃん……あたしのポケモン?」

「大丈夫! 大丈夫だから泣かないで!」

ベルがあわてて優しく声を掛けた。

「……あのねベル。だからどうして走ってたんだ?」

チェレンの追求に、ベルがようやく話し出す。

「聞いてよ!さっきの連中にこの子のポケモン、とられちゃったのよ!」

「!?」

なにそれ!?

「それを早く言いなよ!」

強い口調でチェレンが言う。

「トウコ、ポケモンを取り返すよ!」

「もちろん! テリム、ヒヤリン!」

トウコは2匹を急いでボールに戻し、借りていたエプロンを急いで脱いだ。

チェレンも急いで支度をする。

「ベル! 君はその女の子の側にいてよ」

「わかった。2人ともお願い!」

チェレンが急いで走り出す。

トウコもその後ろをついていくように、追いかけた。

足の速いチェレンは、あっという間に先に行く。

分かれ道にきたが、チェレンはそのまままっすぐ走った。

そして、突き当たりで右に曲がる。

すぐにトウコの方を振り返り、こっちだと合図した。

見つけたみたいだ。

トウコが追いつき、チェレンが待っていた場所は、小さな洞窟の入り口だった。

「あいつら、この中に入っていったよ」

チェレンが言った。

あんな小さい子のポケモンを奪うなんて、なんて奴らだろう!

「じゃあ…いくよ!」

トウコは頷いて、チェレンと共に、薄暗い洞窟の中に足を進めた。

ここは確か、地下水脈の穴。

外が明るいせいか、しばらく何も見えない。

1~2分くらい暗闇を見つめていた。

ようやく目が慣れ、視界が開く。

奥の水辺に、プラズマ団の2人組がいるのが見えた。

チェレンと共に駆け寄る。

「ちょっとあんた達!さっきの子のポケモン返しなさいよ!」

「わざわざ追いかけてきたのか」

プラズマ団の男が鼻で笑った。

「ポケモンを返す?我々が解放してやるのだ」

もう一人の男も言った。

どうやら、全く返す気はないらしい。

「トウコ。こいつら話しが通じない、メンドーな連中だね」

見限ったチェレンが、ため息をつく。

ほんと、話しが通じない。

聞こうともしない。

腹が立つわ。

「あんな子供にポケモンは使いこなせない。それではポケモンが可哀想だろう?」

「そんなの、勝手な意見だわ!あの子とそのポケモンは友達なのよ!」

「友達?そんなのは人間の勝手な意見だと、ゲーチス様は言っている。ポケモンはあるべき姿に戻るべきなのだ。おまえらのポケモンも同じ、我らプラズマ団にさしだせ!」

男がトウコに詰め寄った。

「トウコ!」

「おまえもだ!我々プラズマ団にさしだせ!っというか奪ってやるよ!」

チェレンも男に詰め寄られる。

「そんなのごめんだわ」

「ああ、同じ意見だ。そっちはまかせたよ」

「もちろん、負ける気がしないわ」

ボールを構えたトウコとチェレンに、プラズマ団がボールはなつ!

床にボールが当たる前に、トウコとチェレンもポケモンをはなった!

トウコの前に、タッくんが現れる。

「ゆけ!ミネズミ!」

プラズマ団の男が命令する!

「かみつけ!」

「タッくん、避けて!」

「タジャ」

しっぽの葉っぱを気にしながら、タッくんは軽々と避けた。

ミネズミは、再びかみつこうと、タッくんに迫った!

ミネズミの歯が、タッくんのむしられたしっぽの葉っぱをかすった。

取れかかっていた葉っぱの破片がとれた。

「タジャ!」

急に怒り出すタッくん。

まだ、むしられたことを気にしているらしい。

「タッくん!グラスミキサー!」

トウコの指示に、タッくんは、思い切りイライラをぶつけた!

タッくんのむしられた葉っぱが数枚抜け落ちて、大きな風を起こす!

つむじ風のようになったそれが、ミネズミに襲いかかった!

タッくんの鋭い葉っぱが、ミネズミの体を傷つける!

「ズミー!」

痛みに耐えられなくなったミネズミが倒れる。

タッくんは、フンっと鼻息荒く腕を組み、倒れたミネズミを見下ろして、少しはすっきりしたのか、ボールに戻っていった。

圧倒的。

ちょっと、タッくんが恐いくらい…。

「なぜだ!なぜ正しき我らが負ける!?」

信じられない様子で、戸惑う男。

チェレンの方も片がついたみたいだ。

「さすが、トウコ。さあ、あの子から取り上げたポケモンを返しなよ!」