黒と白の狭間でみつけたもの (9)
( 第9章 2つ目のバッジ )
シッポウシティについたのは、もう夕方近くになってからだった。
ゆっくり休みながら歩いたら、結構時間がかかってしまった。
道中のトレーナーバトルも激しかったし、みんなぐったりだ。
レトロでオシャレな町。
倉庫をアレンジして使っている、家や雑貨店が魅力的だった。
街灯がつき始めた町並みは、やわらかな光りに包まれて、ロマンチックな雰囲気だ。
1回は、来てみたかった町。
それでも、今日は散策する気にならなかった。
足が痛い、そして何よりも眠い。早朝から起きて、昼も忙しかったせいか、体がだるくて仕方がない。
「はー。ちょっとくたびれたわ」
ふらふらになりながら、ゲートを通りると、町の入り口で、待っているチェレンの姿を見つけた。
嫌な予感がする。
トウコは大きなため息を吐いた。
「トウコ、待ってたよ」
気づいたチェレンが、トウコに近づいてきた。
「あ、チェレン、今はポケモン勝負は無理よ……」
ほとんど追い払うように、トウコが言った。
みんなもう、さっきからトレーナーと戦いっぱなし。
そろそろ休ませてあげないと。
「そんな、君の顔見て早々、勝負を挑んだりしないよ」
心外だとばかりに、指で眼鏡をなおしながらチェレンが言った。
だって、いつもそうじゃない……。
「さっき色々あったし、疲れてるだろ?ポケモンセンターはこっちさ」
チェレンに連れて行かれるままついていくと、確かにまっすぐ行った場所にポケモンセンターがあった。
チェレンにしては、優しい心遣いだ。
「あと、これを君にあげようと思ってね」
チェレンは、カゴのみをトウコに渡した。
「カゴのみをポケモンに持たせておけば、眠らされてもポケモンは回復して目覚める」
「なぁーに?また、うんちく教えるために待っててくれたの?」
そんなことより、早く休みたい。
ありがとうと受け取りながらも、不満そうなトウコの言葉に、チェレンはむっとした。
「嫌ならいいけど、ジムのこともアドバイスをあげようと思ったのに」
そう言って、チェレンは2つ目のバッジをみせつけた。
バッチケースの中に輝く2つ目のバッジ。まぎれもない、ジムリーダーに勝った証拠だった。
え!もうとったわけ!?
「え? うそ!? バッジ!!」
ずるい!とトウコが言うと、チェレンは隠しながらも得意顔だった。
「シッポウシティのジムリーダーは、ノーマルタイプの使い手。格闘タイプのポケモンがいると、かなり有利かもね。じゃあ、頑張って!」
そう言って、気分良さそうに歩いていく。
自慢するためにわざわざ待っていたのかと、トウコはイライラした。
チェレンはポケモンリーグに挑み、チャンピオンになるのが夢だ。きっと誰よりも強くありたいのだろう。だから、同じくジムの制覇を目指す自分に、ライバル視してくるのは別にいい。だけれど、こういう風に自慢されるのだけは嫌だった。
負けず嫌いなトウコの闘争心に、火がついた。
あー!もう、くやしい。先を越されたわ!
「絶対、すぐに追いついてやる!」
心がかっと熱くなったが、体までは火が灯らなかった。
だめね、今日は無理。
こんなに眠くなったのも久しぶりだもの。
ポケモンセンターに、タッくん達を回復させるために預けると、トウコは早めに宿をとった。
ベッドの入ると、眠気はあっという間に訪れる。
気づいたときには、目に光りが当たっていた。
温かいお日様。
チカチカとカーテンの隙間から目に当たって、眩しい。
でも、あれ?なんかいつもより日が高いような……。
そう思いながら、時計を見ようと体を起こす。
部屋にかけられた時計を見ると、時刻はすでに朝を通り過ぎて、お昼前だった。
唖然として、ベッドを見ると鳴り終わった目覚まし時計が倒れている。
うっそーーー!
一気に目が醒めた。
急いで身支度をととのえて、顔を洗う。
「あー…やっちゃったよ」
寝坊して怒る人はいないけれど、妙な罪悪感だ。
朝ご飯になるはずだったご飯を、流し込むように食べると、トウコはあわてて部屋を飛び出した!
タッくん達を受け取りに、ポケモンセンターの受付に向かう。
「お待たせしました。今日も頑張ってくださいね!」
慌てたトウコとは裏腹に、まるで何事もなかったかのように、落ち着いたいつもと変わらない笑顔を返されて、ちょっと恥ずかしくなった。
当たり前だけれど、ポケモンセンターの中にも、ほとんど今から出発するトレーナーはいない。
いるのはお昼をここで食べる人だろうか。
いや、ただ休憩しているだけかもしれない。
ボールの中のタッくん達を、おそるおそるみると、待ちくたびれた顔をしていた。
やっと来たの? といいたげなタッくんの顔を見て、胸に何かが突き刺さった。
視線が痛い…。
「ごめんね!」
そう言いながら、ボールからみんなを出す。
朝ご飯はとうに食べたらしく、ポケモンフードはいらないようだった。
タッくん、テリム、ヒヤリンはそれぞれ、伸びをするとトウコの後をついて歩き出した。
「さぁ!ちょっと遅くなっちゃったけど、今日はジム戦を打破するわよ!」
「タジャジャ!」
「テリー」「ヒヤン!」
元気に声を上げる3匹。
ぞろぞろとつれて歩いて、草むらへ行った。
ヤグルマの森の入り口付近。
トレーナーとバトルをしながら、「試しの岩」に到着すると、トウコ達は、今日のジムリーダーへの挑戦の作戦会議をはじめた。
相手はノーマルポケモン。
格闘タイプの技も研究して、草むらで特訓。
負けたくはないけれど、一応、もしもの時の、格闘ポケモンもゲットしてみた。
技の切れもよくなったところで、小腹が空いてきた。
3匹お腹がすいたところで、町に戻っておやつがてら『カフェ ソーコ』へ。
シッポウシティの有名なカフェ。
ゆったりくつろげる素敵なカフェだった。
苺ののった美味しいケーキを食べて、タッくん達もランチとおやつ。ポケモンフードとは違う味わいに、タッくんも、テリムも、ヒヤリンも、驚いているみたいだった。
食べ終わったら、ジムに向かいながら町の散策を始めた。
手作りのポケモンのぬいぐるみや、外国から仕入れたという鞄や雑貨。
個展を開いている場所、オシャレな町並み。
雑誌で見たとおりの、おもしろそうで、かわいいものだらけ。
「やっぱり素敵!1回来てみたかったんだよね~!」
改めて、町の外観をみてはしゃぎだしたトウコを見て、タッくん達は黙ってあとをついて行った。
カフェの近くのお店から、順重にお店を巡るトウコ。
タックン達も、はじめてみる雑貨やおもちゃに興味をもったのか、上を見ながら楽しそうについてきた。
かわいいヘアピンや、ピアス。
イッシュ地方には住んでいないポケモン達が、ぬいぐるみになって置かれていたり、レースの編み物の模様になっていたり。
ついに、トウコはお財布を見ながら、悩んでヘアピンを購入した。
「あ、こっちにもお店があるみたい!」
シッポウシティについたのは、もう夕方近くになってからだった。
ゆっくり休みながら歩いたら、結構時間がかかってしまった。
道中のトレーナーバトルも激しかったし、みんなぐったりだ。
レトロでオシャレな町。
倉庫をアレンジして使っている、家や雑貨店が魅力的だった。
街灯がつき始めた町並みは、やわらかな光りに包まれて、ロマンチックな雰囲気だ。
1回は、来てみたかった町。
それでも、今日は散策する気にならなかった。
足が痛い、そして何よりも眠い。早朝から起きて、昼も忙しかったせいか、体がだるくて仕方がない。
「はー。ちょっとくたびれたわ」
ふらふらになりながら、ゲートを通りると、町の入り口で、待っているチェレンの姿を見つけた。
嫌な予感がする。
トウコは大きなため息を吐いた。
「トウコ、待ってたよ」
気づいたチェレンが、トウコに近づいてきた。
「あ、チェレン、今はポケモン勝負は無理よ……」
ほとんど追い払うように、トウコが言った。
みんなもう、さっきからトレーナーと戦いっぱなし。
そろそろ休ませてあげないと。
「そんな、君の顔見て早々、勝負を挑んだりしないよ」
心外だとばかりに、指で眼鏡をなおしながらチェレンが言った。
だって、いつもそうじゃない……。
「さっき色々あったし、疲れてるだろ?ポケモンセンターはこっちさ」
チェレンに連れて行かれるままついていくと、確かにまっすぐ行った場所にポケモンセンターがあった。
チェレンにしては、優しい心遣いだ。
「あと、これを君にあげようと思ってね」
チェレンは、カゴのみをトウコに渡した。
「カゴのみをポケモンに持たせておけば、眠らされてもポケモンは回復して目覚める」
「なぁーに?また、うんちく教えるために待っててくれたの?」
そんなことより、早く休みたい。
ありがとうと受け取りながらも、不満そうなトウコの言葉に、チェレンはむっとした。
「嫌ならいいけど、ジムのこともアドバイスをあげようと思ったのに」
そう言って、チェレンは2つ目のバッジをみせつけた。
バッチケースの中に輝く2つ目のバッジ。まぎれもない、ジムリーダーに勝った証拠だった。
え!もうとったわけ!?
「え? うそ!? バッジ!!」
ずるい!とトウコが言うと、チェレンは隠しながらも得意顔だった。
「シッポウシティのジムリーダーは、ノーマルタイプの使い手。格闘タイプのポケモンがいると、かなり有利かもね。じゃあ、頑張って!」
そう言って、気分良さそうに歩いていく。
自慢するためにわざわざ待っていたのかと、トウコはイライラした。
チェレンはポケモンリーグに挑み、チャンピオンになるのが夢だ。きっと誰よりも強くありたいのだろう。だから、同じくジムの制覇を目指す自分に、ライバル視してくるのは別にいい。だけれど、こういう風に自慢されるのだけは嫌だった。
負けず嫌いなトウコの闘争心に、火がついた。
あー!もう、くやしい。先を越されたわ!
「絶対、すぐに追いついてやる!」
心がかっと熱くなったが、体までは火が灯らなかった。
だめね、今日は無理。
こんなに眠くなったのも久しぶりだもの。
ポケモンセンターに、タッくん達を回復させるために預けると、トウコは早めに宿をとった。
ベッドの入ると、眠気はあっという間に訪れる。
気づいたときには、目に光りが当たっていた。
温かいお日様。
チカチカとカーテンの隙間から目に当たって、眩しい。
でも、あれ?なんかいつもより日が高いような……。
そう思いながら、時計を見ようと体を起こす。
部屋にかけられた時計を見ると、時刻はすでに朝を通り過ぎて、お昼前だった。
唖然として、ベッドを見ると鳴り終わった目覚まし時計が倒れている。
うっそーーー!
一気に目が醒めた。
急いで身支度をととのえて、顔を洗う。
「あー…やっちゃったよ」
寝坊して怒る人はいないけれど、妙な罪悪感だ。
朝ご飯になるはずだったご飯を、流し込むように食べると、トウコはあわてて部屋を飛び出した!
タッくん達を受け取りに、ポケモンセンターの受付に向かう。
「お待たせしました。今日も頑張ってくださいね!」
慌てたトウコとは裏腹に、まるで何事もなかったかのように、落ち着いたいつもと変わらない笑顔を返されて、ちょっと恥ずかしくなった。
当たり前だけれど、ポケモンセンターの中にも、ほとんど今から出発するトレーナーはいない。
いるのはお昼をここで食べる人だろうか。
いや、ただ休憩しているだけかもしれない。
ボールの中のタッくん達を、おそるおそるみると、待ちくたびれた顔をしていた。
やっと来たの? といいたげなタッくんの顔を見て、胸に何かが突き刺さった。
視線が痛い…。
「ごめんね!」
そう言いながら、ボールからみんなを出す。
朝ご飯はとうに食べたらしく、ポケモンフードはいらないようだった。
タッくん、テリム、ヒヤリンはそれぞれ、伸びをするとトウコの後をついて歩き出した。
「さぁ!ちょっと遅くなっちゃったけど、今日はジム戦を打破するわよ!」
「タジャジャ!」
「テリー」「ヒヤン!」
元気に声を上げる3匹。
ぞろぞろとつれて歩いて、草むらへ行った。
ヤグルマの森の入り口付近。
トレーナーとバトルをしながら、「試しの岩」に到着すると、トウコ達は、今日のジムリーダーへの挑戦の作戦会議をはじめた。
相手はノーマルポケモン。
格闘タイプの技も研究して、草むらで特訓。
負けたくはないけれど、一応、もしもの時の、格闘ポケモンもゲットしてみた。
技の切れもよくなったところで、小腹が空いてきた。
3匹お腹がすいたところで、町に戻っておやつがてら『カフェ ソーコ』へ。
シッポウシティの有名なカフェ。
ゆったりくつろげる素敵なカフェだった。
苺ののった美味しいケーキを食べて、タッくん達もランチとおやつ。ポケモンフードとは違う味わいに、タッくんも、テリムも、ヒヤリンも、驚いているみたいだった。
食べ終わったら、ジムに向かいながら町の散策を始めた。
手作りのポケモンのぬいぐるみや、外国から仕入れたという鞄や雑貨。
個展を開いている場所、オシャレな町並み。
雑誌で見たとおりの、おもしろそうで、かわいいものだらけ。
「やっぱり素敵!1回来てみたかったんだよね~!」
改めて、町の外観をみてはしゃぎだしたトウコを見て、タッくん達は黙ってあとをついて行った。
カフェの近くのお店から、順重にお店を巡るトウコ。
タックン達も、はじめてみる雑貨やおもちゃに興味をもったのか、上を見ながら楽しそうについてきた。
かわいいヘアピンや、ピアス。
イッシュ地方には住んでいないポケモン達が、ぬいぐるみになって置かれていたり、レースの編み物の模様になっていたり。
ついに、トウコはお財布を見ながら、悩んでヘアピンを購入した。
「あ、こっちにもお店があるみたい!」
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (9) 作家名:アズール湊