黒と白の狭間でみつけたもの (9)
「ハーデリア、とっしんだよ!」
「ディアー!」
「ヒヤリン、みずでっぽう!」
勢いのついた攻撃がぶつかる!
みずでっぽうをくぐりぬけて、ハーデリアが頭を出した!
ぶつかる!
「ヒヤリン!いわくだき!」
「ッヤ!」
向かってくるハーデリアの頭に、ヒヤリンのいわくだきがぶつかった!
石がぶつかりあったみたいなすごい音!
はじかれて、倒れたのはハーデリア。
でも、まだ起きあがる!
アロエはいいキズぐすりを使った。
ハーデリアに元気が戻る。
「アンタがどんな戦いをするか、わかってきたよ。ハーデリア、もう一度とっしんだ!」
弱った、ヒヤリンにとどめをさす気だ。
再び、体ごとつっこんできたハーデリアに、ヒヤリンはあわててみずでっぽうをかける!
「ダメ!ヒヤリン、ジャンプよ」
「ヒヤヤ!?」
トウコの声にあわてて飛び越え、なんとか攻撃をかすらせた。
とっしんは、攻撃にスキが大きい。
空中で体を立て直すヒヤリンに、トウコは言った!
「もう一度、みずでっぽう!」
「ヒヤー!!」
まだこちらを向けていない、ハーデリアに攻撃が直撃する!
ハーデリアはふらふらと目を回して倒れた。
「そうくるかい。この不利な状況でも、考えれば勝てるってもんさ」
アロエは、ハーデリアを戻し、新たにボールを投げる。
現れたのは、ミルホッグ。
地面に立ったヒヤリンに、つかさずアロエが指示した!
「ミルホッグ!さいみんじゅつ!」
「ミミッ!」
ヒヤリンは術にかかり、眠りだしてしまった。
「ミルホッグ!かたきうち!」
バシンと決まる攻撃!
ヒヤリンは、大きく飛ばされて、壁に体を打ち付けた!
なにあの技!?
恐ろしく攻撃力が高い!
「びっくりしたかい?この技は、前に出したポケモンが倒れていると、攻撃力が増すんだよ」
私たちは、1度ハーデリアを倒してる。
この技、なんとかしないと!
ヒヤリンをボールに戻すと、トウコは急いで、ボールを取り出し投げた。
「タッくん!」
「タジャ!」
眠らされる前に!
「タッくん、やどりぎのタネ!」
ぽこぽこと跳ねた、やどりぎのタネが、ミルホッグに突き刺さる!
「ミルホッグ!さいみんじゅつ!」
「ミッ!」
タッくんが眠る……しかし、すぐにカゴのみで目を覚ました。
チェレンからもらったカゴのみ。
何か理由があると思ったけれど、こういうことでしょ! 役に立ったわ。
ここからは、早さが勝負!
やどりぎのタネが、ミルホッグの体力をじわじわと削る!
「タッくん!グラスミキサー!」
「タジャー!」
緑のつむじ風!
渦を巻いて、ミルホッグの体力を削る!
それでも、ミルホッグはまだ立ち上がる!
「ミルホッグ、もう一度さいみんじゅつだよ!」
「ミミミッ!」
ミルホッグの技に、タッくんは目を閉じてしまった。
まずい!
「戦略はもう終わりかい?ミルホッグ、かたきうち!」
巨大な威力を持った攻撃が、タッくんに迫る!
ねむけざましを渡すには遅い!
タッくんは目を閉じて動かない!
「起きて!タッくん」
トウコの声が聞こえたのか、タッくんの目が大きく開いた。
そして、急激に葉が伸び始める!
「!?」
背が伸びて、体も大きくなる。
たてがみのように大きな葉っぱが生えて、背伸びをした。
「進化?」
タッくんは、向かってきた攻撃を見て、長くのばしたつるで、ミルホッグをはじいた!
攻撃をはじかれ、ミルホッグがあわててジャンプしながら後退する。
「タッくん…」
「ジャノビーに進化したのかい。ミルホッグ、気をもちなおしな!もう一度、かたきうちだよ!」
ミルホッグが攻撃に向かおうとした、その時、ミルホッグは、がくんと膝をついた。
はじめに植え付けたやどりぎのタネ。
ようやく攻撃が効いてきたようだ。
「!!」
スキ有り!
「タッくん!もう一度、グラスミキサー!」
「ジャッビーー!!」
ツタージャの時よりもずっと大きな緑のつむじ風。
大きな緑の刃。
弱ったミルホッグを完全に捕らえた!
「ミミッー!」
ミルホッグは、目を回して倒れ込む。
ふらふらのミルホッグをアロエは、ボールに戻した。
「たいしたもんだよ、アンタ。ほれぼれしちゃうじゃないか!」
勝ったんだ!
「やったー!タッくんすごーい!大きくなっちゃって!」
身長の伸びたタッくんを抱きしめると、照れくさそうにタッくんは笑った。
「うっとりするほどの、得も言われぬ戦いっぷり。このベーシックバッジを受け取るのに、ふさわしいポケモントレーナーだね、トウコ!」
そう言われて、トウコはベーシックバッジを受け取った。
綺麗なバッジ。
また一つ、大きくなれた気がする。
「これも持って行きな!」
アロエから、渡されたのは先程苦しんだ、【かたきうち】の技マシン。
これは、この先、使い方によっては、結構使えるかも知れない。
「ありがとうございます!」
「アンタみたいな元気なトレーナーが来るとうれしいよ。さっきみたいな、よくわかんないお兄ちゃんよりね。この先も頑張りなよ!」
アロエは、そう言って微笑んだ。
よくわかんないお兄ちゃんって……もしかして、Nのこと?
トウコが考えている時だった。
表の方から悲鳴が上がった!
え?なに?
「なんだい?何かあったのかい?」
アロエが驚く中、ジムに走ってやってきたのは、アロエの旦那さん。キダチだった。
「ママー!!」
キダチが青ざめた顔して、ジムの階段を駆け下りてきた。
「ママ!!大変! 大変だよ!プラズマ団という連中が骨をいただくって!」
「なんだって!どういうことだい!? トウコ!アンタもおいで!!」
急いで、博物館の展示コーナーへ走るアロエと、キダチ。
プラズマ団?!
なんでこんなところに?
骨をいただくって、いったいどういうこと!?
トウコも、アロエの後を急いで追いかけた。
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (9) 作家名:アズール湊