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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (9)

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何がいけないのか、Nはやっぱりよくわかっていないみたい。

Nにとっては、励ましているつもりだったのかもしれないが、Nは顔も整っているし、あんなにすぐ抱き寄せられたりしたら、平常心でいられるはずがない。もしかして、自覚がないのだろうか。

あんなに、くっついてたなんて!

しかも、街中で!?

恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「ボクは行くよ。しなくてはいけないことがあるからね。またね、トウコ」

トウコが元気になったと勘違いしたNは、そう言って軽快に歩いていく。

真っ赤な顔をしたトウコを、まるで気にしている様子がない。

まさか、からかわれたんじゃないだろうかとさえ、思ってしまった。

彼が向かう先はヤグルマの森の方だ。

ジムをめぐっているのなら、次のジムを目指すのだろう。

また、どこかで会うのかも知れない。

「そうよ、その時は言ってやらなきゃ!こんなに人前で……」

抱きつかないで、なんて、とても言葉にできなくてトウコは恥ずかしくなった。

火照った顔を落ち着かせながら、遠くなったNの背中を見送った。

姿はすぐに見えなくなる。

姿が見えなくなってから、ふと彼が言った、悲しい言葉を思い出した。

胸がぎゅっと締め付けられた。

きっと、いつかはNだってわかってくれるよね…。

腰のボールがカタカタと揺れた。

そうだよね、今日はポケモンジムに挑戦をしに来たんだ。

博物館の入り口。

人の出入りが多い場所だということを思い出して、トウコはハッとした。

まさか、さっきの見られたんじゃ!

慌てて周りを見てみるが、特にこちらをじっと見ている人はいない。

今の状況……誰かに見られていたかと思うと恥ずかしすぎる。

チェレンやベルに見られたらどうしようかと思った。

いけない、いけない。

集中、集中!

まだ顔の火照りが消えない。

もう、さっきのは忘れないと!! ジムへの挑戦頑張らなきゃ!

トウコは顔の火照りを忘れるように、駆け足で博物館に入りこんだ!

と、入り口近くで、展示品を見ていたおじさんに頭からつっこんでしまった。

「うお!」

衝撃に、背中を押さ、もだえるおじさん。

「す、すみません…」

申し訳なく謝る。

まさか、すぐ目の前に人がいるなんて思わなかった。

「良いとっしんだね。わたしのママみたいだったよ…」

怒られるかな?

トウコが構えていると、おじさんは笑顔で振り返った。

「どうも!元気がいい子だね!わたくし副館長のキダチです。せっかくいらしたんです。館内を案内しましょう!」

「え? あ、はい…」

トウコが断る間もなく、キダチは説明し始める。

私、ジムに来たんだけれどな…。

そう思いながら、怪我させただけに断れなかった。

まずは、目の前の展示品。

大きなドラゴンの骨格だ。

「うーむ!この骨格は、いつみてもホレボレしますなー! 見ての通り、ドラゴンポケモンの骨格です。世界中を飛び回っている内に恐らく事故にあって、そのまま亡くなったのでしょう」

ふ~ん、こんな大きなポケモンがいるのねぇ。

巨大なドラゴンの標本。

博物館の中央で一番目立っていた。

キダチは歩き始める。

「こちらは、宇宙からきた隕石です。珍しいでしょう」

うん、うん。

隕石ははじめてみたかも。

そんな説明を聞かされながら、副館長のキダチについていき、博物館のいろいろな展示品を見ながら1周する。

丁寧な説明に、トウコも楽しくなってきていた。

最後にみせてくれたのは、古い石だった。

「こちらは砂漠あたりでみつかった古い石です。古いこと以外はまったくかもがなさそうな物でして…。ただとても綺麗ですので展示してあります」

古くて白い石。

しかも、ひび割れて…。

でも、ほんと綺麗。

透きとおるような白さの中に、何かが光っている。

不思議な石。

また歩き出す、キダチをトウコは追いかけた。これで展示品は全部見たはず。まだ何かあるのだろうかと思った。

博物館の奥。階段を上がっていく。どうやら奥にまだ部屋が続いているようだ。

階段を上りきると、キダチは立ち止まった。

「そして、この先がポケモンジムになっております。一番奥で、強くて優しいジムリーダーが待っています。ちなみに、ジムリーダーのアロエは、わたくしの奥さんなのです」

照れながらも、嬉しそうに言う。紹介したかったのは、展示品じゃなくて、ジムリーダーの奥さんのことだったみたいだ。

こんな優しい旦那さんがいる、ジムリーダーってどんな人だろう。きっと仲が良い夫婦なんだろうな。

心がほんわかした。

キダチに見送られながら、トウコはシッポウシティジムの扉を開けた。

奥は図書館になっていた。

巨大な本棚が立ち並び、古い書物の香りがする。

しかし、ジムにしては、書物が並ぶばかり。

ジムリーダーらしい人の姿はない。

勝負をしかけてきたジムのトレーナーを1人倒して、このジムが本に書いてあるクイズを解いていかなければ、ジムリーダーまでたどり着けないことがわかった。

よく見れば、しょっちゅう動かされたような本があちら、こちらに散らばっている。

本棚から飛び出した本まである。

なんだか、おもしろそう。

始めのクイズは、『はじめましてポケモンちゃん』という本にあるのだとか。

ジムのトレーナー達と戦いながら、ヒントをもらい、トウコは巨大な図書館の中を探し始めた。

行ったり、来たり。

戻っては、本の中のクイズに答えて…。

違う本を探して…。

何度か同じ場所を往復しながら、クイズに答えると、最後のトレーナーとの勝負になった。

勝負に勝ち、本棚に隠れていたスイッチを押すと、下から現れたのは、巨大な地下への階段。その先にジムリーダーがいると、説明を受けた。

ジムリーダーは地下にいたんだ。どうりで見当たらないわけだ。

2つ目のバッジ、絶対手に入れるんだから!

トウコは決意を固めながら、階段を降りた。

地下室は、博物館の館長室になっているようだった。古い書物や、専門書の他に、ガラスケースに入った、骨などの標本も置かれている。

その奥は、ポケモンバトルをしても支障がないくらいの、バトルスペースが空いていた。

「いらっしゃい!」

ジムリーダーの女の人が、階段を降りてきたトウコに声をかけた。

キダチさんの奥さん。色黒の、懐が広そうな女性だった。

「シッポウシティ博物館館長にして、シッポウシティジムのジムリーダー、それがこのあたしアロエだよ」

「私は、カノコタウンからきたトウコです」

「そうかい、カノコタウンから。さあて、挑戦者さん、愛情込めて育てたポケモンでどんな戦い方をするのか研究させてもらうよ!」

アロエは、ハーデリアをボールから出してきた。

負けない!

「いけ!ヒヤリン!」

「ヒヤヤ~!」

ヒヤリンがボールから出た瞬間、ハーデリアはいかくする。

ヒヤリンが少し怖じ気づいた。

「ヒヤリン、ふるいたてる!」

ヒヤリンが集中して、気力を上げた。攻撃力が増す!

「ハーデリア、にらみつける!」

防御力が下げられた。

攻撃が来る!

ハーデリアが走った!