黒と白の狭間でみつけたもの (10)
( 第10章 迷いのヤグルマの森 〉
博物館の展示コーナーに駆けつけた時には、先に着いたアロエと、大勢のプラズマ団が言い合いを始めていた。
「ちょっとアンタ達!おふざけはよしとくれ!」
アロエが大きく声を張り上げた。
数十人はいるかと思われるプラズマ団。
中央にある巨大なドラゴンの標本を取り囲むようにしている。
ほとんど、博物館を占拠したようなものだ。
「来たか、ジムリーダー。我々、プラズマ団はポケモンを自由にするため、博物館にあるドラゴンの骨をいただく」
ひるむ様子もなく、平然と言い張るプラズマ団員。
まるで当たり前みたいな口ぶりだ。
見ていてイライラするわ。
「また、人のもの盗もうっていうの!?」
アロエの隣に立つと、トウコも声を張り上げて言った。
見れば、この前、幼稚園の小さな女の子のポケモンを奪い取ろうとした、例のプラズマ団員たちもいる。
1度ならず、2度までも!
なんて奴らだろう。
「やや、おまえはこの前の!」
一人の団員が気づいたようだった。
「アンタ達、馬鹿なこと言ってないで帰っておくれ!いい、営業妨害だよ!」
確かにその通り。
博物館を見に来たお客さんも、これからジムに来るかも知れないトレーナーも迷惑そうだ。
「いいかげんにして、早く帰りなさいよ!みんなの迷惑よ!」
トウコも怒鳴る。
「さては、我々が本気だと思っていないな!」
プラズマ団員達が口々に言い始めた。
「我々は本気だぞ!」
「そうだ!我々の力を思い知れ!」
人数が多いせいか、広い博物館内に声がいくえにも反響する。
あー!もう、うるさい!
力づくで追い出してやりたい。けれど、ジム戦あとのタッくん達は、力を出し尽くした後だ。そう長く戦えないはず。
だいたい、こんな人数相手では、トウコとアロエだけでは無理だった。
動こうにも、相手が頭に血が上ったら、どんな行動をしてくるかわからない相手だけに、手出しができない。
ジムリーダーのアロエも、同じ事を考えているのか、イライラしている様子があるが、いつでもボールに手を伸ばせるようにしているのに、プラズマ団を睨み付けたまま、動こうとはしない。
せめて、外に追い出せれば!
そう思ったとき、騒いでいるプラズマ団の中から、リーダー格らしい団員が、大きく声を張り上げた。
「まぁいい、実力行使だ!我々が本気であることを教えるため、あえておまえの前で奪おう」
そう言って、手を挙げ誰かに合図を示した。
プラズマ団員の1人が、ドラゴンの標本に手をかける!
「やめて!」
トウコが前へ駆けだした瞬間、声が上がった!
「では、煙幕!」
「「プラーズマー」」
かけ声と共におこる煙幕。
真っ白なけむりが博物館の中にたちこめて、前が見えなくなってしまった!
あまりの煙の量に、咳が止まらなかった。
前が見えない!逃げられちゃう!
そう思いながらも、全く見えない視界に足が止まった。
周囲でも、ごほごほっと咳が起こる。
煙の中、物音がする。
ようやく、視界が良くなったとき、プラズマ団の姿は消え、ドラゴンの標本から頭の骨だけが消えていた。
やられた…。
「ああ、なんてこったい……」
慌てて博物館を飛び出していくアロエ。
「あっあっ!? 追いかけないといけないですよね」
旦那のキダチも青ざめている。
「あのホネは、アロエが大好きなものだったのに……」
そうなんだ。
アロエさんが、博物館の中でも大切にしていたものなんだ。
それなのに、プラズマ団のやつらは!!
「ほんと、最低だわ!キダチさん、私、アロエさんのところに行ってくるね!」
トウコは、博物館から出て行った、アロエを追いかけた。
博物館のすぐ外にアロエはいた。
動揺を隠せない様子で、逃げていったプラズマ団の行方を知ろうと、辺りを見渡している。
トウコも辺りを見渡すが、どこへ逃げたのか、全くわからなかった。
煙幕のせいで、時間を稼がれてしまった。
もう夕方だ。
暗くなったら、行方をくらまされちゃうよ。
どうしたらいいの?
焦るトウコたち。
その時、手を振りながら、博物館に向かってさっそうと歩いてくる人物がいた。
しゃれた格好のイケメン男性。
モデル?
スタイリスト?
この人は?
「やあ、アロエねえさん。何かいい化石はみつかったかい?」
気軽に話しかける男性。
アロエもよく知っている人物のようだった。
「アンタ、また息詰まったのかい?」
ため息混じりにそう言った。
そして、トウコに紹介する。
「トウコ!こいつさ、こう見えてもヒウンジムのジムリーダーで、アーティって言うんだよ!」
ジムリーダー?
えー!? この人が?
トウコは目を見開きながら、やってきたアーティをじろじろとみた。
爽やかにオシャレな服を着こなしていて、どっかのモデルか、スタイリストかと思った。
全然、ジムリーダーっぽくない。
「……んうん? 何となく気分転換かな?」
状況がつかめないアーティは、アロエとトウコの様子をみて、少し困惑気味にそう言った。
違和感を感じ取ってか、こちらが話しを切り出す前に聞いてきた。
「…でさ、なんとなく大変そうなんだけれど、ひょっとして何かありまして?」
さすがジムリーダー。
勘が鋭い。
「そうなんだよ!!展示品を持っていかれてさ!」
怒りながら話し始めるアロエ。
アーティに向かって状況を話し始める。
ちょうどその時、アロエの後ろの方から、ベルがやってくるのが見えた。
手を振って笑っている。
もしかして、人が集まっているから、面白そうにでも見えたのかも知れない。
ベルはこちらに着いて、そうそうに言った。
「ねぇねぇ、トウコ。みんな集まってどうしたの?」
眼をキラキラ輝かせている。
やっぱり…。
よく見ると、後ろにチェレンをつれている。
どうやら、ベルと一緒だったみたい。
もしかしたら、バトルでもしてたのかもしれない。
チェレンは、こちらの騒動に勘づいたのか、すぐに質問をぶつけてきた。
「……トウコ、何か問題でも?」
「ああ…ええーとね……」
2人に向かって、騒動の内容を話し始めようとしたとき、アロエが振り返るようにしてこちらを見た。
アーティもこちらを見ている。
どうやら話しは、終わったみたいだ。
「なんだい、なんだい?この子たちは……?アンタの友達かい?」
「…えーと。私の幼なじみのトレーナーの、ベルとチェレンです」
トウコが紹介するのを黙ってきくと、アロエは頷いた。
「ベルにチェレン。なるほどトレーナーなんだね。それなら手分けするよ」
え?手分け?
トウコ、ベル、チェレンが戸惑っているのも、お構いなしに、アロエは言った。
「みんなで探した方が効率がいいからね。アンタ達も、手伝っておくれ!」
「あ…ハイ…」
アロエに言われ、チェレンとベルは理由がわからないまま頷いた。
確かに、人を分けた方が捜しやすい。
手分けってそういうことか。
でも、心の準備が!
戸惑いながら、トウコもアロエの指示をまった。
「じゃ、あたしゃこっちね」
博物館の展示コーナーに駆けつけた時には、先に着いたアロエと、大勢のプラズマ団が言い合いを始めていた。
「ちょっとアンタ達!おふざけはよしとくれ!」
アロエが大きく声を張り上げた。
数十人はいるかと思われるプラズマ団。
中央にある巨大なドラゴンの標本を取り囲むようにしている。
ほとんど、博物館を占拠したようなものだ。
「来たか、ジムリーダー。我々、プラズマ団はポケモンを自由にするため、博物館にあるドラゴンの骨をいただく」
ひるむ様子もなく、平然と言い張るプラズマ団員。
まるで当たり前みたいな口ぶりだ。
見ていてイライラするわ。
「また、人のもの盗もうっていうの!?」
アロエの隣に立つと、トウコも声を張り上げて言った。
見れば、この前、幼稚園の小さな女の子のポケモンを奪い取ろうとした、例のプラズマ団員たちもいる。
1度ならず、2度までも!
なんて奴らだろう。
「やや、おまえはこの前の!」
一人の団員が気づいたようだった。
「アンタ達、馬鹿なこと言ってないで帰っておくれ!いい、営業妨害だよ!」
確かにその通り。
博物館を見に来たお客さんも、これからジムに来るかも知れないトレーナーも迷惑そうだ。
「いいかげんにして、早く帰りなさいよ!みんなの迷惑よ!」
トウコも怒鳴る。
「さては、我々が本気だと思っていないな!」
プラズマ団員達が口々に言い始めた。
「我々は本気だぞ!」
「そうだ!我々の力を思い知れ!」
人数が多いせいか、広い博物館内に声がいくえにも反響する。
あー!もう、うるさい!
力づくで追い出してやりたい。けれど、ジム戦あとのタッくん達は、力を出し尽くした後だ。そう長く戦えないはず。
だいたい、こんな人数相手では、トウコとアロエだけでは無理だった。
動こうにも、相手が頭に血が上ったら、どんな行動をしてくるかわからない相手だけに、手出しができない。
ジムリーダーのアロエも、同じ事を考えているのか、イライラしている様子があるが、いつでもボールに手を伸ばせるようにしているのに、プラズマ団を睨み付けたまま、動こうとはしない。
せめて、外に追い出せれば!
そう思ったとき、騒いでいるプラズマ団の中から、リーダー格らしい団員が、大きく声を張り上げた。
「まぁいい、実力行使だ!我々が本気であることを教えるため、あえておまえの前で奪おう」
そう言って、手を挙げ誰かに合図を示した。
プラズマ団員の1人が、ドラゴンの標本に手をかける!
「やめて!」
トウコが前へ駆けだした瞬間、声が上がった!
「では、煙幕!」
「「プラーズマー」」
かけ声と共におこる煙幕。
真っ白なけむりが博物館の中にたちこめて、前が見えなくなってしまった!
あまりの煙の量に、咳が止まらなかった。
前が見えない!逃げられちゃう!
そう思いながらも、全く見えない視界に足が止まった。
周囲でも、ごほごほっと咳が起こる。
煙の中、物音がする。
ようやく、視界が良くなったとき、プラズマ団の姿は消え、ドラゴンの標本から頭の骨だけが消えていた。
やられた…。
「ああ、なんてこったい……」
慌てて博物館を飛び出していくアロエ。
「あっあっ!? 追いかけないといけないですよね」
旦那のキダチも青ざめている。
「あのホネは、アロエが大好きなものだったのに……」
そうなんだ。
アロエさんが、博物館の中でも大切にしていたものなんだ。
それなのに、プラズマ団のやつらは!!
「ほんと、最低だわ!キダチさん、私、アロエさんのところに行ってくるね!」
トウコは、博物館から出て行った、アロエを追いかけた。
博物館のすぐ外にアロエはいた。
動揺を隠せない様子で、逃げていったプラズマ団の行方を知ろうと、辺りを見渡している。
トウコも辺りを見渡すが、どこへ逃げたのか、全くわからなかった。
煙幕のせいで、時間を稼がれてしまった。
もう夕方だ。
暗くなったら、行方をくらまされちゃうよ。
どうしたらいいの?
焦るトウコたち。
その時、手を振りながら、博物館に向かってさっそうと歩いてくる人物がいた。
しゃれた格好のイケメン男性。
モデル?
スタイリスト?
この人は?
「やあ、アロエねえさん。何かいい化石はみつかったかい?」
気軽に話しかける男性。
アロエもよく知っている人物のようだった。
「アンタ、また息詰まったのかい?」
ため息混じりにそう言った。
そして、トウコに紹介する。
「トウコ!こいつさ、こう見えてもヒウンジムのジムリーダーで、アーティって言うんだよ!」
ジムリーダー?
えー!? この人が?
トウコは目を見開きながら、やってきたアーティをじろじろとみた。
爽やかにオシャレな服を着こなしていて、どっかのモデルか、スタイリストかと思った。
全然、ジムリーダーっぽくない。
「……んうん? 何となく気分転換かな?」
状況がつかめないアーティは、アロエとトウコの様子をみて、少し困惑気味にそう言った。
違和感を感じ取ってか、こちらが話しを切り出す前に聞いてきた。
「…でさ、なんとなく大変そうなんだけれど、ひょっとして何かありまして?」
さすがジムリーダー。
勘が鋭い。
「そうなんだよ!!展示品を持っていかれてさ!」
怒りながら話し始めるアロエ。
アーティに向かって状況を話し始める。
ちょうどその時、アロエの後ろの方から、ベルがやってくるのが見えた。
手を振って笑っている。
もしかして、人が集まっているから、面白そうにでも見えたのかも知れない。
ベルはこちらに着いて、そうそうに言った。
「ねぇねぇ、トウコ。みんな集まってどうしたの?」
眼をキラキラ輝かせている。
やっぱり…。
よく見ると、後ろにチェレンをつれている。
どうやら、ベルと一緒だったみたい。
もしかしたら、バトルでもしてたのかもしれない。
チェレンは、こちらの騒動に勘づいたのか、すぐに質問をぶつけてきた。
「……トウコ、何か問題でも?」
「ああ…ええーとね……」
2人に向かって、騒動の内容を話し始めようとしたとき、アロエが振り返るようにしてこちらを見た。
アーティもこちらを見ている。
どうやら話しは、終わったみたいだ。
「なんだい、なんだい?この子たちは……?アンタの友達かい?」
「…えーと。私の幼なじみのトレーナーの、ベルとチェレンです」
トウコが紹介するのを黙ってきくと、アロエは頷いた。
「ベルにチェレン。なるほどトレーナーなんだね。それなら手分けするよ」
え?手分け?
トウコ、ベル、チェレンが戸惑っているのも、お構いなしに、アロエは言った。
「みんなで探した方が効率がいいからね。アンタ達も、手伝っておくれ!」
「あ…ハイ…」
アロエに言われ、チェレンとベルは理由がわからないまま頷いた。
確かに、人を分けた方が捜しやすい。
手分けってそういうことか。
でも、心の準備が!
戸惑いながら、トウコもアロエの指示をまった。
「じゃ、あたしゃこっちね」
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (10) 作家名:アズール湊