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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (10)

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アロエが左側を指さした。

町の入り口の方だ。

アロエが、町のゲートの方を見張るらしい。

「そしてアンタ達!チェレンとベルは博物館に残ってちょうだい!」

突然、指示され、2人は困惑気味だが、頷いた。

そういえば、なんでこうなってるかもまだ説明してないもんね…。

後でちゃんと話すから!

「で、アーティとトウコはヤグルマの森を探しておくれよ。 いい?アーティ、アンタが案内してやんな。じゃ、たのんだよ!」

そうテキパキと早口に指示を残して、アロエは町の入り口ゲートへと、大急ぎで走っていった。

すごい…。

って、私が森の捜索!?

トウコが呆然としていると、アーティが肩をたたいてきた。

「さてさて……。君……トウコさんだっけ?」

「…はい」

「じゃあ行こうか、泥棒退治とやらにさ」

そう言って、アーティまでヤグルマの森へ駆けていく。

みんな行動が早い!

早い! 早いよ、アーティさん!

急がなきゃだけれど、準備が何もできてないよ!

さっきジム戦が終わって、みんなボロボロだし…、でもポケモンセンターに行く時間もない。

そんなことしてたら、逃げられちゃう!

でも、このまま行っても戦力として足を引っぱっちゃう気が……。

なんとかしなきゃ!

道具を使って…え~と、えっと……。

大急ぎで頭をフル回転させて、今、持っている道具を思い出した。

持ち物を考えながら、トウコが走り出そうとしたとき、ベルにぐいっと鞄を引っぱられた。

「ちょっとベル!」

急いでるのに…。

「トウコ、慌てないで!コレを持っていってよ」

そう言って、ベルは、鞄から取り出したいいキズぐすりを3つ渡してくれた。

「いいの?」

ポケモンセンターに行けないだけに、助け船だ。

「うん、だってなんか大変そうだし!」

にっこりと笑うベル。

「あとね、これも!マコモさんから預かってたの。渡し忘れちゃったんだって、ダウンジングマシンだよ!これを使うと、目には見えない隠れた道具がわかるんだって!」

トウコは、ダウジングマシンも受け取った。

マイペースなベル。

でも、そのおかげで落ち着きを取り戻せた。

そうだ。焦ってちゃ、だめだよね。

「ありがとう、ベル!」

優しいベル。いっつもその優しさに助けられちゃう。

ほんと、ベルが友達で良かった。

「とりあえず、僕たちは博物館を守ればいいんだね?」

チェレンが言った。

冷静沈着。状況の把握もはやい。そこがいつも頼りになるんだ。

こんなとき、すぐ動いてくれるのはチェレンだよね。

「早く行ってきなよ、トウコ。なんだかわからないけれど、大変なんだろ?」

そう言って、チェレンはいそいそと博物館の中に入っていく。

「あっ あたしも!」

ベルも急いで博物館の中へ入っていった。

2人ともすごく心強い。

ありがとう、ベル、チェレン。

ほんとに大好き!

私も頑張らなくちゃ!

「まかせて!絶対、取り返すから!」

トウコは、帽子をきゅっとかぶり直すと、アーティが向かったヤグルマの森へと走った。

夕暮れ時の森はもう薄暗くなっていた。

アーティは、その森の入り口でトウコを待っていた。

「この先が、ヤグルマの森だよ。確かに、ここに逃げられるとやっかいかもね」

そう言って歩いていく。

トウコも後に続いた。

確かに、やっかいだ。

だだでさえ、薄暗い森が日が沈むほど、見えづらくなる。

ましてや、迷いの森ともいわれるヤグルマの森。

格好の隠れ家な気がする。

プラズマ団。絶対に見つけてやる!

ヤグルマの森にはいると、意外にも、舗装された道路を真っ直ぐ歩くことになった。

歩きながら、アーティがトウコに話す。

「あのね、ヤグルマの森を抜けるには2通りあるんだ」

「2通りですか?」

「そうさ、まっすぐ行く道と、森を抜ける道。どちらもヒウンシティに向かってる」

プラズマ団は、どっちへ向かったのだろう。

アーティは話を続ける。

「ボクはこのまま、まっすぐ進んであいつらを追いかけようと思う。いなかったとしても、逃げられないよう出口を塞ぐつもりさ。ヒウンシティまで行かれたとしても、僕なら、あいつらを逃がさないよう、包囲網をつくることもできるからね」

確かに、ヒウンジムのジムリーダー、アーティさんなら、この辺りの土地勘もあるし、人脈だってある。

この先のルートを、探すなら一番の適任者だ。

「じゃあ、私が森のルートですね」

「お願いするよ。君はこっちのルートに、プラズマ団が隠れていないか探してくれ。トレーナーも多いけれど、基本一本道だから、迷うことはないよ、きっと」

そう言って、アーティは道の途中で立ち止まった。

舗装された道路から、それた道がある。

薄暗い森の中、大きな木々の間に、道ができている。

誰かが切り開いてできた道のようだけれど、特に整えられている様子もない。

わずかに夕日がさしこむ下には、生い茂った草むらがみえた。

ここが、森を抜ける、もう一つの道。

「わかりました」

トウコは頷いた。

「それじゃあ、アロエねえさんのため、やりますか!」

そっちは、頼んだよとアーティは、道路を真っ直ぐ駆けていった。

トウコも、森の道へと足を踏み入れた。

木の陰が覆っていく。

どんどん薄暗くなる。

夕日が射し込んでいる内に、なんとか見つけたい。

トウコは、ベルからもらった、いいキズぐすりをタッくん達に使うと、森の中を進み始めた。

草むらをガサガサと進む。

普通の草むらよりも、茂みが濃い。

よく人が歩いている草むらと、そうでない草むらの色がはっきり違う。

道は、アーティの説明通り、木の茂みに入りでもしない限り真っ直ぐだった。

急いで逃げるなら、道なりに進むはず。

ただ、隠れようとしているなら、茂みに隠れるのかも知れない。

途中、いきなり木から落ちてくる虫ポケモンたちに、驚かせられながら、トウコは草むらと木の茂みに注意しながら突き進んだ。

少し、じめじめした湿っぽい道が続く。

土の香り。

ぽきぽきと、小枝の折れる音が時々響く。

いつの間にか、すっかり森の中だ。

先程まで、街中にいたのをすっかり忘れてしまう。

辺りは妙な静寂に包まれているかと思えば、突然マメパトが鳴いたり、虫ポケモンが飛び出してきたり、草むらになりすました、チュリネやモンメンが驚いて逃げて行ったり。

トレーナーが話しかけてくることもあったが、丁寧にポケモンバトルを断った。

周囲が同じような木ばかりだからか、方向感覚が麻痺してきている。

切り開かれた、道なりに進まなかったら、戻れなくなりそうだ。

迷いの森と言われるだけはある。

「ちょっと、君!」

突然、声を掛けられてビクリとする。

振り返ると、赤い服に身を包んだレンジャーの男性が、がさがさと木々の合間の草むらから出てくるところだった。

森林の保護や警備を専門とする人だ。

木の茂みから出てきた?!

よくも迷わずに。

トウコが感心しながら男性をみた。

「君、トレーナーだね。もう日が暮れる!最近、そうやって森で遭難する人が多いんだ。早く出た方がいい」