黒と白の狭間でみつけたもの (10)
すごい、アロエさん……あんなに重かったのに。
「トウコ、本当にありがとうよ。アンタのように優しいトレーナーなら、一緒にいるポケモンも幸せだよ。こいつはアタシの気持ちさ、大切に使っておくれ!」
アロエはそう言って、トウコに、丸い石を握らせた。
これって!
「そいつは、つきのいし!それを使うことで進化するポケモンがいるんだよ。さて、ドラゴンのホネを博物館に戻さないとね。それと、アンタの怪我も治さないと!」
アロエは、テリムに支えられて立っているトウコの腕をぐいとつかむと、無理矢理おんぶした。
「え!ちょっと、アロエさん!無理がありますよ!」
なんとか歩けますからというトウコの意見は、アロエの一言で終わった。
「あはは、大丈夫だよ。アンタの一人や二人くらい、たいしたことはないさ。ほら、しっかりつかまらないと、落ちてしまうよ」
「あ…はい…。ありがとうございます」
アロエの肩に手を伸ばし、しっかりとつかまると、腰に硬い物が当たった。ドラゴンの頭の骨だろう。
「ほら、アンタはついてきな!」
「デリー!」
ほとんど強制的におぶられたまま、テリムを引き連れたアロエさんに連れられて、トウコはシッポウシティに到着した。
なんだか、今日は誰かに抱えられてばかりだ。
貴重な つきのいしまでもらったのに、トウコはこの後、アロエさん宅でキズの処置やら、ポケモンの回復やらで、結局、数日間お世話になることになってしまった。
作品名:黒と白の狭間でみつけたもの (10) 作家名:アズール湊