こらぼでほすと ニート16
「うん、そうする。・・・・きみが言ってたこと、少し理解できたよ。互いに与えて与えられる関係というのは、温かいものなんだね。ママは僕にも、きみたちに与えるように与えてくれる。僕がママに与えられるものは、大きなものじゃないけど、ちゃんとお礼を言ってくれる。」
ここ数週間、省みると、そういうものなんだな、と、リジェネにも理解できた。ニールがしてくれることは大したことではない。ホテルで受けるサービスとも違うものだが、何かを与えたいという気持ちから現れるものだ。だから、対価は必要ではない。ただし、リジェネも何かを与えたいと思うようになった。できることは、看病ぐらいだから、それだけは実行していたが、それだってリジェネも対価を要求しようと思うものではなかった。ティエリアのために、ママには元気でいて欲しいからのことだ。
「ふん、きみでも理解できたのか? それは重畳だ。ニールがくれるものは形はないが、心に積もるものだ。それがあるから、俺たちマイスターは生き残る覚悟をした。俺たちが欠けたら、あの人も道連れになるからな。・・・・あの人は、自分がマイスターだった頃は、俺たちからのものは受け取らなかったんだ。受け取ったフリをして流していた。そうしないと、あの人は壊れてしまうと自分で解っていたんだろう。・・・・今は、全部受け取ってくれる。あちらで生きていてくれて、俺たちは、キラたちに感謝している。」
ティエリアもニールが生きていてくれることに感謝する。もちろん、ニールも同じ事を言っていた。こんなふうに繋がっているから、温かいものになるのだ。
「僕は、きみと一緒にヴェーダになったことが嬉しかった。そして、きみのママに逢って良かったと思う。こんなふうに、きみに感謝を告げられるのは、ママのお陰だ。」
思うことは言葉にするべきだ。ただ、リジェネには、どう話していいのか切欠がなかったし、やり方も知らなかった。『吉祥富貴』に降りて、地上で生活してみて、言うべき事は口にする必要があるのだと学んだから、言える。大したことではない。素直に、ティエリアに嬉しいと言えばよかっただけだった。どう言っていいのか、なんて難しく考えていたから、互いに繋がらなかったのだ。
「俺も、きみがいてくれてよかった、と、感謝している。一人ではヴェーダは寂しい空間だ。」
「僕もだよ? ティエリア。」
「ただし、しばらくは帰って来るな。ニールの世話をしてくれ。このまま、きみが戻ったら、あの人は心配して落ち込むからな。」
「うん、爪が伸びるまでは滞在する。何ヶ月かかかるんだって。その間、僕の世話はしたいんだってさ。」
「本当に、あの人は物好きだ。・・・まあいい。俺たちが動けない今は、きみに頼むしかない。ダブルオーはロールアウトさせた。オーライザーとの調整を始める。ちょうど、きみの爪が伸びる頃には、完成する。」
「了解。じゃあ、データの閲覧をして、僕は戻るけど・・・きみは、僕の身体を使うかい? ママは寝てるけど。」
「いや、いい。俺だけニールの顔を眺められるのは不公平だ、と、ハレルヤが怒っていたから自重する。では、俺も作業に戻る。」
ヴェーダの中に、どちらも溶け込んでしまえば、相手の存在は意識しない。でも、どちらもほんのりと温かいものは感じて頬を緩めた。ヴェーダで、こんなことを感じるは、どちらも初めてだった。
作品名:こらぼでほすと ニート16 作家名:篠義