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IS  バニシング・トルーパー 006-007

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 「うむ。やはり実際に運用して見ればこそ、見えてくるものがある。考えがまだ纏まってなくてうまく言えないが、ISの戦闘は、今まで体験したものとはまったく違うものだ。これから克服しなければならん課題も多い」
 先に口を開けたのは、エルザムが出した煎餅を手に取ったゼンガーだった。
 「そうか。レオナの方はどうだ?」
 「少々機体の癖に振り回されているようにも思えましたが、ゼンガー少佐の基本スキルはしっかり掌握していますし、イグニッション・ブーストまで使いこなしていて、とても初めてとは思えませんでした」
 カップの中にある紅茶を凝視したまま、レオナはエルザムに答えた。
 負けたのが余程悔しいのか、眉を寄せているレオナの表情はとても複雑なものだった。

 「ところでエルザム」
 後ろにいるギリアムが、エルザムに話をかけた。
 「何だ?」
 「二機と聞いたが、もう一機は見せないのか?」
 「ああ、残りの一機は色を塗り替えてる最中だ」
 「塗り替え?……まさか」
 今の答えから何か気付いたギリアムに、エルザムは微笑んで頷いた。
 「やはり私が乗るからには、私色に染め上げないとな」
 「……変わらないな、君も」
 得意げに笑っているエルザムに、ギリアムはやれやれと、ゆっくり頭を横に振った。

 「で、こんな機密を俺に見せて、結局は何をして欲しい?」
 指を組んで、ギリアムはエルザムに今回の呼び出しの真意を問いかけた。
 「……連れない言い方だな。まあ、確かにやって欲しいことはあるが」
 「それは?」
 「……ハースタル機関、具体的に言えばイングラム・プリスケンの調査をして欲しい」
 「漠然としてるな。彼の何が知りたいんだ?」
 「私にもわからない。だが、あの男には何か大きなものを隠しているのは確かだ。それを調べて欲しい。調査の経費は私が出すが、調査結果も私だけに報告してくれ。頼む」
 無理を承知で、エルザムはギリアムに頭を下げた。
 「構わんよ」
 エルザムの頼みは明らかにギリアムの立場に反する部分があるが、ギリアムは即答で了承した。
 親友の頼みが断れないのもあるが、彼自身もイングラムという男に興味があった。
 「本当か」
 「ああ。だが……」
 「……だが?」
 「まずはケーキのおかわりをしてくれ」
 綺麗に平らげたケーキの皿を指て軽く叩いて、ギリアムは意地悪そうに笑った。

 「……ケーキのおかわりなら、いくらでもしてやろう」
 笑いながら、エルザムは冷蔵庫の方に歩いた。

 「ハースタル機関と言えば、あそこの専属テストパイロットも男だったな。もしかしてあの男は特殊例ではなく、ゼンガーと同じただ解除処理されたISコアを使ってるだけか?」
 唐突に、ギリアムは思いついたことを口にした。
 
 「……!」
 ギリアムの言葉が終わるのと同時に、後ろに金属と陶磁とぶつかる音がした。振り返って見ると、それはソファに座っているレオナのフォークが手から落ちて、皿にぶつかった音だった。
 「……すみません。手が滑りました」
 簡単に詫びて、顔が無表情のまま、レオナはフオークを持ち直した。

 「……あの少年か」
 ギリアムの話題に応じたのは、さっきまで一人で煎餅を食っていたゼンガーだった。
 「イングラムという男はよく知らんが、あの少年は中々率直な人間だ。彼と手合わせた俺には分かる」
 「それは私も同意見だ。何度か会話したことはあるが、邪念を持つような人間ではないと思う。ISを動せる理由など、些細なことだ」
 おかわりのケーキをギリアムの前に置いて、エルザムもゼンガーの意見に同意した。
 「……お前たちがそう言うなら、きっとそうだろう。ただ最近聞いた話では、あの少年は日本のIS学園に派遣されたそうだ」
 「IS学園? なぜだ?」
 「具体な話は聞いていないが、データ採取のためと考えるのが妥当だろう。IS学園では一部の国の第三世代ISが活動しているからな」
 「なるほど。仕事熱心で結構なことだ」

 「……」
 フッとエルザムが気付いたのは、レオナの眉がさっきよりさらに寄せていて、明らかに何かに怒っていることだった。

 「……そういえばギリアム、これからの予定はあるか?」
 「予定?こっちに来たのは休暇の名目でね、今日これからは適当に休むつもりだ」
 「そうか。なら私の家に来てくれないか? 今夜は私が腕によりをかけておもてなししよう」
 「それはありがたい。お言葉に甘えさせてもらおう」
 エルザムの招待は、ギリアムにとってありがたい申し出だった。親友の突然の呼び出しでアメリカからドイツまでやってきて、ホテルもまだ予約してない。
 「決まりな。ゼンガーも来てくれ」
 「承知した」

 「レオナ」
 男達の会話に入ってこないレオナに、エルザムが話をかけた。
 「はい。何でしょ」
 「今日は朝からご苦労だった。残りの時間は休暇にしておく、好きに過ごすがいい」
 「有難う御座います」
 「休める時はゆっくり休めよ。近いうちにまた任務があるかもしれん」
 「はい。では失礼します、エルザム様」
 エルザムに一日の休暇を言い渡され、レオナは敬礼して退室した。

 「では行こうか、二人とも。今夜はとって置きのワインを出そう」
 レオナが退室したのを見て、エルザムは再び友人達に向き直した。
 「ああ、それは楽しみだ」
 「俺はウーロン茶でいい」
 「やれやれ。相変わらずに酒は飲めないか、ゼンガー」
 歓談しながら、男三人も勤務室から出て行ったのだった。