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IS  バニシングトルーパー 013-014

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 「ああ、多分ISの技術が欲しかったのだろう。だがその後は白騎士事件の発生、そして国連は実質的権力を失い、国際IS委員会が出来上がった。異星人達もさぞ頭が痛かったのだろう」
 「つまり、篠ノ之博士も異星人の存在を察した?」
 「さあな。だがアラスカ条約のお陰で、地球側の技術発展は異星人達の予想より遅かった。だから彼らは技術の逆輸入をしてきた」
 「逆輸入? それはもしや……」
 「君なら知っているはずだ、二年前のブラックホールエンジン起動実験。ブラックホールエンジンのデータは地球の技術ではなく、異星人達が国際IS委員会を介して提供してきたものだ。そしてあのデータに、欠陥が故意的に組み込まれていた」
 「我々を試すためにの罠でした。当時の我々は既にその意図を見抜きましたが、あえてその欠陥を修正しませんでした」
 二人の話を静かに聞いていた愁も、会話に割り込んできた。
 「そうだ。起動が成功したら、彼らは介入の口実ができるからな。しかし茶番までして時間を稼いだのに、どうやらインスペクターの主戦派は勝手に動いたらしい」
 「だから君は行動を早めたか」
 ここまで聞いて、イングラムがマイヤー総司令と接触した理由が見えて来た気がした。
 「ああ、この星をインスペクターの好きにされては困るからな」

 「しかし、随分と不用心だな。国際IS委員会所属の俺にそんなものを見せるなんて」
 「ふん。余計な心配はしてないさ」
 国際IS委員会所属のギリアムはもしこのことを上層部に報告したら、イングラム達の計画は水の泡となる。だがギリアムの試すような言葉に、イングラムは余裕そうに笑った。
 「だって君は、地球の平和を守る正義の味方だろう?」
 「……」
 イングラムの瞳から発しているその全てを見通したかのような目線で、ギリアムの言葉は続けなかった。


 「宜しいのですか? あのまま帰らせて」
 イングラムがギリアムを送った後社長室に戻っると、愁が来客用椅子に座っていた。
 「構わんよ。俺のことを信用しなくても、彼は贖罪が終わらない限り、我々の邪魔はしないだろう」
 そう答えて、イングラムは自分の椅子に座って、愁と向き合う。
 「そうですか。まあ、貴方がそう言うなら」
 まるで興味なさそうな表情で、愁が背を椅子に預けた。
 「……第二ロットのコアは出来上がりました。約束通り、一個だけ頂きますよ」
 「ああ、構わんよ。君の最高傑作、期待している」
 ギリアムが贖罪を求めているように、白河愁という人間も自分の打算がある。だがそれを承知した上で、イングラムは彼を自分の元に置いている。
 「……分かりました」

 「ところで、ウラヌスシステムの稼動データ分析結果は見たか?」
 唐突に、イングラムは話題を変えた。
 「……ええ。Dr.トキオカの未完成の報告書にざっと目を通しましたが、素晴らしい数値でしたよ。さすがは貴方が見込んだ人間です」
 「ふん、手元に置いた甲斐があったというものだ」
 「この調子なら、サイコドライバーとしての覚醒も十分に見込めるではありませんか?」
 「そうでなければ、あの学園に送り込んだ意味はない」
 「しかし、感情の高ぶりがなければ覚醒できませんとは、難儀な能力ですね」 
 「それでも手に入れればならんよ。MK-IIIとSRXの完成のためにな」
 「ふん、SRXと言えば、パイロットの方はまだですか?」
 「既に見当はついたよ」
 「ほう? いつの間に?」
 「クリスの脳波記録から、Dr.トキオカが興味深い波形を発見したのでな。どうやら、クリスは“同類”と出合ったらしい。以前はクリスがしくじったせいでレオナ・ガーシュタインのスカウトを失敗したが、今回は彼のお陰で新たな人選が見付かりそうだ」
 「それは何よりですね」
 打ち合わせが一旦終わって、愁は椅子から立ち上がった。
 「では、私はこれで。仕事がまだ溜まってますからね」
 「ああ、ご苦労」
 簡単な挨拶して、愁は退室していく。彼が扉から出て行ったの見て、イングラムは机にある電話のボタンを押して、秘書との内線を繋いだ。
 「俺だ。イルムは今社内にいるか?」
 「えっ! あ……えっと、確認します!」
 秘書の裏返った声から察するに、どうやらイルムに口説かれている最中のようだ。
 
 「……マオに知られたくなければ、すぐに来いと伝えてくれ」
 「はい……」
 電話を切って、イングラムは頬杖して小さなため息をついた。
 「近いうち、日本に行く必要があるかもしれんな」
 机の上に置いたプリントには、ぼさぼさ髪をした陽気な少年の写真が貼られていた。