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IS  バニシングトルーパー 019

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 「そう、それそれ」
 「なるほど」
一人で何か納得したような顔して、クリスは席から立った。

 「クリスさん? どこへ行きますの?」
 「さすがにこれ以上睨めっこやらされたら、夕飯に遅れそうだからな」
 隣のセシリアが不思議そうな表情で聞くが、クリスはただ勿体ぶるような笑顔で返事をした後観客席のバリアの前まで歩いて、一夏を睨んでいる隆聖に話しかけた。
 「苦戦しているようだな、隆聖」
 「うっせいよ。次で逆転してやるから黙って観てろ!」
 ハンデつきの状況で追い詰められたのがかなり気に食わないのか、隆盛の声から余裕を感じられない。

 「まぁ、そう言うな。今からR-1の必殺技を教えてやるから」
 「や、やはり必殺技があるのか!? 博士!」
 「誰が博士だよ。いいか? 先ずは一夏がお前の大好きなバーンブレイド3をバカにしてた時の顔を思い出せ」

 「おい! いきなり何を!」
 一夏から抗議の声が上げたが、気にしない。

 「どうだ? 殴りたくないか? あの上から目線、鼻からの笑い声、舐めきった態度……そしてあのふざけたモヒカン」
 「どんな顔だよ! つかモヒカンしてねぇよ!」

 「確かに、思い出してると段々殴りたくなってきたぜ」
 「おい!」

 「その怒りを拳に乗せるようにイメージしろ」
 「分かった!」
 クリスに言われた通りにイメージしていると、R-1のAIが隆聖の意志に答えるように動き出す。

 <T-LINKシステムリンク値上昇開始、念動力発生装置起動、ジェネレータ出力アップ>

 握り締めたR-1の右拳が段々と光って唸り始めて、隆聖はそれを横っ腹に構えた。肩部のスラスター方向を後方へ集中させ、放出したエネルギーを一度取り込んで圧縮する。

 加速して必殺の拳を叩き込む。この構えを見れば、隆聖の次の行動など誰でもわかることだ。そしてそれを理解した一夏は雪片弐型を正面に構えて隆聖の攻撃に備える。

 <T-LINKナックル、スタンバイ>

 隆聖の視界に映っているAIからのメッセージは、新必殺技の名前を提示していた。

 「よし、今だ隆聖! あの鈍感シスコンをぶん殴れ!」
 「おぉぉ! とっつげきぃぃ!!」
 スラスター内部に蓄積した限界まで圧縮された大量のエネルギーが一気に開放され、莫大の推力がR-1と隆聖を全方へ押し出す。

 「一撃必殺! 鉄拳制裁!!」
 全距離対応可能と言っても、R-1は接近戦能力と機動性を特化したIS、その加速力はかなりのもの。この一撃に勝負を賭けた隆聖は、自分の必殺の拳に全力を込める。
 「T-LINKナッコォ!!」

 「なんだそれはっ!」
 迫ってくる淡い緑の光を放つ隆聖の拳に、一夏は思わず息を飲み込む。しかし、リーチの差がはっきりしている以上、拳より剣を使う自分の方が有利。そう思った一夏は鋭い横斬りを放った。
 「やらせるか!」

 「……っと見せかけて、おりゃっ!」
 二人が衝突する直前、隆聖は一夏の意表をついた行動を取った。
 雪片弐型が届く直前に、隆盛は体をしゃがんでスライディングして、見事に一夏の攻撃範囲の下に滑り込んで懐に踏み込んだ。
 「なにっ!」
 想定外の事態に、一夏は目を丸くする。

 「これでっ」
 大振りな攻撃動作が仇となり、既に振り出した雪片弐型はすぐに防御に回せないため、今の一夏はまったくの無防備。勝利を確信した隆聖は得意げな笑みを浮かばせて、
 「貰ったぜっ!!」
 一夏の至近距離から拳を放とうとするが……

 「あれっ」
 加速制御がうまく出来かなったか、隆聖はスライディング体勢のまま一夏の横下を過ぎ去って行き、減速もしないで一直線に壁へ突っ込んだ。
 ドカーンっ!!!

 「「「「「……」」」」」
 この一連の事を見た観客達は、全員死んだ目で言葉を失った。

 その後、全力で壁に突っ込んだお調子者に一夏がとどめを刺したことで、男の意地を賭けた熱い対決はこうして不完全燃焼のまま幕を閉じた。


 「ふう……もう食べられない……」
 部屋に入った途端、クリスは自分のベッドに倒れこんだ。さすがに限定メニューだけあって、ボリュームが半端じゃない。降参したクリスに食堂のおばさんは勝ち誇った顔をしていた。
 模擬戦終了と同時に、練習を切り上げたクリス達は学食で食事した後短い反省会を行った。抱腹の鈴とキツイ態度のセシリアにたっぷり苛められた隆聖にフォローを入れて、R-1の分厚いマニュアルを渡した。かなり悔しそうな顔していたから、帰ったらちゃんと読んでくれるのだろう。
 
 シャワー室から水音が聞こえる。反省会の前に先に帰ったシャルルが入っているはずだ。

 (そういえば、ボディーソープが切れてたっけ……)
 なんとか身を起こして、棚から買い置きの新品を出す。シャルルはまだシャワー室内で入浴中だし、脱衣間に置いて声をかければ大丈夫だろう。
 そう思って、クリスは洗面所に入った。しかしそれと同時に、シャワー室のほうからガラガラと引き戸を開ける音がした。

 「うん?」
 「あっ」
 シャワー室の中から現れたのは、身に一糸も纏わぬ少女だった。
 艶かしく濡れている金色の髪、全体的に細いが起伏に富んでいるボディライン、そしてまだ雫が滑っている白い卵肌。
 
 「きゃっ!」
 双方は互いの存在に驚き、十数秒見詰め合った後、少女は自分が裸であることを思い出し、再びシャワー室の引き戸を閉めた。

 「……何だ、このイベントは」
 シャワー室の向こうから、水音が再び聞こえて来た。ボディソープを脱衣棚に置いて、クリスはそう呟きながら洗面所から出て行った。