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IS  バニシングトルーパー 020

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 時間はもう遅い、シャルロットも着替えなければならない。いくら「送迎最速理論」のショーンさんが居るとは言え、そろそろ準備しないとまずい。そう思って、クリスは手摺から離れて室内へと歩き出す。
 しかしクリスは、シャルロットの行動力、そして覚悟を甘く見ていた。

 「待って!!」
 細い腕にから出たものとは信じ難いほどの力で、クリスは体がシャルロットに正面を向かされ、 
 「……っ!」
 胸倉を掴まれ、顔を強引に引き寄せられた次の瞬間に、唇に柔かい感触を感じた。

 淡い月の下、穏やかな波音も消えたかのような静けさの中、二人の影が重なった。ショーンがいることも忘れて、二人は合わせた唇から、互いの心臓の音に耳を傾け、温もりを感じあう。
 ナチュラルな甘い香りがクリスの鼻に入ってくる。ショーンがシャルロットのために選んだ香水の香りだ。
 目を瞑っているシャルロットの顔は必死な表情で真っ赤になっている。多分、初めてだったのだろう。

 三十秒経過。
 唇を合わせるだけのキスだったが、クリスの胸倉を掴んでいるシャルロットの手が一向に緩まない。さすがにこのままだと息がし辛いので、クリスは悪戯半分の気持ちで、シャルロットの唇に舌を差し出した。

 「ぎゃっ!!」
 小さな悲鳴を上げて、シャルロットは顔を離れた。クリスの意地悪そうな笑顔に恨めしい視線を向けた後、彼の服を掴んだまま胸元にじっと見つめて黙り込んだ。

 「ほ、本気だって、言ったでしょ」
 しばらく沈黙の後、照れくさそうに呟いた。

 「……わかった。それなら俺もちゃんとお前のこと、そういう対象として考える」
 シャルロットの言葉から、彼女の真剣さを感じ取った。
 答えがどうあれ、きちんと女の気持ちを受け止めない男は屑以下だというイルムの教えを思い出しつつ、クリスはシャルロットの背中に手を回して、優しく抱き寄せた。
 「帰ったらシャルロットのこと、もっと教えてくれ」

 「うん!!」
 嬉しそうに、シャルロットはいままで一番キラキラ輝いた笑顔を、クリスに見せた。