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　「ぎゃっ！！」
　歯を食いしばって、アクアは腕で防御したが、思ったより鋭い斬撃で腕が痺れた。この一瞬の緩みを狙って、男は全力で畳み掛けてきた。

　「舞朱雀・断！！」
　ドン！！
　男が突進の体勢を取ったのと同時に、リボルバー状になっている拳闘士ISのふくらはぎから、空気が炸裂したような爆音が響いた。
　ざっと見た感じでは、リボルバー式の連続瞬間加速デバイス。アメリカのIS「ファング・クエイク」でもそれと近いコンセプトの装置を持っているが、こっちの方が加速距離が短くて信頼性が高いし、息切れになり難い。
　まさにこの拳闘士ISのために特化した、接近戦の利器である。

　「貴様に見切れるか！！」
　斬りつけて、振り返って、加速する。斬りつけて、振り返って、もう一度加速する。

　「うおおおおっ！！」
　ドン！　ドン！　ドン！　ドン！！
　爆発音が連続に響き、男はまるで分身したかのように、ハイパーセンサーですら追い切れないほどのスピードで絶えない斬撃で次々と切り刻んでくる。それに対してアクアは反撃ところか、四面八方から飛んでくる閃光を見定めることすらままならずに一方的に攻撃され、衝撃を感じるたびに機体のエネルギーシールドが凄まじいスピードで減っていく。

　これは機体の性能差ではない。鍛え上げた戦士の肉体がISという延長線に立ってその真価を発揮した結果。
　まさに、「人機一体」である。

　「いやぁぁぁ！！」
　ついに、男の攻撃がゲシュペンストMK-II改の表面装甲に届いた。鋼の筋肉による猛烈な一撃で、ゲシュペンストMK-II改の装甲は今すぐにでも粉々になってしまいそうだ。
　
　「せいや！」
　とどめを刺そうと、男はアッパーでアクアを打ち上げた後自分も飛び上がる。拳を腹部の横に構えて、右肘のブレードに一撃必殺の威力を宿す。
　これを喰らったら、ゲシュペンストMK-II改が大破するところか、アクアの命すらも危うい。

　「もう、ダメだ……」
　圧倒的だった。自分は相手の動き一つ見切れずにやられてしまった。
　初仕事にしては、よく頑張った方じゃないかな？
　ごめんね、本当はもっと強い子だったのでしょ？　
　満身創痍のゲシュペンストMK-II改に問いかけて、と力尽きたアクアは目を閉じて覚悟を決める。

　しかし絶望の後にやってくるものは、常に希望であった。

　「喰らえ！！　ファイナルビィィィィム！！！！」
　絶望を砕き、希望をもたらすヒーローの声が空に響いたと同時に、眩しい光が輝く。

　「……ふん、やはり来たか」
　高速移動中の自分を正確に狙ったビームの砲撃を間一髪の距離で避けて、男は声が響いた方向へ目を向けた。その声は、僅かに喜んでるように聞こえた。

　「世のため人のため、悪の野望を打ち砕くグルンガスト！　この禍つ星の輝きを恐れぬのなら、かかってこい！！！」

　「だ、れ……？」
　気絶寸前のアクアの目に映ったのは、太陽を背に受けて、雄々しく立った超闘士の姿だった。