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IS  バニシングトルーパー 022-023

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stage-22 超闘士咆哮



「世のため人のため、悪の野望を打ち砕くグルンガスト! この禍つ星の輝きが恐れぬのなら、かかってこい!」
 力溢れる声が戦場に響き渡り、超闘士の巨影が雄々しく舞い降りる。

 「超闘士グルンガスト、見参!!!」
 星型のバイザーに顔の大半を覆われて、口元に自信たっぷりの笑みを覗かせる青い長髪の青年が、両手を拳にして拳闘士ISに向かって雄叫んだ。
 「……なんてな」

 顔の半分だけを露出させる星の意匠を取り込んだバイザー、胸元の星型エンプレム、両肩の大型タービン、そして青地に黄色のラインが走る重装甲。ゼンガーが使用しているグルンガスト参式によく似ているそのISは、グルンガストシリーズの壱番機にしてイルムの相棒、超闘士の異名を持つIS・グルンガスト壱式だった。
 そして相棒を身に纏ったイルムは今、ゲシュペンストMK-II改を倒した拳闘士ISに立ち向かう。

 「ふん、まさかIS操縦者だったとはな」
 拳闘士ISの男、アクセル・アルマーは拳を握り締めてグルンガストと対峙する。
 ゲシュペンストMK-II改は既にトドメを刺さずともパイロット共々抵抗できる状態ではない。後は連れ去ればミッション・コンプリート。この後一歩ってタイミングで、新たなイレギュラーが現れた。
 だがアクセルはある程度予測していた。訓練された複数の兵士を簡単にあしらう腕前、戦い慣れした身ごなし。あれ程の男がこの近くに現れたのはただ観光目的のはずがない。

 直接ISを使ってくるとは少々意外だが、問題はない。
 「まぁいい。貴様のコアも貰って行く」
 腰を低くして、アクセルは加速体勢を取った。彼が纏っている蒼き拳闘士から、再び殺気が放たれる。
 アークゲイン、それがアクセル今使っているISの名称である。W10と呼ばれる機体のデータをIS仕様に再設計して、メキボスから得たコアの一つを使って完成したIS。一切の銃器も持たずに、ただ連続瞬間加速装置とアクセルが得意とする格闘術で戦うという、アクセルの専用機である。

 「悪いがお断りだ。こっちは仕事でね、相棒が奪われたら減給ところじゃ済まないんだよ」
 それに応じるように、イルムも拳を構えてアクセルと睨み合う。
 アクアは今地面に倒れて意識を失っているが、生命反応は安定している。ゲシュペンストMK-II改のコアが彼女を守ったのだろう。
 強奪作戦は時間が肝心だが、アクセルたちが作戦開始してから既にかなり経っている。ならばタイムリミットの時間稼ぎをすれば、勝ちだ。
 だがそんな甘い考えで戦ったら、直ぐにやられる。
 アクセルから漂っている、目に見えるほどの殺気はイルムにそう思わせた。

 これまで幾つもの修羅場をくぐって来たが、ここまで凄まじい殺気を感じたのは初めてだ。だが、自分も戦士としての自負がある。命のやり取りをする戦場で出会った以上、引くわけには行かない。
 背部の長いウィング状スタビライザーを跳ね上げて、スラスターを点火させる。
 「……来い、目にものをみせてやる!!」
 後部から生じた真っ直ぐに前への推力で、グルンガストはアークゲインへ突進した。そしてそれを合図に、口元をわずかに吊り上げたアクセルはアークゲインのリボルバー式加速装置に取り込んだエネルギーを爆発させる。
 「ふんっ、やはりそうこなくてはな!!」

 「うおぉぉぉお!」
 「はぁぁっ!!」
 ドォォォン!!
 男と男の拳がぶつかり合い、空気が衝突で爆裂する音が山間に響き渡ったのと同時に、両者の拳圧が引き起こした烈風が周囲の岩や樹を吹き飛ばす。

 「何っ! グルンガストと互角?!」
 「アークゲインの動きを目で捉えたとは、大したもんだ!」
 グルンガストとアークゲイン、いずれも格闘戦に特化したISだが、両者の差異と言えば、グルンガスト壱式が一撃必殺のパワーを重視しているのに対して、アークゲインはその連続瞬間加速デバイスによって実現されたハイスピードを誇っている。
 だが、本来ならグルンガストの方が勝っている筈のパワーを、アークゲインはそれと互角する程の力で対抗してみせた。
 操縦者である、アクセルの身体能力によって。

 「くっ、舐めるな!!」
 重装甲を纏ったグルンガストの足で、イルムはアークゲインの横っ腹に蹴りを放ちながら、そう吼えた。
 しかし、耳に空気の爆発音が届いたの同時に、アークゲインの姿は目の前から消えた。
 「なにっ!」

 「背後ががら空きだぞ!」
 「くぁっ!!!」
 突然、背後からアクセルの声が聞こえたと同時に、矢じりのような尖鋭な衝撃がイルムの体を突き抜けた。
 アクセルの拳からイルムの全身へ伝わた鋭い衝撃は内臓まで響き、脊髄骨が折れてしまいそうだ。だが、それでも痛感に気を取られるわけには行かない。
 次が来る前に対応しなければ。

 「こっちか!」
 腕部でアクセルの肘にある実体ブレード“スザクブレード”を受け止める。さっきは背後に居たはずなのに、今度の攻撃は左上方から来た。
 「またアークゲインの動きを見切ったか! やはり只者じゃないな!」
 「そりゃどうも!」
 「だが、見切っただけではどうにもならんぞ!」
 「どうかな!」
 一瞬止まったアークゲインを、イルムは既に両手でしっかりとその肩を掴んだ。

 「なっ!」
 「ぶっ飛べぇっ! ブーストナックル!!」
 アークゲインを掴んだまま、両腕の装甲内部に内蔵されているブーストを噴火させる。下方に向かって射出されたグルンガストの両腕に押さえられたまま、アクセルは地面に叩きつけられた。

 「もう一丁!!」
 地面と衝撃したアクセルを追って、イルムは彼の腹部に重い蹴りを落す。
 慣性制御を命中寸前に切った、グルンガストの重量と推進力を乗せた一撃であった。莫大の運動エネルギーがアクセルに直撃して、彼に下敷きされている地面が深く陥れた。
 「くはっ!!」
 その一撃を喰らった痛みで視界が酷く揺れて、アクセルはさっきまで飲んだ酒まで全部吐き出してしまいそうだ。
 そして、イルムは攻撃の勢いを止めない。
 「まだ終わっちゃいないんだよ!!」
 胸部の星型エンプレムのパネル状パーツが展開して、前方へ突き立ててビーム砲の砲身を形成させて、エネルギーを集束させる。
 「喰らえ! 必殺のファイナルビームだ!!」
 集束式荷電粒子砲だ。この距離の直撃なら、アークゲインと言えとも深手は免れん。目の前で光り始めた砲口を見て、アクセルはその危険さを一瞬で理解した。

 「撃たせるか……」
 歯を食いしばって、アクセルは両手を掌にして合わせてグルンガストへ突き出す。
 「退け!! 白虎咬!!」
 「なっ!!」
 まるで見えない爆風に吹き飛ばされたように、ファイナルビームの激流が迸り出される前にイルムは既にグルンガストと共に空へ打ち上げられた。
 丹田に溜め込んだ「気」を両手で撃ち出して爆発させるという、人間離れした技をアクセルは使った。非常識的ではあったが、今はそれを追及するだけ無駄である。

 「ちっ、一瞬の油断で随分とやってくれたな」
 クラクラとしている頭を軽く揺らして、アクセルは身を地面から起き上がった。