二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシングトルーパー 022-023

INDEX|2ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

 「そのままくたばっちまえば、なお良しだがな」
 ブーストナックルを呼び戻して、イルムも体勢を立て直してアクセルと再び対峙する。

 「ほざけ。腑抜けにしてはよく出来た方だが、無数の戦場を潜り抜けて来た俺に勝てるなどと思うな!」
 「随分と舐めたことを言ってくれるぜ」
 「ふん、けど事実だな、これが!!」
 「なら、その根拠もない自信を砕くまでだ!!」

 両者は同時に突進して、再び己の拳を振り出す。だがの両方は相手の拳ではなく、胴体を狙った。
 ドォッ!!!
 「うわっ!!」
 「くっ!!」
 互いの体に炸裂したパンチが鈍音を響かせてもまったく気にすることなく、双方は一歩引いた後もう一度突進して、拳骨を振り出す。
 パワーファイター達のぶつかり合いに巻き込まれて、周囲の岩、土は吹き飛んで行き、風圧に当てられた樹はざわざわと葉を揺らして次々と倒れていく。

 「驚きだな、アークゲインのスピードについてこられるとは!」
 「グルンガストのパワーに対抗できる貴様の方が化け物だと思うがね!!」
 周囲の光景など気にする暇はない。互いのタフさに驚きを覚えつつも、ひたすら殴り合う。

 「だが! 貴様は所詮ぬるま湯に浸ってきた腑抜け! 信念も理想もないまま盲目に戦うやつが、俺に勝てると思うな!」
 「なにっ?!っくあぁぁあ!!」
 アクセルの言葉で一瞬だけ気を逸らされ、アークゲインの重いパンチを両腕食い止めたイルムは地面を潰しながら数メートル後ずさんで何とか踏み止まった。しかし痺れで震えている両腕を休ます時間もなく、アクセルは既にこの一瞬で自分の闘気を最高峰まで高めた。
 ジェネレータの最大出力を搾り出して、重心を低くしてスザクブレードを前に構えて、アクセルは地面を蹴ったのと同時に吼える。
 「アークゲイン! ブルドライブ!! 麒麟・朧!!」

 「しまっ!!」
 避ける余裕はない。アークゲインの突進から逃げられないイルムは、踏ん張って防御する以外の選択が残されていない。

 「うおぉぉぉぉぉ!!」
 高速で交互してグルンガストに降り注ぐアークゲインの連続パンチと膝キックはもはや視認できない。閃光のような打撃が連綿と続いていく中、アクセルは咆哮する。
 「貴様は俺を悪と称したが、俺からすれば貴様のような、ちっぽけな正義感に捕らわれて、意味もなく平和などという腐敗の温床を守ろうとする連中こそ悪だ!!」
 「なにっ!!」

 「汚い貪欲な連中達が維持している平和からは何も生まれん! 人々の心を堕落させ、世界を腐敗させて行くだけだ!! 常に危機に、闘争に晒されていなければ、人という生物はいつまで経っても前へ進もうとしない!! これがな!!」
 「くわぁぁぁぁぁああ!!」
 アークゲインの必殺技でグルンガストのエネルギーシールドが遂に完全消滅した。高い防御能力を誇るグルンガストの表面装甲に、拳型の凹みが増えていく。
 このまま行くと、グルンガストは確実に破壊される。

 「貴様とって、もっと戦いたいからISを纏ったのではないのか! もっと強くなりたいから力を手にしたのではないのか!! 男である貴様が!!」
 「……違う!!」
 防御体勢を強いられて息を吸うこともままならないイルムは、辛うじて否定の言葉を口にする。

 アークゲインの攻撃による衝撃は、イルムの体にもダメージを与えている。
 両腕の感覚は既に麻痺している。肺部も呼吸するたびにひりひりと痛み、視界も赤く染まっている。
 だが、イルムは納得できない。何が何でもこの男の言葉を納得できない。
 心の奥底から湧き上がってくる怒りが痛感を凌駕して、引火したガソリンのように一気に燃え上がる。

 「頭ごなしの否定など要らん! 我らの本懐が遂げられ、世界が戦火に包まれる日が来れば、貴様も認めるしかない! 闘争の中でこそ自分が生き生きしていることをな!! でぃぃぃやっ!!」
 「うわぁぁっ!!」 
 強力な気を篭った掌撃で、イルムは上空へ打ち上げられた。そして、同時にアクセルはスザクブレードをさらに展開させ、突進の体勢を取って最後の一撃のために力を溜める。
 ドォン!!!
 連続瞬間加速デバイスから響く爆裂音と共に、スザクブレードを構えたアクセルは蒼き雷光となって飛び上がり、大破寸前のグルンガストへ猛進する。

 「この一撃で……極める!!」
 スザクブレードから生じる風圧は樹を、空気を、そして大地を切り裂く。この電光石火の一撃を喰らって生き残れるものはいない。己の勝利を疑わずに、アクセルは腕を下から上へ振り上げる。
 「おれの、勝ちだ!!」
 これで、ミッション・コンプリート。そこそこ腕が立つやつだったが、所詮は甘い男だった。

 だが、アクセルは知らなかった。
 「……違うな」
 超闘士グルンガストの根性、そしてイルムという男の意地は、彼の予想を遥かに上回っていることを。
 「何っ!」

 黄金の剣だった。
 眩しい程の輝きを放つ黄金の剣を、イルムのグルンガストが握っていた。
 アクセルが自分の勝利を収めた筈の一撃は、この黄金の剣によって受け止められた。
 「違うと……言っている!!」
 「くわぁぁっ!!」
 左拳を握り締めて、全力でアクセルに殴りつける。ボロボロな装甲を纏う腕はやはり何も感じないが、構うものか。
 今は、目の前にいるこの戦争マニアをぶん殴らないと、気が済まない。

 「貴様は何もわかっちゃいない……ただのテロリストだ!!」
 「何だと?!」
 ガキィィィイン!!
 右手に握っている剣をアクセルへ真っ直ぐに突き出す。それに対して、アクセルはスザクブレードで捌く。衝突する金属の削り合いで、鋭い音が響く。

 「戦いは悲しみを生み、憎しみを生む!! それくらいもわからないのか!!!」
 「だが戦争に生きる者なら、それを受け入れるのが宿命! できない甘ったれは、前へ進めずに死ぬだけだ!!」
 「ふざけるな! 戦うことしか考えない貴様は、人間の気持ちまで忘れたか!」
 両手で剣を握って、全身の力でアクセルを抑え込むイルムは、己の怒りをぶつける。

 「貴様は爆発に巻き込まれて下半身が全部吹き飛ばされて、地面に這う女の子と目が合ったことがあるのか! 子供を銃弾から守って死ぬ寸前の母親から赤ん坊を託されたことがあるのか!!」
 とっくに手を汚した自分の人生履歴は、決して綺麗なものじゃない。かつて居た戦場でも、今の職場でも。体に染み込んだ血の匂いも、いくら洗っても消えない。任務で体験した恐怖、悲傷そして痛感は、永遠にイルムに付き纏う。

 「所詮それは避けられない必然! 人類の歴史が血塗られているのが何よりの証拠だ!」 
 思い出しただけで歯を噛み締めるような痛みを吐き出すイルムを、アクセルはあくまで上から見下ろすかのような観点で考える。
 だからこそ、イルムは目の前にいるこの、醜い戦争を理想のように語る男を許せない。

 「ふざけるな! うちのリンはな! そういう仕事の後は必ず一晩中落ち込むんだよ! 飯も食わずにな!!」
 ――すまん、迷惑をかける。
 そう言いながら、頭をイルムの肩に乗せるリンの横顔は、とても痛々しく見えてた。