二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシングトルーパー 025

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 

stage-25 ある意味、覚醒?






 「すぅ……はぁ……アームリンク、開始」
 一回深呼吸して、クリスはエクスバインの装甲に覆われてる自分の両手をAMボクサーの外腕部グリップへ伸ばす。ボクサー外腕部の拳の指を順次に動かして、同調率を確認する。
 エクスバインボクサー、コンディション・オールグリーン。
 機体の状態は万全だ。体は……背中がちょっと痛いけど、戦闘に支障をきたすほどの問題ではない。
 隣でブルー・ティアーズを展開しているセシリアはスターライトMK-IIIを握って、地面から少し浮いた高度で待機している。
 グラウンドの中は四人しかないが、観客席はそこそこに埋まった。一夏たちも観戦するために、前の席に座っている。特に隆盛はテンションが高くて、携帯カメラで写真を撮りまくってる。

 視線を前へ向けて、百メートル程先に立っている今日の模擬戦相手の様子を眺める。
 向こうで、シャルロットはエクセレンと何か話しているようだ。多分、作戦とかを相談してるんだろう。あのゲシュペンストMK-IIIのピーキーさを考えると、無理してないか心配だ。
 一瞬自分と目が合ったシャルロットは物言いたげに口を開きかけたものの、直ぐ目を逸らした。

 「はぁ……」
 ちょっと鬱な気分になったクリスは深いため息をついた。
 シャルロットを移籍させるって話を聞いた時、阻止したいのが最初の感想だった。
 彼女を側に置きたい気持ちはあるが、まずレオナとのケリをつけないと逆にシャルロットを傷付けるだけだと思ってた。
 「やっぱ、今のままの方が酷いよね……」
 近すぎずに側に置いた方が、シャルロットにとってよっほど酷いらしい。
 イルムさんに知られたら、叱れそうだ。この未熟者め、と。
 さっさと何とかしよう。
 そのためには、先ずこの模擬戦で勝たねば。

 ゲシュペンストMK-IIIとMK-IVの機体は元々連携して闘うように開発されたもので相性は言うまでもないが、あの二人は数時間しか練習してないはずだから、完璧とまでは無理だろう。
 とは言え、クリスもセシリアとの連携をあまり練習してない。こういう場合なら一対一の状況になりやすい。まだ実力が未知数のエクセレンはマリオン博士の眼鏡に適った人物だから当然かなり強い筈だがら、セシリアが互角にやれるかちょっと不安。

 「セシリア」
 考慮の後、クリスはセシリアに声をかけた。
 「はい、何ですの? 」
 待機中のセシリアは直ぐに返事をした。
 「今日の模擬戦、タイマンの時はビットを使うな。攻撃も無理に当てる必要はない。ゲシュペンストMK-IVに牽制をかけて、掩護射撃できないようにすればいい。その間に俺がシャルルを落せば、後は二対一になる」
 「クリスさんは随分とあのエクセレンって方のことを高く買ってますね。私の実力を信じてくれませんの?」
 「まさか。信じてないなら最初からお前を呼んでないよ。ただもし先にお前が落とされたら、流石に一対二はキツイ」
 アドバイスのつもりで言っただけだが、それを聞いたセシリアは頬を膨らんだ。
 「ムッ、やっぱり私のことを信じてないじゃありませんか。最近もあまり構ってくれませんし、酷いですよクリスさん」
 言われてみれば、そうかもしれない。この間は真耶に落とされてちょっと落ち込んでるみたいだし、ここは一つモチベーションアップを図ってみよう。

 「なら、今回は賞品を設けよう」
 「賞品、ですの?」
 「ああ。もしお前が模擬戦終了まで落とされなかったら、一回だけ言うことをなんでも聞いてやる」
 「そ、それは本当ですの?!」
 案の定、セシリアは喰い付いて来た。

 「本当にその、何でも……聞いてくれますか?」
 「ああ、常識の範囲なら。でももし落とされたら、セシリアには俺の言うことを一つ聞いて貰うよ」
 「えぇぇぇええ?!」
 意外そうに驚いたセシリアは口を押さえて、目を丸くした。そんなセシリアに、クリスは意地悪そうな笑みを見せた。

 「何かを得る時には、常にリスクが伴うんだよ、セシリア君」
 「そそそそんな、じゃクリスさんは私に何を言うつもりですか? まさか、またあの服を……?!」
 「同じ服を二回も着せるわけないだろう」
 「ど、どういう意味ですの?!」

 一方、楽しげに話しているクリスとセシリアを眺めているシャルロットは、寂しそうな目をしていた。
 「クリス君とあのセシリアって子、随分と仲良しなのね」
 シャルロットの隣に立っているエクセレンは彼女の視線先にいる二人を眺めて、そう呟いた。
 「……そうですね」
 「嫉妬してる?」
 「えっ!? い、いや違いますよ。大体僕は男ですから、クリスと……」 
 「あらら、誰もそっちの意味で言ってないけど?」
 「……あっ」
 自分の失言に気付いて、シャルロットは口篭った。こっそりエクセレンの方を見てみると、ニヤニヤしていた。
 確信犯の笑顔だった。
 
 「あの、エクセレンさんはもしかして……」
 「そう、とっくに気付いたの。だってシャルルちゃん、クリス君を見る目は完全に恋する乙女だもの」
 「うぐぅ……」
 エクセレンに指摘され、透ける様に白い頬を真っ赤に染めたシャルロットはそれを隠すように顔を逸らした。

 「昨日のあれは私の方から彼をからかっただけだって説明したでしょ? そろそろ許してあげないと」
 「それは……わかってますけど」
 「あっ、もしかして振り向いて貰えなくて悩んでる? 大丈夫よ。愛があればいつかはきっと、ねぇ?」
 「……ちょっと違います」
 昨日のことはただのきっかけで、本当は別のことで悩んでた。
 最近のクリスの動揺っぷりを見れば、彼は今でも別にレオナのことが嫌いじゃないことくらい分かる。
 でなければシャルロットに抱き付いてくるはずがなかった。
 そしてレオナもいつもクリスのことを見ている。二人は素っ気無い態度を取っているけど、確かに互いに惹き合っている。
 そんな二人の中に、入れる自信がない。
 
 あの時は半分受け入れたようなことを言ってくれたけど、本当は一体どう思ってるんだろう。
 父のところに戻らなくてもいいと言われても、今のシャルロットは人との繋がりが脆い。クリスに突き放されたら、どこへ行けばいいんだろう。
 いや、彼がそんなことをするとは考えにくい。しかし、ちゃんと振り向いて貰えないなら、側にいることにどれ程の意味を持っているのだろう。
 分からないから、不安だ。

 「そろそろ始まるよ。シャルルちゃん、準備はいい?」
 「はい、いつでも行けます」
 エクセレンの呼びかけでシャルロットは気を取り直して、目の前の模擬戦に集中する。
 今シャルロットは自分が纏っているこのゲシュペンストMK-III「アルトアイゼン・ナハト」を完全に使いこなしているとは言えない。少しでも手綱を緩めたら、直ぐに振り回されそうだ。
 リボルビング・ブレイカーを取り付けた右腕を少し上げて、その重さを感じる。
 元々肩部にある大型コンテナのお蔭で機体重心が高くなっているゲシュペンストMK-IIIは、この武器のせいで機体バランスがやや右寄りになっている。操縦性が悪化しているのもそれが原因だろう。