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IS  バニシングトルーパー 028-029

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 今日が遅れたのもレオナがシャルロットに男子達と一緒に着替えることを禁止して、わざと時間帯をずらしたのが原因。

 「……別に」
 「そんな顔で別にとか言われてもな。黙ってて悪かったって。今度何か奢るからさ」
 「子供相手みたいな扱いは止して」
 クリスの軽い態度が勘に触ったのか、レオナはクリスをジロリと一目睨んだ後背を向けた。

 「やれやれ……」
 レオナの背中を見て軽くため息をついて、クリスはシャルロットに向き合って話しかけた。

 「調子はどうだ?」
 「うん、万端だよ。それよりその……ごめんね」
 目を動かして、シャルロットはレオナの方を一瞥する。
 怒られるかと思ったら、結局レオナは不満をクリスの方に向けてきたらしい。シャルロットとしては自分の勝手でクリスとレオナの仲を悪化させたようで、負い目を感じている。

 「シャルルが気にすることじゃないよ。あいつがひねくれてるだけだから」
 「何ですって?」
 クリスの言葉に反応したレオナは顔の側面を見せて睨んできた。

 「シャルルはお前を友達だと思って教えたんだぞ。あまり困らせるなよ」
 「誰もシャルルに非があるとは言ってないわよ。私はただ……」

 ビ―――!!
 レオナの声を遮ったのは、待機室に響き渡った電子音だった。同時にメインモニターの画面は、観客席の風景からシステム画面に切り替えられた。

 これは対戦スケジュールが発表される合図だった。それを分っている生徒達は一斉に雑談をやめ、メインモニターを見上げる。

 <Aブロック一回戦、クリストフ・クレマン&篠ノ之箒 VS レオナ・ガーシュタイン&シャルル・デュノア>
 モニターには、そう表示していた。
 そしてさらによく見ると、隆聖&一夏ペアとラウラのペアとの対決も今日中になりそうだ。

 「……いきなりかよ」
 まさか一回戦で出会うとは。情報を集めるチャンスもないまま対戦することになった。

 「丁度いいわ。来なさい、初戦敗北にしてあげる」
 レオナは凄い目でクリスを睨みつけ、そう言い捨てて歩き出した。

 「もう、さっきのはクリスが悪いよ?」
 「なんでだよ。そもそもあいつにとやかく言われる筋合いはないし」
 「そういう風に言ったらレオナが可哀相だよ。クリスだって分っているでしょう?」
 「……」
 レオナが機嫌悪そうにしている理由、クリスもなんとなくわかっている。
 今の自分にはシャルロットが居るから過度に反応したくないのに、逆に無意識に不自然な態度を取ってしまったようだ。

 「あとでちゃんとレオナに謝ってよ」
 「……わかったよ」
 さっきのは確かに失言だった。試合が終わったら謝っておこう。

 「それでいいよ。先にグラウンドに行くから、クリスも早く来てよ?」
 「ああ、直ぐに行く」
 手を振ってレオナの後を追ったシャルロットを見送って、クリスは横にいる箒に向き直した。

 「変なところを見せてしまってすまなかっあな。準備はいいか?」
 「ああ、問題ない。それよりその……大丈夫なのか? 何があったかは知らないが、私で良ければ力になるぞ?」
 蚊帳の外気味だった箒も、クリスとレオナとの間に不自然を感じて彼を心配した。

 「……ありがとう。でも大丈夫だよ、試合が終わったら何とかするから」
 「そうか。クリスがそう言うなら信じるよ。そろそろグラウンドに行こう」
 「初戦であのペアを倒せば、後は楽だ。優勝を取りに行くぞ!」
 「ああ!!」
 見送ってくれる隆聖と一夏に手を振って、クリスは気張る箒と共にグラウンドに向かった。


 一方、アリーナのモニターに第一回対戦の選手名が表示された時、観客席は騒ぎ立て始めた。
 IS技術の先端に立つハースタル機関の専属テストパイロット、IS発明者である篠ノ之束博士の妹、世界規模企業デュノア社の御曹司、そしてドイツ軍事名門出身で天才と言われてきたエースパイロット。誰一人とってただの一般生徒ではない。
 この試合は、かなりの激戦と予想される。

 「クリスさん、そんなに有名でしたのね。さすがですわ」
 「何言ってんの。アンタも国家代表候補だからそこそこ有名でしょうに」
 周囲からのさわめきが耳に入り、同じ出場が禁止された鈴と一緒に観客席に座って見学しているセシリアは嬉しそうに笑ったが、鈴はそんな彼女に呆れたように軽いため息をついた。
 「あ~あ。あたしも出場できたらな……」
 「それを言わないでくださいまし……わたくしもクリスと一緒に出場したかったですのに、残念極まりないですわ」
 せっかく考えないようにしていたのに、ローテンションの鈴につられてセシリアも思わず小さなため息をもらしてしまった。


 「あらら、第一回戦からこんな試合が見れるなんて、ラッキーね」
 セシリア達から少し離れた位置に、ウェーブのかかった赤い長髪をしている知性的な女性が双眼鏡を覗きながら、楽しげに口元に妖艶な笑みを浮かべた。

 「メキボスに深手を負わせたのは、あのガキかい?」
 彼女の隣に座っている、首もと辺りで切り揃えた短い青髪をしている女性は、苛立っているような表情で眉を顰めて質問した。
 赤髪の女性の知性的な雰囲気と対照的に、青髪の女性から漂っているのは傲慢的なオーラだった。グラウンドに立っている四人を見下ろして、彼女の表情は険しくなる。

 「ちょっとちょっと、今日は見物して来ただけだってば。騒ぎを起こすのはなしよ?」
 「分っているさ。あたいはメキボスのような間抜けじゃない」
 「ならいいけどね……じゃ、お手並み拝見と行きましょう。凶鳥の眷属に狼さんそっくりなカスタム機、面白そうじゃない」
 「ガキ共の運動会見学とは、ぬるい星に来たものだ」
 「そんな言わないでよ。次の行動まで色々と準備があるからさ、VR-02の仕上げもまだだし」
 「チッ。ハァ……」
 試合を楽しみにしているように見えた赤髪の女性と違い、青髪の女性は不満そうな顔のままに、大きなため息をついて視線をグラウンドの中に移った。


 グラウンドの中、二つのペアは既に対峙して試合開始の合図を待っていた。
 片方は防御力を重視した量産型IS「打鉄」を纏ってブレードを下ろしている箒と、接近戦用パッケージ「AMボクサー」を外したノーマル状態の「エクスバイン」を展開して、フォトンライフルSとグラビトンライフルを同時に握っているクリス。
 これは相手ペアの高い機動性について行くために、ノーマル状態のバックパックを装着した方がいいという、クリスなりの判断だった。

 もう片方は黒と青のツートンカラーをしている高機動IS「ズィーガー」で地面から少し浮いているレオナと、オレンジ色の「ラファール・リヴァイヴ」をマリオン先生によって大幅に改造、略してマ改造されたカスタム機「ラファール・リヴァイヴ・カスタムSP」を装着したシャルロットだった。

 「何かイメージしたのよりすっきりしているな……」
 ラファール・リヴァイヴ・カスタムSPを見たクリスは、素直な感想を口から漏らした。