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IS  バニシングトルーパー 040

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stage-40 Dancing Blue 中編



 「早く来て!」
 「きゃああ! もう~急に水をかけないでよ!」
 風によって運ばれ来た潮の匂いが鼻をくすぐり、IS学園の女子生徒たちがキャキャっと波打ち際で戯れ、暑い七月の日差しが容赦なく乙女の柔肌を焼き付ける。
 そんな賑やかな風景からやや離れた一軒の海の家で、三人の少年がカウンター席に並んで座り、無言にロングヘアを揺らしながら調理をしている青年の背中を眺めていた。
 男四人以外は、隅の方に婆ちゃんが一人だけ、静かに座って海を眺めながらお茶を啜っていた。
 店の中は掃除が届いていて、かなり綺麗だ。テーブルや椅子なども古いには古いが、汚れの一つも見せない。古い扇風機の回転音が店内に響き、この熱い空気の中で心地よい風を送ってくる。
 しばらくした後青年は火を止め、慣れた手付きで料理を三つの皿に盛り付けて少年たちの前に並べた。
 食欲をそそる美味しそうな香りをしている、野菜焼きそばだった。

 「さあ、食べてみろ」
 「「「いただきます」」」
 割り箸を割って、既に腹ペコ状態だった少年たちは素早く焼きそばを口に運ぶ。すると、称賛の声がすぐに上がってきた。

 「うまい! 美味いよ!! イルムさん!!」
 「本当だ……素材の質はいまいちなのにこんなにも美味しい!」
 「イルムさんの料理って何年ぶりだっけ……相変わらず凄いな」
 「あははは! これでも家では料理担当だからな!!」

 熱々の野菜焼きそばを咀嚼して飲み込み、三人の少年――クリス、一夏そして隆聖はこの美味しい焼きそばを作った料理人であるイルムへ憧れの視線を送りながら箸の動きを早め、エプロン姿のイルムは誇らしげに両手を腰に当てて高笑する。
 完全合理主義の恋人のために、いつも栄養を考えて彼女の口に合う料理をする。そしてツンデレの彼女も時間が勿体ないだとと文句をこぼしつつ残さず全部食べ切てくれる。
 愛をこめて料理をこなしていくうちに、それなりの料理腕前をイルムは身につけてしまった。

 「でも、結局イルムさんは何をしに来たのですか?」
 焼きそばを口へ運ぶ手の動きを止め、クリスは砂浜ではしゃいでいる女子達を一瞥して、イルムの顔を見て問いかけた。
 この店の主は隅の方に座っている婆ちゃんなのに、いきなりイルムはまるで自分の店みたいにキッチンに立っている理由が分からん。

 「HAHAHA! 有給休暇だよ。俺は」
 自前のエプロンを畳んで料理台に置き、イルムは冷蔵庫から缶ビール一本の取り出して、蓋を開けて喉に流し込む。
 そして気分良さそうに深呼吸して、砂浜で戯れている少女を眺めながら、笑顔で言葉を再開した。

 「せっかくだし、日本に来てみたのだよ。そして偶然にもこの近くでそこの婆ちゃんと出会ったんだ。一人でお店は辛いだろうから、手伝うことにしたのさ」  
 「嘘つけっ。ナンパのためだろう絶対。こっちの予定に合わせて」
 「何を言う!! 年寄りを労わろうという気持ちを疑うのか!!」
 「じゃマオさんに教えても問題ないですよね?」
 「そ、それは……」
 クリスにリンの名前を出されると、イルムはすぐに狼狽した顔で言葉を濁した。
 本当は手伝いをクリスたちに押し付けて、ピチピチの女子高校生たちと楽しくキャッキャウフフやるつもりだが、さすがに付き合い長いだけあって、一発で読まれた。
 しかしまだだ。まだ終わらんよ!

 丁度このタイミングで、店の入り口に水着姿の少女が数名現れた。
 焼くそばに舌鼓をうっている少年三人を発見すると、すぐに非難を声を上げて店内に入ってくる。

 「一夏!! 何故待ち合わせの場所で待ってくれなかった!!」
 デフォルトの不機嫌顔で一夏の横に立ち、腕を組んで彼の睨みつける篠ノ之箒。
 鍛えられたお尻と引締ったくびれ、そしてボリューム感満点な胸によって形成された魅力的なボディラインは、そのシンプルなデザインをしているビキニタイプの白い水着によってさらに強調されている。

 「なに? やきそば食べてんの? アタシにも一口頂戴~!」
 一夏の隣席に腰を下ろして、新しい割り箸を割って皿からやきそばを強奪する凰鈴音。
 いかにもその活発な性格をしている彼女に似合いそうな、動きやすそうで可愛らしい水着だった。まだまだ発育途上の体だが、かすかな張りを見せるお尻、手のひらに収まるほどの胸の膨らみには、女らしさの萌芽が伺える……ような気がした。
 まあ、彼女のステータスの一部だよ。需要があるんだよ。きっと。あとイルムさん。さりげなく彼女の前に牛乳を置くのをやめろ。殺されるぞ。

 「クリス!! 私をほったらかして何やってたのよ!!」
 小さな手をクリスの肩に乗せ、不満げに頬を膨らませるシャルロット・デュノア。
 相変わらずのベストバランスなスタイルだった。程よい胸の膨らみに、きゅっとくびれた腰そして可愛い肉付きをしているヒップ。日本に戻って新しく購入した、オレンジ色の可愛いビキニに身を包み、彼女は自分の魅力を出し惜しみせずに発揮する。

 「クリスさん? わたくしの水着姿に期待してくれるというのは嘘でしたの?!」
 ビーチバレーボールを抱えて、眉を三角形に吊り上げてクリスを責めるセシリア・オルコット。
 強くて明るいブルー色のビキニに覆い隠されていながらも、そのたわわに実った乳房の豊かな量感と生クリームのような柔らかさはしっかりと視覚的なイメージとして伝わってくる。加えてその折れそうなほどの細い腰に巻きつけた長いパレオが、彼女と清楚なイメージを引き立て、より官能的な演出を見せてくれる。

 「貴様、夫である私を差し置いて一人でお食事だと!? けしからんぞ」
 そして最後に声を上げたのは、静かに隆聖の膝の上まで登り、堂々と座ったラウラだった。
 彼女が選んだ水着は布の面積のかなり少ない、紫のかかった黒ビキニタイプだった。いつものロングヘアからツインテールに結い上げ、ミルクのような真っ白な柔肌がその水着に引き立てられ、いつもよりさらに綺麗に見える。
 えっ? スタイル描写? 華奢なスレンダーボディだ。以上。

 五名の美少女の出現により、店内が一気に賑やかになった。満面の笑顔でイルムは冷蔵庫からジュースを取り出してテーブル席についた少女たちへ振る舞い、少年三名は箸の動きを速めていく。

 「しかしお前ら周りの女の子ってレベル高いな。どれも超可愛い子じゃねえか」
 肘をカウンターにつきながら、顔がにやけたイルムは目を伏せてやきそばと格闘しているクリスに小さな声でそんな話題を振った。

 「イルムさん……歳を考えてくださいよ」
 「バカ言え。8歳から50歳までが俺の守備範囲だよ。大体二股をかけてるお前には言われたくないぜ」
 「かけてませんよ!」
 一応心境的では、かけてないはずだ。

 「ああ、そうだ。せっかくだから、彼女たちに店の手伝いをしてもらおうぜ」
 「困らせないであげてくださいよ。午後は遊びたいでしょうし」
 焼きそばを平らげて口元を拭き、クリスはお冷のコップを持ち上げた。
 一夏達のことは知らんが、午後は一緒に色々と遊びたいし、シャルと二人きりになりたいし。