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IS  バニシングトルーパー 044

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 昨日に泊まった旅館部屋の天井だった。
 眼球を動かして周囲を確認すると、部屋の隅から近づいて来る老人の姿があった。

 「Dr.トキオカ……何でジジイなんだよ。目覚めたら普通は美少女だろう……」
 思わず大きなため息を付いてしまい、銀髪少年――クリスは老人の皺だらけの顔から目を逸らした。
 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。
 状況は一刻を争っているのだ。
 左手に刺している点滴の針を抜き、クリスは額の汗を拭きながら上半身を起こした。

 「……すぐに出る。例のやつをくれ」
 「かっかっか。そう言うと思ったわい。ほれ」
 Dr.トキオカが投げ飛ばしてきた小さなものを空中でキャッチし、クリスは手早くその包装を破って中にあるものを取り出し、自分の左上腕に押し当てた。
 鎮痛剤の入った注射器だった。
 押子を指で押してシリンジの中にある無色な液体を体の中に流し込み、すぐに全身の痛みが引いていくのを感じた。

 「機体の用意は出来てるか?」
 押子を限界まで押し込んだ注射器をゴミ箱に捨て、クリスは体に巻かれている包帯を外してISスーツに着替えながら、Dr.トキオカに問いかけた。
 首にぶら下げていたエクスバインと、義手の中に仕込まれていたビルトシュバインはすでに回収されている。

 「ああ。外でお主を待っておるわい」
 「そう。なら急ぐぞ」
 簡潔に会話を終え、クリスは部屋を後にして廊下を歩き、Dr.トキオカは慌ててその後を追った。
 体が微かにふらついているのは、自分でも分かる。
 鎮痛剤は自分の痛覚を麻痺させただけで、決してダメージを癒したわけではない。
 けれど今は戦っているシャルたちのことが心配で仕方がない。
 少し待って。今から助けに行くから。
 第三の凶鳥と共に。

 「移動する時間が惜しい。XNディメンションで行く!」

 その蒼い瞳に宿る光には、明確な意思があった。