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IS  バニシングトルーパー 045

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 「……っ!!」
 二人の迷いのない言葉に衝撃を受け、箒は思わず息を飲み込む。
 自分は自らの意志で決めて、ここまで一緒に戦ってきた、この状況で自分の安全を優先したいのは人として当たり前。誰も自分の判断を責められないはずだ。
 でも、それでいいのか?

 紅椿を翻らせ、箒は鈴とレオナが進んでいる方向へ振り返った。
 いやいやいや。何情けないことを考えているんだ、篠ノ之箒!
 この紅椿は、そんな自分を見せるためのものではないはずだ!

 「間に合え……!!」
 赤い翼を羽ばたき、箒は一瞬で鈴とレオナを追い越して密漁船へ急行する。
 紅椿の直線化速力は甲龍とズィーガーのを遥かに凌駕しているが、行動を決断したのが遅かったため、銀の福音の弾丸より先に密漁船の前に辿り付けるかどうか分からない。
 それでも、箒は必死に手を伸ばす。
 背筋を真っ直ぐに伸ばして生きるためにも、この行動は決して無駄ではないはずだ。 

 「ほらほら、逃げるんじゃないよ!」
 「こんな時に……っ!!」
 アギーハの叫び声と共に、シルベルヴィントのフォトンビーム砲の輝きが確認した。それを回避するために、箒はやむなく側転する。
 しかしこの一瞬の減速で、弾丸の雨より先に密漁船に到達するのはもはや不可能。

 「しまったっ……!!」
 ただの民間用漁船が、一発でも喰らったら何人が犠牲になるか、知れたものではない。
 惨劇の発生を覚悟して、三人は苦悶に表情を歪ませて、体に震えを走らせる。
 けれど弾丸が直撃する前に、密漁船の前の海面が盛り上がり、そこから何か巨大なものの影が激しい水しぶきを上げながら現れた。

 あれは、赤銅色をしているISの姿だった。
 背中に二つの太いドリルを背負い、イルムのグルンガスト壱式とよく似たシルエットを持つその機体は、超闘士グルンガストシリーズの最新型「グルンガスト参式」であった。
 片手に真っ白なISを提げ、グルンガスト参式を纏った銀髪の剣士はもう片手でその機体本体の三倍ほどの丈の大剣「参式斬艦刀」を構える。
 そして、満天から降って来る弾丸の雨に向けて、力いっぱいで刀を一閃する。

 「はぁぁぁあああっ!!」
 瞬間、参式斬艦刀から凄まじい風圧が生じ、満天のエネルギー弾丸はまるで霧のように払われ、空気中で分解して消えて行った。 
 非実体の射撃を剣圧だけで振り払うとは、実に非常識極まりない。しかしそんな場面で誰もツッコミを入れる気になれず、ただ口をぽかんと開いて呆然としているだけだった。

 そして背後の甲板の上で腰を抜かした密猟者達を一瞥して、ゼンガーは参式斬艦刀を展開したまま肩に担いで平然として威圧感のある声を轟かせ、名乗りをあげた。

 「ゼンガー・ゾンボルト、見参!!」