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IS  バニシングトルーパー 047

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stage-47 平穏な夜






 暗い部屋の中、一人の男がいた。
 いくつかのモニターに囲まれたデスクの前に座り、その男は至って真面目な表情でそのモニターに映っているものを眺めていた。
 地面に積み上げられている大量な本や、散かっている図面などから見れば、ここは恐らくこの男の研究室か書斎なのだろう。
 しかしこの男がいま眺めているのは、研究資料やデータなどではない。 
 彼が真剣な目で鑑賞しているのは、日本の民族服装である和服を着た男達が剣を持って斬り合う映像、いわゆる時代劇というものであった。
 さらによく見ると、彼のデスクの上には、何体かのロボットフィギュアが並んでいた。
 どうやら四十代の風貌をしているこの男は、かなり広い趣味範囲を持っているようだ。

 「また見ているか。よく飽きないものだ」
 部屋の入り口から、もう一人の男が現れた。
 綺麗なオールバックに纏め上げられた獅子の鬣のような金髪を持ち、厳かな礼装で身を包んだ、高貴な気質を漂う中年男だった。 

 「何を言う。これは私の数少ない娯楽だぞ」
 嬉しそうな表情を浮べて、時代劇を鑑賞していた男は振り返って返事をした。
 その青みのかかった髪と顎鬚、そして知性的な光を湛える瞳から見ても分かるように、彼はギリアムと彼の部下達によって救出された科学者、ビアン・ゾルダーク。
 そしてビアンに話しかけた男はドイツ連邦軍司令にしてエルザムの父親、マイヤー・V・ブランシュタインである。

 「娘に知らせなくて、本当によいのか?」
 近くの椅子に腰をかけて、マイヤーは地面に散らされている図面を拾い上げて、適当に捲る。
 図面というか、落書きに近いものばかりだった。
 馬に乗った武将のようなロボットや、機械の鎧を纏った美少女。
 しかも美少女の部分は妙に可愛く描かれている。
 漫画家になれるレベルだぞ、これは。

 「……仕方ないことだ」
 指を組んで、ビアンは苦笑いに近い複雑な表情を見せた。
 組織に追われる身としては、娘に居場所を知らせることはできない。
 それに、ここで科学者として、やらねばならんことがある。
 組織は今、私欲と野望によって歪められて、もはや引き返せないところまで来ている。あそこに残った研究成果が悪用されるのなら、それを止めるのは科学者としての自分の責任だ。
それに、姿を消したあの子の動向も気になる。

 「まあ、安心して研究に専念するがよい」
 「そうさせて貰う。ブライアンとお前の借りは、必ず返すさ」
 長年の友の顔から何かを読み取ったか、マイヤーは口を開き、穏やかな声で言葉を紡ぐ。その声で我に返り、ビアンは応じる。

 「しかし、お前からの情報を懐疑するつもりはないが、やはり信じられんよ」
 椅子の背もたれの体重を預け、マイヤーは感慨めいた声で呟く。

 「……50年以上前から活動している秘密結社の核心にいる人物は、年端も行かぬ少女であったなど」





 *





 「戦いが順調に終わったようだな」
 自分の勤務室でノートPCと向き合いながら、ブライアン事務総長は口元を僅かに吊り上げて呟く。
 近くのソファに腰をかけて、目を瞑っているカーウァイ大佐は隊員たちの働きに納得したように、無言に頷いた。

 事件が起きてから、教導隊出撃要請がくるまで随分と時間がかかったが、無事に納まってなによりだ。
 さすがは厳選されたメンバー。彼らの実力は本物だ。

 「これで、落ち着いて話を聞いてくれればいいがね。ムブハル君」
 「そうですね」
 ブライアンの横に立っている、もう一人の男はブライアンの言葉に反応し、相槌を打った。
 褐色の肌の長身痩躯を緑色のスーツで包み、その男の肉付きの薄い顔に不敵な笑みを浮べている。

 「あれ、やる気がないみたいね。やはりIS委員会所属の君としては、やりつらいかね?」
 「そんなこと」
 滅相もないと、ムブハルは頭を横に振る。
 そんな彼の顔から、ブライアンは窓の外へ視線を移り、遠くを見つめるような目になる。
 そして、そっとノートPCを閉じた。

 「じゃ、頼むよ」
 「はい」

 *



 ぼんやりと、セシリア・オルコットの意志は暗闇から回復した。
 まず最初に感じたのは、大きな疲労感だった。
 ゆっくりと上半身を起こして、彼女は力の入らない指で目を擦りながら、今の状況を把握しようと、周囲を見回す。
 ISスーツ姿の自分が寝ていたのは、昨日から下宿している和式旅館の一部屋だった。
 部屋の中が暗くて、小さな電子音だけが響き渡る。  

 そしてその電子音の元へ視線を落とすと、彼女は思いっきり目を覚ました。
 セシリアの隣には、医療器具に囲まれているクリスと、彼の手を握ったまま寝ているシャルが居た。
 
 この二人を見て、今日これまでに起きた事の数々がセシリアの頭に流れ込む。
 そうだった。海から回収してきたクリスをシャルロットと一緒に看護していたら、いつの間にか寝てしまったのだ。
 クリスは体を酷使しすぎたせいで衰弱しているが、命に別状はないとのことらしい。
 モニターに映っているクリスのバイタルサインは、既に安定している。そのうち目をさましてくれるのだろう。
 
 目を窓の外へ向けると、そこにあるのは、満天の星空だった。
 あれから何時間経ったかは知りませんし、昼食も取りませんでした。
 他の皆も帰ってからすぐ部屋に戻ったため、今何をしているは知りません。
 でもクリスさんとシャルロットさんも起きたらお腹がすくでしょうし、少し食べ物を持ってこよう。

 (お風呂も、先に入って来ようかしら)
 戦闘中にかいた汗やクリスを助ける時に浸った海水がすっかり乾いたから、皮膚がベトベトして中々に気持ち悪い。
 やはり、こんな姿を他人には見せたくないな。
 指で荒れた髪を梳いて、セシリアは部屋から出ようと立ち上がる。

 しかし出口へ一歩を踏み出そうとした矢先に、彼女は躊躇した。
 そして、再び腰を下ろして、昏睡中のクリスの顔を眺める。
 喉を鳴らして生唾を飲み込み、セシリアの目に妖しげな光を湛える。
 この姿は、好物を目の前にした子供の如く。

 最近は結構ガードが緩いし、今は無防備だ。シャルロットさんも寝てる。
 こここ、これはもしかして、クリスさんを好き放題できるチャンスなんじゃないかしら?
 寝込みを襲うなど、淑女のやることではありませんが、ちょっと触るだけなら、構いませんよね?

 まだ寝ているシャルを一瞥して、セシリアはクリスの頭へ手を伸ばした。
 そして、彼を起こさないようにできるだけ優しく、その額にそっと自分の手を乗せた。

 温かい。ちゃんと生きている。
 初めて男の子の額を触って、そんな感想が出てきた。
 ドキドキする心臓を押さえて、続いて髪を触って耳を触り、頬に手を添えた。
 こんな恋人のシャルにだけ許されていたスキンシップに、セシリアは思わず没頭する。

 でも、やはりどこか虚しい。
 助けれてくれて、優しくしてくれるのは嬉しいけど、受け入れてくれないのは凄く寂しい。
 どんなに頑張っても、彼はシャルロットをしか抱き締めません。
 彼と一番親しい女子は自分だと、油断してました。