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IS  バニシングトルーパー 047

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 もしシャルロットが来る前に思い切って告白したら、違う関係になっていたのかしら。
 まあ、今でも負けを認めるつもりなんてありませんけれど。

 気付けば腰を浮かし、彼と唇を重ねていた。
 セシリアの精一杯の、触れるだけのキスだった。
 これ以上のことなんて、経験したことがない。でもそれだけで、胸が一杯になり、熱い気持ちが溢れそうになる。
 
 数秒間、セシリアはキスは続けた。
 そしてやがて、セシリアは彼の唇から離れていく。
 ごめんなさい。ちょっと触るだけのつもりだったのに。
 でも今日は頑張ったし、これくらいのご褒美はいいよね?

 「……人の彼氏に、何をしてるのかな?」
 「きゃああああ!!」
 すぐ隣からいきなり聞こえた声に、セシリアは情けない悲鳴を上げて、後ろへ座り込む。
 声のした方向へ目を向くと、呆れたような目で睨んでくるシャルの顔が視野の飛び込む。

 「まったく、油断も隙もないんだから」
 「こ、これは、額でクリスさんの体温を測ろうと……!」
 「言い訳しなくていいよ」
 慌てて弁解しようとするセシリアの言い分を、シャルはきっぱり切り捨てた。
 モニターに映るクリスのバイタルサインに安堵して、彼女は大きな欠伸をする。
 今日の戦いで、さすがにシャルも疲れきっていた。セシリアと同じで、着替えもせずISスーツ姿のままクリスの側で寝ていた。
 欠伸の後、シャルはクリスの顔に視線を落とした。

 「あ~あ。こいつを殴りたい」
 「えっ?!」
 「だってこいつ、人がどれだけ心配するか、全然考えてないよきっと。ああ、ムカつく」
 クリスの頬を引っ張って、シャルは恨めしげな目で彼を睨み、小さなため息を吐く。
 私を幸せにするって言ったのに、なんで自重しないかな。
 ていうか、一緒にいたあの女子は敵だよね? なんで助けたの?
 胸が凄く大きい子だったけど、まさかあれが理由じゃないよね?
 もしそうなら、ただじゃおかないんだから。
 
 「う、ううっ……」
 頬を引っ張られて痛かったからか、クリスの口から小さな呻き声が聞こえた。
 シャルとセシリアはすぐに反応して、彼の顔を見つめる。
 少女二人の注目の中、クリスはゆっくりと瞼を開いていく。

 「クリス!?」
 「クリスさん!?」
 月光に照らされている室内に慣れてないか、クリスは虚かな目で宙を眺めたまま、二人の呼び声に反応しない。
  そして一回だけ深呼吸した後、心配そうにしている二人の顔に視線を向けた。
 その瞳には、なぜか不安との色が揺れていた。

 「君達……誰だ?」
 「「ええっ!!!?」」
 映画やドラマの中で頭を強く打った人がよく言うセリフに、女子二人はこれ以上ないというくらいに目を丸くして、クリスの呆然とした顔を凝視する。
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、二人は息を呑み込んで彼の次のセリフを待つ。

 「うっ……頭が、体も痛い……」
 「ちょっと、まだダメだよ……!」
 肘をついてなんとか起き上がろうとして、すぐに全身の鈍い痛みで顔を歪め、布団に倒れこむ。
 そして、不思議そうな表情で周囲を眺めながら質問を飛ばす。

 「あれ、ここはどこ? 俺は本社の地下に居たはずなんだけど……ていうか、なんで怪我してるんだ?」
 「「記憶喪失……っ?!」」
 素っ頓狂な声を上げて、シャルとセシリアはクリスに迫る。
 まさか、自分たちのことを覚えてないだなんて言わないよね?

 「IS学園に入学した以来のことは全部覚えてませんの?」
 「IS学園 ……?」
 「そんな! 恋人であるわたくしのこともお忘れですか!?」
 「ちょっと! ドサクサに紛れて何言ってるの!!」
 クリスの胸板に飛びついて低い啜り泣くような声を漏らすセシリアに、シャルは眉を吊り上げて臨戦態勢を取る。
 まさかこれをチャンスに彼女の座の強奪を図るとは、油断ならない女だ。

 「オルコット家の当主になって頂けると言う約束も……覚えていませんの?」
 上目遣いで潤った目をぱちぱちさせながら、セシリアは切なげな雰囲気を広げる。その演技は真に迫りすぎて、シャルまで飲み込まれそうになる。
 そんなセシリアをクリスはマジマジと眺めながら、何か難しい問題を考えているように眉を顰める。
 そしていきなり手で口元を隠して、笑いを我慢しているように肩を震わせながら言う。

 「……すまん。ただの冗談です」
 「「冗談――っ?!」」
 「いたいいたい!!」
 冗談という単語を口にした瞬間、シャルとセシリアはクリスの両頬を思いっきりつねられた。
 この男、目を覚ましてからいきなり記憶喪失なんて演じやがったよ!

 「私たちに心配をかけて、楽しいの?」
 「さすがに温厚なわたくしでも怒りますわよ!? というか殴りますわよ!!」
 青筋を浮かべて、シャルとセシリアは氷のような殺意を篭った目でこの笑えない冗談を飛ばした男を咎める。
 二人のほっぺつねり攻撃から抜け出して、クリスは両頬を手で冷やしながら言う。

 「ごめん。でも、セシリアの芝居はそこそこ面白かったぞ」
 「なっ! 芝居ですって?! わたくしの純情を返してください!!」 
 顔を真っ赤にして、セシリアはクリスの胸倉を掴んで思いっきり揺らす。
 勢いであれをやってしまったけど、この男は笑いを我慢しながら見ていたと思うと、顔から火が出そうだ。
 こうなったら、この手で本物の記憶喪失にして差し上げますわ! 

 「た、助けてくれ! シャル!!」 
 「コトワル」
 そりと言い返して、シャルは顔を逸らした。それを見たクリスは何とかセシリアの拘束から抜け出して、シャルを抱き寄せる。
 シャルの体の柔らかい感触がなぜか懐かしくて、思わずいつものくせで彼女の髪に鼻を押しつける。
 
 「冷たいよシャル。せっかく無事に戻れたのに」
 「ちょっと、今は汗臭いからやめてよ!」
 「お待ちなさい! なにわたくしを差し置いて二人の世界に入ってるんですか!!」
 「ああ、はい。今日は頑張ったな、セシリア」
 唇を尖らせるセシリアの頭に手を乗せて、撫でてみる。
 すると子供扱いみたいなご褒美が足りなかったか、セシリアはさらに頬を膨らませる。

 「クリスさんのためにあれだけ頑張りましたのに、これで済ませるおつもりですか?!」
 「あれっ、足りないのか?!」
 「そうです! もっと気持ちの篭ったご褒美が欲しいです!」
 「と言うと?」
 「それは、クリスさんが考えてください!!」
 クリスの布団の隅にきちんと正座して、セシリアは目を瞑った。
 そして、無言に僅かに顎を上げて、その可憐な桜色の唇を軽く突き出す。
 人に考えろと言っておいて、他の選択肢を潰したよこの子。

 「クリスさんは、まさか女に恥をかかせるようなことはしませんよね?」
 「……」
 顔を強張らせて、クリスはシャルの顔色を伺う。
 嫉妬心の強いシャルのことだ。笑いながらバンカーを展開するに違いない。

 「……クリスの好きにしたらいいよ」
 「えっ――!?」
 シャルの口から出た予想外の返事に、クリスは素っ頓狂な声を上げる。
 どこかおかしい。