二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシング・トルーパー リバース 003-004

INDEX|1ページ/10ページ|

次のページ
 

Chapter-03 逢




 「パイロットは全員揃ったな。では任務の説明を始めるぞ」
 クリス、セシリア、一夏、箒、鈴。
 アビアノ基地に借りたブリーフィングルームにて、席に着いた五名の部下の顔を見回した後、織斑千冬大尉はメインモニターの前に立った。 
 今から彼女は、情報部の上司からこの特殊任務実行部隊「ブリュンヒルデ」へ新たに下した任務をパイロットに伝達する。

 「今回の任務は、伊豆基地のレイカー司令がギリアム少佐を介して依頼してきたものだ」

 手に持っている端末のデジタルファイルへ視線を向けて、千冬は淡々とした口調で説明を始めたが、下に座ってる部下達は揃ってやや驚いたような顔になった。
 対異星人用人型機動兵器開発プロジェクト「SRX計画」や、スペースノア級万能母艦の製造など、地球連邦軍極東方面軍支部である伊豆基地は、数々の重大計画を実行した有名な基地として知られている。
 その伊豆基地の司令を勤めているレイカー・ランドルフ准将は広い人脈を持ちながら、情報部で千冬の上司に当るギリアム・イェーガー少佐を介してこの部隊に任務を依頼するということは、かなり機密性の高い任務に違いない。
 そう考えると、全員の表情はより一層引き締ったものになった。

 「そう身構えるな。内容はそんなに複雑なものではない」
 部下達の心境を察した千冬は、彼らを安心させるようにこの言葉を加えて、メインモニターを起動させた。
 そこに映り出したのは地図だった。しかもそれは地球周辺の宇宙地図で、その上に移動路線を意味するラインが書かれている。
 それを見た部下達は同時に、今回の戦場が宇宙だということを理解した。

 「明日06:00から我々はシャトルにて宇宙へ上がり、月――マオ・インダストリーの月面本社へ向かう。そこでとあるものを受け取った後再び地球、マダガスカルに降り、指定地点にてとある相手に届ける。これが今回の任務だ」
 簡潔にまとめられた言葉で、千冬は今回の任務の概要を部下達に聞かせた。

 マオ・インダストリーとは、連邦軍のために軍用PT(パーソナルトルーパー)を開発、生産する会社であり、量産型ゲシュペンストMK-IIや量産型ヒュッケバインMK-IIのメーカーでもある。
 マオ・インダストリーは地上にもいくつかの支社と工場があるが、本社は月面に設けられている。あそこで受け取れるものがあるとすれば、それは最新型のPT(パーソナルトルーパー)以外に考えられない。さらにレイカー司令が依頼したものとなれば、SRX計画と関わりのある機体の可能性が高い。
 しかしこういった任務は戦艦を持つ部隊ではなく、この部隊に依頼したということは、渡す相手は普通の相手ではないということだ。
 このことをパイロット全員は理解したが、誰も口に出さない。

 ニード・トゥ・ノウ。
 知るべき時が来れば、指揮官の織斑千冬大尉は教えてくれる。それまで深入りは控えるべきだ。それが組織のルールというもの。
 特に「ブリュンヒルデ」は情報部に所属しているため、知ってはいけなことが多い。

 「今日中にシャトルの用意が出来次第、各自の機体を積み込め。移動ルートなど詳細のデータは後で貴様らのDコンに転送する。一度閲覧したら自動削除されるから、しっかり覚えろ」
 手元の端末を隊員達に見せて、千冬は今日の仕事指示を部下達に出した。
 Dコンとは、個人用高性能携帯端末のことだ。テレビやネットに音楽再生など色々とできて中々に便利。その汎用性の高さから一般社会の子供でも一人に一台を所有しているほどの普及度を誇っており、軍から支給された仕様はさらに機密保持性能が強化されている。

 「私からの話は以上だ。何か質問はあるか?」
 任務の伝達を終えた後、千冬は手を腰に当てて部下達に不明の点があるかを確認する。
 そしてしばらくの静寂の後、千冬はもう一度口を開いた。
 「ないようだな。では……」

 ――――!!
 解散を言おうとした矢先に、ブリーフィングルームの壁にある通信機が鳴り始めた。一瞬でこの場にいる全員は注目をそこへ向け、隊長の千冬は早足で通信機を手に取り、耳に当てた。

 「宇宙か、久しぶりだよな。L5戦役以来だっけ」
 「そうだな。午後は空間戦闘のシュミレーションに付き合ってくれ。勘を取り戻したい」
 
 千冬が通信機と会話している間に、一夏とクリスは小声で私語を始めた。
 久々の宇宙だ。現時点ではDC残党は宇宙より地上の方が圧倒的に多いが、それでも油断はできない。
 特に最近では、北米のラングレー基地から重要な実験機を奪ったDC残党が宇宙に逃亡したって情報が来ている。
 
 「そういえばあの時俺達が見た『マスタッシュマン』、クエバス基地で連邦軍と交戦したって話たぞ」
 「あの髭のついた特機か? やはり敵だったか……」

 「……分かりました。直ちに」
 二人が会話しているうちに通信を終えた千冬は通信機を元の位置に戻して、部下達に向きなおして腕を振り上げ、大声を出した。

 「貴様ら、緊急出動だ!! 急げ!!」

 *

 一方この頃、アビアノ基地から離れた荒野の中では激戦が繰り広がれていた。
 ピンク色の粒子ビームが飛び交じり、機動兵器(マシン)の爆発による破片が空中に飛散する。 降ってくるビーム雨の中、オレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIは巧みに地形を利用してチャンスを作って反撃していく。
 しかし今、向こうから撃ってきたのは、もう先ほどのペイント弾ではなく、PTの装甲を確実に破壊できるビーム弾だった。オレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIの装甲の一部は命中してきたビームによって既に酷く破損している。
 そう、これはもはや実験ではなく、実戦である。
 そしてオレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIを襲ってくるのは予め設置したドローンではなく、青き幽霊(ゲシュペンスト)達だった。
 それも一機や二機ではなく、十機以上の量産型ゲシュペンストMK-IIが一斉に襲い掛かってきている。

 量産型ゲシュペンストMK-IIは事実上、連邦軍にしか運用されてない機種。なのにこの部隊は連邦軍所属のオレンジ色量産型ゲシュペンストMK-IIを襲撃している。
 それに、現段階ではマオ・インダストリーが所有する一部の工場が予備パーツを生産しているだけで、改修ところか、実機はもう生産すらされていないはずなのに、今に現れたこのゲシュペンストの部隊は空中飛行している。つまり、テスラ・ドライブを搭載した改良型。
 仮に連邦軍から流出した機体だとしても、リオンシリーズや量産型ヒュッケバインMK-IIなど、空中戦ができる機体なら他にもあるのに、わざわざ量産型ゲシュペンストMK-IIに拘る必要はどこにある。
 実に不可解な光景だ。

 「ダメです! 予備のドローンはもうありません!!」
 この戦局を観察している移動研究室の中、オペレーターの焦った声が響き渡った。
 敵を確認した時から設置したドローンを全部、オレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIの援護に回したが、いかんせん実弾を装填してないため、有効な戦力にはなれず、せいぜいかく乱くらいしかできなかった。