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IS  バニシング・トルーパー リバース 003-004

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 機密保持のために護衛の戦力を連れてこなかったことが、仇になった。

 「何の予兆もなくいきなり現れて、襲い掛かってきたのは、新型のECM装置のお蔭だと見て間違いないな。この連中、一体何者だ……」
 メガネをかけた女はキャンディーを舐めながら、相変わらず落ち着いた態度で独り言のように呟く。
 敵達は視認できる範囲まで侵入してきても、レーダーはまったく反応しなかった。ジャミングによるノイズなども探知されていない以上、この敵達は強力なステルス能力を持っているに違いない。
 しかし今はそんなことより、大事な実験機を守らねばならん。
 オレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIは善戦しているが、流石に数の差が歴然としている以上、捕獲されるのも時間の問題だ。

 「例の部隊の到着はまだか?」
 「既にこっちに向かっている途中で、間もなく到着するとのことです!!」
 「……データ採集を続けろ」
 オペレーターに指示を与えた後、メガネ女は視線をモニターに戻して考え込んだ。
 敵はたっだの十数機。アビアノ基地の厖大な戦力をどうこうしようなんて不可能だ。ならばこの襲撃の意図は最初からこの実験の成果を奪い取ることだったのか? 
 一体どこから情報が漏れたのかは分からないが、もしそうなら、実験機が撃破される可能性は低い。
 しかし、いくら本体(メインサーバー)は別所に隠されているとは言え、端末(ターミナル)だって研究の結晶。そうやすやすとくれてはやれん。
 キャンディーを噛み砕いて、メガネ女の表情が険しくなった。

 荒野の中では、戦闘はまだ続いていた。
 地面に転がっているドローンの残骸を踏み潰しながら、回避行動を強いられているオレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIの劣勢ははっきりしていた。
 無理もない。戦車の天敵は攻撃ヘリであるように、空中に飛ぶ機体は陸戦用の機体に対して絶大なアドバンテージをもっている。
 唯一の射撃武装であるメガビームライフルはとっくに弾を切らしており、今はただ敵にそれを悟られないために持っているだけ。残りの格闘武装「ジェットマグナム」は論外だ。複数の敵がいる以上、空に跳躍したら直ぐ蜂の巣にされてしまう。
 今は援軍が来るまで時間を稼ぐことだけを、考えて行動すべきだ。

 しかしこれくらいの考え、敵に分からないわけがない。オレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIの弾切れを気付いた敵部隊は環になって標的を包囲してきた。
 それを理解したオレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIはブースターで一気に包囲網から突破しようとするが、焦った行動があっさり読まれて、足部を敵に撃ち貫かれて爆発し、機体がバランスを保てなくなり地面に倒れ込んだ。
 その時に敵の包囲網は既に完成し、そのうち三機の青い量産型ゲシュペンストMK-IIは接近してきて、ワイヤーガンを出してきた。
 このままオレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIを捕獲して連れ去るつもりだ。

 バシューン!!
 突如に一筋の粒子ビームがこの戦場に横切り、一機の青い量産型ゲシュペンストMK-IIは胸装甲が溶解され、風穴を上げられた後爆炎を上げた。
 遠い場所から来た精密狙撃だった。レーダーに新たに映り出された五つの影に、敵は直ぐに散開した。
 モニターの向こうに、五機の量産型ヒュッケバインMK-IIが現れた。そのダークグレーの塗装と戦乙女のエンプレムから分かるように、これは「ブリュンヒルデ」所属の五機である。

 「まさか飛行可能なゲシュペンストだとはな……」
 五機のうち、フォーメーションの最先頭に飛んでいる高機動仕様量産型ヒュッケバインMK-IIのコックピットで、クリスはモニターに映っている敵の姿に僅かに驚いた。
 しかし任務は任務だ、敵の機種など問題ではない。
 地面に倒れこんでいる保護対象、オレンジ色の量産型ゲシュペンストMK-IIの健在を確認した後、クリスは隊友たちに指示を出した。
 
 「ノートゥング01より各機へ、いまから敵ゲシュペンスト部隊の排除行動に移る。攻撃が行動不能な友軍機に当らないように注意しろよ」
 「「「了解!」」」

 「了解~!」
 一拍子遅れて、やや亢奮気味な返事をしたノートゥング05こと凰鈴音はやや不慣れの手付きでウェポンメニューから武装を選択した後、左手の操縦桿を捻った。
 この出撃は彼女にとってはカスタマイズ後のデビュー戦だから、新武装を試したくて仕方がないだろう。
 中距離支援仕様にカスタマイズされた彼女の機体は、この部隊では屈指の面攻撃力を持っている。バックパックに装着されている多連装ミサイルランチャーやレクタングル・ランチャー、左腕に携えている六連装ビームガトリング砲などによって、密集した敵に打撃を加え陣形を崩した後、味方の支援を行うのが主の仕事。
 操作に応じて、彼女は機体のバックパックにある多連装ミサイルランチャーのハッチを開放した。複数のターゲットを同時にロックしたのを確認した後、彼女は迷わず引き金を引いた。

 「派手に行くよ!! それそれそれそれ!!」
 点火したミサイルが次々煙を噴いてと標的へ飛んで行き、それに対して敵はメガビームライフルで迎撃する。そしてミサイルの爆炎によって分散された敵の一機を狙って、鈴は六連装ビームガトリング砲を構えた。

 「蝶のように舞い、蜂の巣にしてやんよ!!」
 高速回転を始めた砲身は一定速度に達した後に猛獣のように咆哮し、光の弾丸が毎秒100発という凄まじいスピードで敵へ降り注ぐ。
 そして鈴の宣言通り、六連装ビームガトリング砲の猛攻によって青いゲシュペンストの装甲は一瞬で蜂の巣にされ、空中で爆散して塵となった。

 同時に、敵のフォーメーションが崩れたこの隙を狙って、先頭に立っている三人は加速して切り込んだ。

 「ぬうっ……!!」
 一機の青いゲシュペンストに狙いを定めて、クリスはビームソードを引き抜いてアクセルペダルを踏み、体が軋む感触を感じたのと同時に疾風の如く敵の横を通って行った。
 そしてこの電光石火の一瞬で、敵のライフルを握っていた右前腕は既にクリスに切り落とされた。
 しかしこの結果に、クリスは意外を感じて目を大きく開いた。

 「今のを…かわした?」
 さっきの攻撃は胴体部を狙って斬ったはずなのに、相手は間一髪のタイミングで機体の姿勢を変えて、致命的ダメージを上手く避けて腕一本だけで済んだ。
 どうやら相手は飛行機感覚でAMを操縦する一般的なDC残党ではなく、かなりのPT空中戦経験を持っている手練のようだ。
 しかし射撃武装を持つ右腕が失った敵は、恰好な的でしかない。今から急旋回してトドメを刺してもいいが、無理して拘ることもない。
 後方で仕えているスナイパーに、クリスはフォローを要請した。

 「ノートゥング04!!」
 「はいっ!!」
 言葉の終わりと同時に、青いゲシュペンストは既にセシリアの狙撃によって撃ち貫かれて爆発した。
 「サンキュー!」
 敵の撃墜を一瞥で確認した後、クリスは再び加速を始めて別の敵へ突進した。

 「気をつけろ、箒! こいつら、普通の残党とは違うぞ!」
 「分っている!!」