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こらぼでほすと ニート17

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翌日から、ニールは子供の世話をするように、リジェネに付きっ切りになっている。まあ、寺での家事はしているが、リジェネも、それについて廻っている。動き回り過ぎるのを阻止するなら、ついてまわるしかないからだ。
「どうすればいいの? 」
「いや、家でテレビを観てろ。こっちはいいから。」
 かなり打撲の痛みが退いたのに、手伝いたいと言っても、ニールは許可しない。だが、リジェネも退くつもりはない。一緒に作業をすれば、ニールが休める時間も増えると気付いたからだ。なるほど、年少組たちが、こぞって手伝っていたのは、そのためかと理解する。
「僕もやるっっ。やりたいっっ。」
「うーん、じゃあ、如雨露に水を入れて、そこの菜園に水をやってくれ。」
「わかった。」
 洗濯物を干している傍にある家庭菜園の水遣りを頼まれた。左手は使えないので、大きな如雨露が持ち上がる程度の水を入れて、それをかけてまわる。これも朝夕一度ずつ、ニールがやっている。たまに、ハイネや悟空も手伝っている。洗濯なんて機械が全部やってくれるのに、寺では太陽光での乾燥の方がメインだ。乾かした感触と匂いが、このほうがいいのだという。人間の拘りというものなんだろう、と、リジェネも予想しているが、何が違うのかは理解できない。菜園のほうは、水切れしてくったりしている植物が水を得て持ち直すので、成果が現れるから理解できる。
「ママニャン、俺、再来週から遠征だ。」
 ティエリアとキラが、システムを作り上げた。これを合体させて調整するために、キラがヴェーダへ遠征する。表向きには、プラントへの訪問になっているので、ハイネが護衛として付き添う。うっかり忘れているが、キラもアスランもプラントでは有名人だ。警備も厳しくしなければならない。
「ああ、キラからも聞いてる。」
「その間は、アイシャさんが来ることになってる。あと、トダカさんとか沙・猪家夫夫あたりが顔を出す。」
「だから、リジェネの監視は、もういいだろう? こいつは、うちに遊びに来てるだけなんだからさ。」
「余計なことをくっちゃべられたら、おまえがダウンするだろ。ついでに、天気予報的にも危険なんだよ。」
「あーそういえば、そんなこと言ってたな。」
 この時期の特区には、台風というものが通過する。これが強烈な低気圧なので、ニールは本宅の医療ポッドに叩き込まれることになっている。そうなると、リジェネの世話ができないからのことだ。
「そうだなあ。うちに居ても、世話できないとなると、誰か頼まないといけないか。」
 すっかり、打撲は治っているのだが、肝心の左手は爪がちょろりと生えているだけで、まだ物を掴んだり持ち上げたりは難しい。とはいうものの、リジェネは本宅は出入り禁止を食らっているから、連れて行くこともできないのだ。
「それなら、僕、ママが留守の間はホテル住まいでもしようかな。看護サービスのあるホテルなら、何もしなくてもやってもらえるし。」
 水遣りをしつつ、耳は、こちらを向けていたリジェネが声を張り上げる。ここに居ても、悟空は文句は言わないだろうが、やはり自分で全部やるのは難しい。台風の通過程度なら、三日かそこいらのことだから、そういうサービスのあるホテルへ避難していれば問題はない。
「そういうのあるのか? 」
「あるよ。それなら、ママも心配しなくていいでしょ? 」
「そうだな。」
「じゃあ、リジェネ、ママニャンが本宅へ拉致られたら、そうしてくれ。俺のほうも、それで報告入れとく。」
 一時、そういう場所へ移動してくれるなら、ハイネも有り難い。『吉祥富貴』は少数精鋭なので、リジェネの世話に割ける人員が、実際はないからだ。キラとアスラン、ハイネがプラントへ移動してしまえば、ラボの人員は減る。そちらに、アイシャを投入する予定だから、今回のハイネのようにべったり監視するのは厳しい。トダカが、自分の親衛隊を使うから、と、提案してくれていたが、それも申し訳ないので、リジェネの提案は大歓迎だ。
「了解。ホテルは調べておくよ。」
 リジェネも、すっかり甘えた猫になっていて、親猫の心配するようなことはしなくなった。最初のツンデレ具合が嘘のような変化だ。少しずつ、他の人間とのコミュニケーションも取れるようになった。だから、今では複数の会話にも乱入できるようになっている。


「おまえら三人だけなのか? 」
「いや、カガリから護衛は借りていく。さすがに、俺一人でアスランとキラの警護は厳しい。」
 出勤前の晩酌で、ハイネは寺の坊主にも話を通す。『吉祥富貴』から出張るのは三人だが、その周囲に警護を複数配置する。エターナルで出航するなら、そこまでしないが、今回は民間のシャトルで移動するから、カガリに頼んだ。一応、キラはオーヴの准将様だったりするから警護してもらう理由もあるので、問題はない。
「ここんところ、サボってたんだから、働け、ハイネ。」
「へーへー、楽しい三週間だったよ。俺、隠居生活の良さを理解した。引退したら、こういうのんびりした暮らしをしたいと思ったさ。」
「・・・・ふん、おまえみたいな働き蜂には無理な話だ。引退したらボケて終わりだ。」
「わぁー酷いなあ、三蔵さん。・・・まあ、そういうことなんだろうけどな。実際、俺が隠居するのは何十年も先のことだ。」
 コーディネーターも、そこそこ長命だ。十三歳で成人に見做されるから、それから引退するまでとなると何十年もあるし、ハイネのような仕事は実戦に出られなくなってからも後進の指導やら全体の指揮やらの仕事があるから、早めに隠居なんてさせてもらえない。
「隠居するまでに伴侶も見つけとけ。」
「ママニャンを貰い受けてもいいんだけど? 」
「ああ? あれは俺の女房だ。下賜なんぞしてやるかっっ。」
「でも、熟年離婚とかさ、いろいろあるだろ? そういう場合は、俺にくれればいいんじゃないか? 」
「離婚? 結婚もしてねぇーのに離婚ができるか? だいたい、あれは俺の傍がいいから居着いてんだよ。」
「あれは、あんたの作戦勝ちだ。毎度毎度、呼び出して、あんたのいい声で愛の囁きを続ければ、誰だって陥るだろ? 」
「・・・・俺にも選択の自由ってあると思うんだが? てか、愛の囁きなんてされてねぇーよっっ。」
 酔っ払っているわけでもないのに痛すぎる与太話に、ニールはコメカミに手をやる。冗談だとは理解しているが、何か物悲しい気分にはなる。これが、巨乳の美人おねーさんたちが自分を取り合いしてくれるなら嬉しいが、やっているのは同年代の野郎たちなのだ。
「ママ、そこの漫才は放置しときなよ。バカなんだからさ。」
 悟空も爆笑しつつ、ニールを宥める。確かに、いい声で愛の囁きなんてものはないのだが、ふたりしていちゃこらと二人だけの空間を作り出して会話を楽しんでいるのは否めない。ママに伴侶が出来たとしても、寺に夫婦で住んでもらって、坊主の世話はしてもらわなければ、坊主は干からびしてしまうだろう。それぐらい、ママの世話は丁寧だ。
「俺、男だから、取り合いしてくれるなら美人のおねーさんがいいな。」
「繁華街に出て、ウインクすればママなんて、選り取りみどりさんだぜ? やってきなよ? ストレス発散になるからさ。」