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ベン・トー~if story~ vol.1

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1部 出会い


私立烏田高校1年、藤島大輔。俺には1つ年上の彼女がいる。同じ烏田高校の先輩で、名前は槍水仙。HP(ハーフプライサー)同好会という部活の会長だ。

まずは、彼女との出会いから語っていこうと思う。

あれはそう、桜舞い散る春先のことだった。高校に入学した俺は、これから始まる高校生活に胸を膨らませ…なんてこともなく高校はこんなもんかと部活に入ったりもせず日々を怠惰に過ごしていた。

そんなある日の朝、俺は登校してきた際、1人の人物を見かけた。タイの色から先輩と判断したその人物こそまさしく槍水仙で、今にして思えば、俺はその整った顔立ちや容姿から彼女に一目惚れしたのだと思う。

彼女は何だか大きな袋を持って校舎裏へと歩いて行った。あれは恐らく、空の弁当箱の入った袋だったんだろうと思う。恐らく、というのは当時俺は先輩がHP同好会に所属していることを知らなかったからだ。

その日、俺は授業など耳に入らずただただ今朝の彼女について考えていた。
「藤島、お前今日どうしたんだ?朝からぼけっとしてるじゃねぇか」
休み時間にそう話しかけてきたのは同じクラスの中学からの友人の藤澤だった。少しばかりちゃらけているが、成績優秀運動神経も良くてクラスの女子からは人気を博している存在だ。
「いや…何でもない」
「その感じ…女か?」
「……何でお前はお見通しなんだ」
こいつはいつもこんな感じで人の考えていることを当ててきたりする。
「やっぱりか。で、誰なんだよ?」
「いや、朝見かけた先輩なんだけどさ。けっこう美人な先輩だったんだよ。で、ちょっと気になってな」
「へぇ…。どんな感じの先輩だったんだ?」
俺は藤澤に先輩の特徴を伝えた。
「それって槍水仙、じゃないか?」
「槍水仙?それがあの先輩の名前か?」
「あぁ。俺も名前を聞いたくらいなんだが、何でもこの学校の伝統ある部活に所属してるらしいぜ」
「その部活の名前は?」
「なんつったかな…。確か、ハーフ何たらって同好会だった気がするな。よくは覚えてないんだが」
わりぃな、と藤澤は両手を合わすポーズをしつつ言ってきた。
「ハーフ何たらか…」
「ああ、そういや同じ1年の佐藤洋と白粉花だったかがそこに入部したなんて話を聞いたな」
思い出したように藤澤は言った。

「佐藤と白粉、か…」
それを聞いた俺は放課後、二人にコンタクトを取ってみることにした。
二人がいるのは俺とは別クラスのため、俺はそちらへと足を運んだ。まずは佐藤の姿を探す。が、今まで意識して見ていた人物でもないので見つけられず、やむなく佐藤洋はいるか?と佐藤のクラスメイトに聞いてみた。
「彼ならもう部活に行ったと思います。彼に何か用ですか?」
答えてくれたのは今時珍しい前髪ぱっつんなおかっぱロングヘアの女子だった。そういえば、この子は生徒会長に立候補していた子のような気もする。が、今はそれはどうでもいい。
「いや、たいした用じゃないんだけど…いないならいいんだ」
俺は軽く礼を言った後、白粉花のいる教室へと足を運んだ。

「白粉花っているか?」
先程と同じようにクラスメイトに聞いてみる。
「あ、あの…私に何か御用ですか?」
と、クラスメイトと思って話しかけたのが白粉花だったようだ。
「えっと、君の入ってる部活について知りたいんだけど…」
「HP同好会についてですか?それなら私より直接先輩に聞いた方が良いと思います。ちょうど今から部活に行きますし」
着いてきてくださいと言われたので、俺は黙って着いていくことにした。

「着きました。ここが部室ですよ」
HP同好会と書かれた札が掛かったドアを開けると、そこにはまさしく今朝見かけた先輩の姿があった。
「来たか。……?」
部室へ入った白粉へ軽く声をかけた先輩は、俺を見て首を傾げる。
「あ、初めまして。1年の藤島と言います」
先輩に挨拶し一礼する。
「2年の槍水仙だ」
先輩からも挨拶を返される。それから改めて先輩を見る。入念にセットされた髪、アイシャドウをして野生を感じさせるメイクもしている。改めて綺麗な先輩だと思った。
「どうした?」
「はい?」
先輩に問われ、俺は思わず疑問符をつけて返してしまう。
「何か用があるんだろう?違うか?」
そう訊かれて俺は、まさか先輩に会ってみたかったなどとは言える筈もなく、
「ええと、部活を見学させてもらえないかと思いまして」
そう口走っていた。
「ほう…」
と、見間違いかもしれないが先輩の唇が若干上向きにつり上がった気がした。
「見学は自由だ。好きに見てみると良い。佐藤、白粉、そろそろ時間だ。行くぞ」
「はい、先輩」
「今日こそは、お弁当をゲットです!」
先輩と佐藤達はおもむろに立ち上がると部室を出ていく。俺もそれに続いた。

着いたのは、『ホーキーマート』。何のことはない、普通のスーパーである。
「スーパー…ですか。ここで何を…」
聞こうとする前に先輩達は中へと入って行く。俺も続いて中へ。店内には俺達と同じくらいの歳の奴らが蔓延っていた。何が始まるっていうんだ?
「佐藤、お前は何を狙う?」
おもむろに先輩が佐藤と会話を始める。それにしても狙うって…まるでセールでも待ってるみたいな口振りだな。

やがて筋肉質のごついおっさんが何やら作業を終えて店の裏へ戻っていった。

・・・それが、開戦の合図だった。

このスーパーに集っていた奴らが一斉に弁当売り場へ向かって駆け出していく。俺は何が起きたかわからず見ていたが。どうやら弁当の争奪戦?を始めたようだ。こいつらはスーパーで何をしてるんだと当時は思ったね。
殴りあいや蹴りあいが続く中、一際目立っている存在があった。先輩である。彼女は圧倒的とも言える強さで並み居る野郎共を打ち倒していく。どうやら足技が基本の戦闘スタイルのようだ。先程から蹴り主体で戦ってるしな。俺は思わずその戦いに見惚れていた。そして、先輩に惚れ直した。
一方、佐藤は徒手空拳主体の戦闘スタイルのようだ。着実にライバルを打ち倒していっている。

やがて激しい戦いも終わり、先輩と佐藤と白粉はそれぞれ狙っていたらしい弁当を持って戻ってきた。そういえば、白粉はいつの間に弁当を手に入れてたんだ?
「これがHP同好会の部活か…」
三人を見て俺は呟いた。
「狼」
と、先輩が唐突に切り出す。頭に疑問符が浮かぶ俺に先輩は続ける。
「スーパーで弁当の争奪戦を行う者達をそう呼ぶ。藤島、お前も狼になってみる気はないか?」
狼…か。確かに、獲物を狙うあの必死さはそれに近いものがあるな。
「考えさせてください」
俺は先輩にそう返すと、その日は三人と別れ、自宅へと帰った。

作品名:ベン・トー~if story~ vol.1 作家名:Dakuto