ベン・トー~if story~ vol.3
「そういうこと」
「どういうとこが気に入ったんだ?」
「そりゃお前、一番は笑顔だな。笑ったときの顔が可愛いだろ。それにあいつ、あれでけっこうドジなとこもあるんだぜ?」
「そうなのか?」
「ああ。お前はあんま見てないだろうけどな」
「意外だな、倉敷が…」
割と何でもそつなくこなすように見えるんだけどな。
「で、お前は倉敷にコクるのか」
「そうしたいのは山々だが、今はまだダメだ。倉敷はお前に振られたばっかだしな」
「振られたばっかだからこそ、チャンスなんじゃないか?」
「うーん、何つーか卑怯じゃねぇか?そういうのって」
「卑怯?」
「傷ついたところにつけこんで言葉巧みに慰めて気を引く。そういうのって何か許せねーんだよな、俺は」
「そういうもんかね」
「少なくとも俺は嫌だな。やっぱ自分の力で惚れさせたいじゃねぇか」
「まぁ、お前がそう言うなら無理強いはしないよ。お前自身のことだしな」
「さーてと、そろそろ戻るか」
「そうだな。倉敷、落ち着いてるといいけど」
俺達は倉敷達の所へ戻った。
合流すると倉敷はもう落ち着いていたようだった。ただ、お互いあんなことがあったので顔を合わせづらい。
「ふ、藤島君…」
と、倉敷が声をかけてくる。
「あのね…その、これからも友達でいてくれる…?」
「もちろん。これからもよろしく」
「うん!」
ぱぁっと明るい笑顔になって倉敷は頷いた。なるほど、藤澤の言った通り笑顔が可愛いな。
「ああ、それと…」
「?」
「倉敷を思ってる人間は意外と近くにいたりするかもな」
「え?それってどういう…」
「そのうちわかると思うよ」
色々あったものの、俺達は笑顔で旅行を終えた。
作品名:ベン・トー~if story~ vol.3 作家名:Dakuto