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ベン・トー~if story~ vol.3

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12部 先輩との旅行


お盆が明けて先輩が実家から戻ってきた。
俺と先輩はこの日、夏休み前に計画していた温泉旅行に行くことに決めた。
午前8時、駅前で待ち合わせる。
「藤島、待たせたな」
「全然、俺も今きたとこです」
本当は30分くらい前についていた。先輩を待たせるわけにいかなかったから早く来ておいた。
「先輩、その服やっぱり似合ってます。綺麗ですよ」
「そ、そうか?まぁ、お前が選んでくれた服だからな」
照れながら先輩は言う。白基調のワンピースなのだが、これがまたよく似合っていて素敵だったため、この間のデートの時先輩に迷わず買うことを勧めた。
「さぁ、行きましょうか」
「そうだな」
俺と先輩は電車に乗る。目的地は温泉街だ。
電車内でトランプや雑談をするうち、あっという間についてしまった。
「あっという間でしたね」
「ふふ、そうだな」
時計を見れば時刻は午前10時を回ったところだった。
「早速、温泉に入りますか?」
「そうだな。…ん、待ってくれ」
「どうしました?」
先輩が歩いていく。その先には足湯があった。
「藤島、これは何だ?」
「足湯ですよ。見たことありませんか?」
「初めて見たぞ」
「入ってみますか?」
先輩はコクコクと頷く。俺は先輩に入り方を教えてあげた。先輩はその通りにする。
「ここに足をいれるだけでいいんだな?」
「そうです」
先輩は湯船に足を入れる。俺も一緒に足を湯船に入れた。
「これは…中々気持ちいいな」
「そうですね。俺も実際に入るのは初めてですけどいいもんですね」
実際、とても気持ちが良かった。足だけ湯に浸かっているだけなのに、身体も暖まってくる気分になる。
しばらく足湯を堪能した俺と先輩は、続いて目的となる温泉を目指した。
そして観光地図を確認しつつしばらく歩くと到着した。
が…
「おい、藤島。ここは温泉旅館なんだよな?」
「そのはずです」
「じゃあ目の前にあるのは何だ?」
「えっと、どう見ても…」
そこにあったのは『閉館』という二文字だった。
「閉館の貼り紙ですね」
1ヶ月ほど前にこの旅館は閉館してしまっていたらしい。一身上の都合となっていた。
先輩は残念そうにしてその場に立ち尽くす。ここの温泉は有名だったから意外すぎる展開に二人して立ち尽くしてしまった。
「あなた達、ここの旅館に泊まりに来たの?」
そんな俺達に声をかけてきた人がいた。40代前半くらいかな。
「あ、はい。そうです」
「そう…驚いたでしょう?ここ、急に閉館しちゃったから」
「ええ、とても。予約してたのに無くなってるなんて思いませんでしたから」
「そうねぇ。私たちにしても急なことだったから」
「何かあったんですか?」
「……あまり大きな声で言えることでないのよ。ごめんなさいね」
少し間を置いて、その女性は言った。
「い、いえ。こちらこそすみません」
お互いに頭を下げる。
「ところで、そちらは彼女さんかしら?」
頭を上げるとそう訊いてきた。
「そうです」
「そう。二人で旅行に来たのね。今日の宿は…決まってないわよね」
「はい。ここに泊まる予定でしたから」
「良かったら、うちの宿に泊まっていく?」
「え…あなたも旅館の経営者なんですか!?」
「ええ。温泉旅館『鶴ヶ峰』女将見習い越前百合子。ここで会ったのも何かの縁よ。どうかしら?」
「女将見習いって…じゃあ、二代目ってことですか」
「そうなるわ」
「先輩、どうします?」
「藤島が良いなら、私は構わないぞ」
「わかりました。ええと、じゃあ越前さん」
「百合子でいいわ」
「百合子さん、よろしくお願いします」
「ええ。じゃあ、ついてきて」
俺と先輩は百合子さんについて旅館へ向かった。しかし驚いた。百合子さんが旅館の従業員だったなんて。
旅館に着くと、百合子さんはすぐに部屋の手配をしてくれた。ここからは完全に仕事モードだ。
「お客様、恐れ入りますがこちらにお名前と振り仮名をお願い致します」
「はい」
俺は名簿に俺と先輩の名前を書き込む。その後、鍵を渡される。
「それではお部屋の方へご案内させていただきます」
俺達は百合子さんについて部屋へと移動する。
「こちらがお部屋になります」
案内されて中へ入る。畳の香りのする和室だった。
諸々の必要事項を話した後、百合子さんは部屋を出ていった。
「先輩、お風呂行きますか?」
「ああ、そうするとしよう」
俺と先輩は早速大浴場へと向かう。鍵は先輩が預かると言ったので先輩に渡した。
「それじゃあ、また後で」
「うん、後でな」
それぞれののれんを潜って脱衣場に入る。服を脱いで大浴場に足を運ぶ。見たところ温度ごとに浴槽が分けられていて、低温のところにはジャグジーもあった。身体を洗ってから中温の浴槽に入る。ちょうどいい湯加減でゆったりできた。
露天風呂もあるようなので、十分に温まった後に入ることにした。露天風呂からは海を眺めることが出来た。
……今、隣には一糸纏わぬ姿の先輩がいるんだよな。
風呂に浸かりながら、ふとそんなことを考えてしまってブンブンと頭を振り、邪な考えを掻き消した。いや、想像はしたよ?男子高校生だもの、いいじゃない。彼女のそんな姿を想像してしまっても。

風呂から上がる。先輩はまだ入浴中のようだった。ジュースを買って飲みながら待つことしばらくして先輩も出てきた。
「済まない、待たせてしまったか?」
「いえいえ、全然ですよ」
「なら良かった」
湯上がりで浴衣姿の先輩はいつもより艶っぽく見える。これが夜もとなると……マズイ、理性を保てるだろうか。何だって百合子さんは俺と先輩を同室にしたんだ?元々の宿では、別の部屋にする予定だった。間違いを起こすとヤバいからだ。特に俺が。今夜、寝れるだろうか?
「どうかしたか?」
先輩に顔を覗き込まれる。近くてドキッとしてしまった。
「ああいや、何でもないです」
「それなら良いんだが…」
それから先輩と二人で旅館を出て温泉街の色々な店を見て回る。と、とある土産屋の店主からこんな話を振られた。
「お兄さん達、カップルなのかい?」
「え、ええ。そうです」
「だったら、イベントに参加してみない?」
「イベント?」
「そうさ。参加条件はカップルであること。これだけさ」
「先輩、出てみませんか?」
「そうだな、せっかくだし出てみよう」
「決まりだね。この先に行ったところに受付があるからそこに行きな」
「わかりました」
「ところでどんなイベントなんだ?」
「行ってみればわかるよ」
店主に言われ、二人でイベントの受付へ向かう。他にも何組かのカップルが受付をしていた。
「何見てるんですか?」
「いや、この壁は何かと思ってな」
俺達の目の前には大きな壁があった。見た感じ、何か囲われているようで四角くなっている。
「お集まりの皆様、お待たせいたしました!これよりイベントを開始いたします!」
作品名:ベン・トー~if story~ vol.3 作家名:Dakuto