二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

True end.

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 

「ルルーシュってさ」
 生徒会室、並んで作業を進めていると突然スザクがルルーシュにそう声をかける。声に反応するように視線を隣に向けた。スザクの視線は書類に向かったまま、若干顔は俯いていた。困ったような笑みを浮かべている。
「なんだ、中途半端にきって。気になるだろ」
 言いたいことが有るならはっきりと言え。ルルーシュが肘でスザクの腕をつつく。痛いなぁと笑いながらスザクがこたえ言葉を続けた。
「いや、言ったら怒るだろうなぁと思って」
「保証はないとはいえないな」
 でしょう、と笑い声。そしてそれ以上の言葉は紡がれることはなく、不気味な程に静かな時が流れていった。
 茜色の空が闇に包まれるのを合図に学園のチャイムが鳴り響く。ふと視線を壁にかけてある時計に向けたら時刻は既に十八時を過ぎており、部活動を行っていた生徒達も徐々にそれぞれの帰路についている。
「帰るか」
「そうだね」
 きりのよいところで作業を中断して腕を伸ばす。隣から欠伸が聞こえて来て視線をそちらへ向ける。
「眠いのか」
「あぁ、うん。最近忙しくて」
 軍が、と付け足したスザクに胸がチリと痛む。
「忙しいのに、こんなところで生徒会の活動なんかしてて大丈夫なのか?」
 ただでさえ、軍と学校の両立した生活は辛いだろうに。ふぅ、と息をつくスザクの横顔には明らかな疲労が見えていた。スザクは、敵だ。黒の騎士団の、いや自分の計画の為にもいつか倒さねばならない相手である。しかしそれ以前に、大切な、大切な。

「この後もまた軍に?」
「ううん、今日はね。セシルさんがお休みをくれたんだよ」
 だから生徒会の活動にも顔をだしてるんだとスザクは説明するように言った。
「だったら、うちに夕飯食べに来ないか」
 ナナリーも、喜ぶから。そういえば、彼が断らないことをルルーシュは知っていた。同じ、妹のように接して来たスザクなら。断った時の罪悪感に苛まれるよりも、彼女の為に歩みを進める選択をする。そんな絶対的な確信があった。
「じゃあ、お邪魔しようかな。でもいきなり過ぎじゃないかな?」
「今連絡しておけば大丈夫」
 スザク一人分くらいなら、なんとかなるさ。そういいながら、ルルーシュは携帯電話を取り出した。

 ***

「そういえばさ」
 うん、と問いかけに反応を示すと『前にもあったよね』という声。
「何が」
「君とこうやって、生徒会室で黙々と作業してるの」
「そういうことか。お前は脈絡も無く話しを振るから全然意味がわからない」
 本当に、そう言いかけてルルーシュは言葉をとめる。そういうところは変わらないな、と言いかけたルルーシュだが今はシャルルのギアスによって記憶を失っていることになっている。スザクにそれを悟られてはいけない。
「本当に、なんだい?」
「いや、本当にお前は頭の中が整理できてないなと思って」
 昔はナナリーと一緒に夕飯を食べた。その話題を出されて、ボロを出してしまえばすぐに皇帝の前へ連れてゆかれるだろう。その前に命の保証さえ無い。
「酷いなぁ、そういえばあの後夕ご飯食べたよね」
 来た、と頭の中で警報が鳴り響いていた。スザクの視線が突き刺さる。分かっている、向こうもそのつもりだ。
「そうだったな。サヨコさんに頼んでスザクの分も頼んだんだ」
 皆で食べたんだよな、と笑みを浮かべた。こんな誘導ごときでボロを出す程馬鹿ではない。スザクの瞳をじっと見つめる。
「そうそう!ほんと、僕ってロロに嫌われてるのかなぁって思ったんだ」
 馬鹿が。ルルーシュは心の中でスザクを嘲笑った。『皆で』ということでロロの名前を出さずに話を進めた。スザクが自分でロロという単語をだしたことでロロが居たということをスザク自身が自分で肯定した。ナイトオブセブンになってもその辺りはスザクらしい。まだまだ詰めが甘い。
「どうしていきなりまた懐かしい話を」
「何となくだよ。そういえばこんなことあったなーと思ってさ」
 何となく、か。本当にそうなのかと思ってしまう。自分を、ゼロを皇帝に。父であるシャルルに売り、ラウンズの地位を手に入れた裏切り者。信用してはいけない。常に疑う姿勢でいなければ、いつ喉元に剣がかけられるかわからない。
「スザク、夕飯食べにくるか」
 だから、敢えて自分から危ない橋を渡ろう。渡りきった時、それが覆しようのない確信に変わるなら。
「遠慮しておくよ。まだラウンズの仕事も残ってるんだ」
 ごめんね、と困ったように笑う。その笑い方だけは、本当に昔と変わらないものでまた胸が痛む。
 同じだ。とルルーシュは思う。困ったように笑うその仕草。諦めているように笑う姿。何もかもを、諦めているように。
 あの笑みをみると、ルルーシュの中に表現し尽くせない程の切なさがこみ上げる。何に悩んでいるのか、何を考えているのか。それは自分の知るところではない。
 だから、近くにいるのにいつもどこか遠い。そんな気がしてならなかった。しかし、側に居ながらも秘密ばかりを持っている自分もまたそう変わらない。故に、距離はあの頃からお互いを伺ったまま動くことがない。

「帰ろうか」
「あぁ、そうだな」
 結局のところ、何も変わらないのかもしれない。



 王座に座り、誰もいない講堂を見つめる。孤独な王といえば格好がつくかもしれない。だけどそんな格好いいものではないな、と自分で自嘲の笑みを浮かべる。
「陛下」
 後ろから声がかかる。声を聞いただけで誰かわかる。
「今は誰もいない、いつも通り話せ」
 暫くの間のあと、わかったという声。まもなく、すべてが終わる。皇帝ルルーシュはすべての悪意を背負って、そして消える。それでゼロレクイエムが成立する。
「間もなく、だね」
「あぁ、俺の役目も終わる」
 王座から立ち上がり、後ろを振り返るルルーシュ。声の主、こと仮面の男はまっすぐルルーシュの方を向いていた。
「自分と対峙しているようで君が悪いな」
「酷いな、一回着てみろと言ったのは君なのに」
 仮面を外すと、茶色い髪の毛がふわりと揺れた。深い森のような緑の瞳が優しく細められる。
「当日サイズがあわなかったとなったら洒落にならないからな。サイズ変更は出来るうちにしておかないと」
 そうだろう、とルルーシュはスザクに話しかけた。そうなんだけどさ、とスザクは少し納得がいっていない様だった。
「なんだ、今更怖じ気づくのか」
「まさか。でも、そうだな。心残りはあるかもしれない」
 そうか、とそれ以上追求はしなかった。枢木スザクは先の大戦で皇帝ルルーシュの、神聖ブリタニア帝国の為にその尊い命を燃やした。心残り、というと幽霊みたいだと思う。
「幽霊みたいなものさ、ゼロは。象徴だから」
「誰がゼロの話をした。お前のことだ」
 まぁ、ゼロも似たようなものかと続ける。ゼロ、且つて黒の騎士団を率いて神聖ブリタニアを倒すと詠ったもの。その素性は黒の騎士団のメンバーでも知らず、謎に包まれている。
「そのゼロが、今やブリタニアの皇帝か。お笑い話だな」
「ルルーシュ、君という人はこんな時も」
「こんなときだからこそだろう。湿っぽいのはもういい」
作品名:True end. 作家名:新羅あおい