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True end.

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 もう、という言葉にスザクは何も言えなくなる。ギアスによって失った人、真実を知ってしまったが故に失ってしまったひと。そして、この計画の為に失った、妹。
 彼には、もう失うものは無いのかもしれない。あるとすれば命だろうか。その命も。
「そんな顔をするな」
 スザクの気持ちを読み取ってか否か、ルルーシュが声をかける。無意識に顔が強面になってしまっていたらしい。出来れば微笑んでいたいのに。
「お前は何も悪くない。今からそんな顔をしてどうする」
 優しさが、逆に辛く感じた。いっそ冷たく、辛くあたってさえくれれば何も戸惑うことはなくなるのに。心残り、といえばそうかもしれない。心は、君に残していきたいだなんて。そんなこと、許されるだろうか。
「スザク?」
 名前を呼ばれて、はじかれるように顔を上げた。いつの間にか俯いてしまっていたらしい。
「大丈夫、お前なら出来る」
「随分とかわれているな。僕は」
「お前だからさ。信用してると言うんだよ」
 信用、その言葉がのしかかる。信用している、期待されるのは嫌いじゃないはずなのに。こんなにも期待されたくないと思うことはもうないだろう。
「ルルーシュ、遠慮はいらないよね」
「無論だ。遠慮なんてしたら俺が辛い」
 全力でぶつかっていくことが、君が望み、君の為になるのならば。
「どうか、今はこの姿でかしずくことをお許しください」
 ルルーシュの前で膝をつく。ルルーシュをじっとみつめて、頭を垂れた。
「皇帝ルルーシュ様の願いの為に」

「それでいい。我が騎士枢木スザク。我が覇道の為、そしてゼロレクイエムの為にその身を捧げよ」
 ルルーシュから手が差し伸べられる、その手をとって口づける。一緒にゆくと決めたあの時から、この運命は予見していたはずなのに。いざ、目の前に迫ってくれば心が邪魔をする。
「ルルーシュ、君と過ごして来たこの時間を僕は忘れないよ」
「突然だな」
「うん、なんかお礼が言いたかったんだ。有り難う」
 ゆっくりと離れてゆく唇、視線を動かして微笑む。釣られるようにルルーシュも微笑んだ。穏やかな時間、それも本当に束の間の時間。
「もう、結構前の話だけど」
「なんだ?」
「ルルーシュって、嘘付くときはしっかり顔みるよね」
 は、と思わずルルーシュは声をあげた。この流れで何故嘘の話になるのか、脈絡のない奴めと思いながらため息をつく。
「普通は、後ろめたくなって視線を逸らせがちだけど」
 ルルーシュは、違うよね。とスザクは続けた。
「逆に、分かりやすいよね」
 癖なのかな。と、スザクは笑う。
「癖、か。そうかもしれないな」
 思い返せば、嘘ばかり付いて来た。生まれも、本名などもすべて。必要な嘘であった。必要でない嘘もあった。だけどどれも意味のあったものであった。
「よくない癖だな」
「そして君はまた、世界に嘘をつく」
 堂々と、群衆の前で。且つての仲間の前で。妹の前で嘘をつく。
「嘘でなりたった人生だな」
「それも少し哀しい気がするけれど」
 確かに、君の嘘で傷ついた人もいた。その嘘を真実にしろと言ったのは自分だ。今は少し、そういってしまったことをスザクは後悔していた。
「君が、これからつく嘘を」
 いつか、真実を話せたら良いのに。
「僕は、全力でサポートするよ」


 神聖ブリタニアの若くして唯一皇帝。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。その生涯は常に波乱に包まれていた。
 そんな伝記でもいい。君が生きて来たという足跡。そして君が過ごして来た本当のことを、いつか。ずっと先でいい。変えてゆけたらいいのに。

「君と出会えたことを、心から感謝するよ」
「そうだな、俺もお前という友人を持てて幸せだったよ」


 ルルーシュが、幸せだったと言ったことに。少しだけ心が泣いていた。

「ルルーシュ、もし僕が君に嘘をついているっていったらどうする?」
「またいきなりだな」
 例えばどんな嘘かにもよるな、ずっと昔からついてた嘘。最近ついた嘘。本当のことを知ってしまったら、傷ついてしまう程のものなのか。
「嘘にも色々あるし」
 ふむ、と人差し指をあごにかけてルルーシュはまた玉座に座り込む。スザクは真剣に考えるルルーシュの姿をみて思わずくすりと笑みを浮かべた。
「笑うなスザク。お前が言い出したんだろう」
「そうだけど、そこまで真剣になるとは思わなくて」
 本当にくだらない嘘だよ。とスザクは付け足すが、ルルーシュはそれでもと考え続ける。この時間がずっと続けばいいと思うのは許されない。だけど、もし叶うならとルルーシュは思ってしまう。
「正解は」
「待てスザク。まだだ」
 えぇ、と間延びしたスザクの声。唸るルルーシュの声。広い広い空間に響く二人の声。

「ルルーシュ」
 ゼロを引き継がないっていったら、どうする?
「強制はしない」
 沈黙をはさみ、ルルーシュがこたえる。凛と、戸惑いのない声に逆に焦りを感じた。
「だが、お前はそれをしない」
 強い声。どうなんだ、そうなのか。と問いつめる声に応えるようにごめんね、と言った。僕は、知っていたはずなのに。君を試すようなまねをした。
「本気なら怒らない、冗談なら今すぐこの場から消えろ」
「イエス、ユアマジェスティ」
 ふん、とそっぽを抜いてしまった主にゆっくりと礼をしてその場を立ち去る。何を、しているんだろう。誰もいない廊下を歩き続けると視界に入る鮮やかな黄緑。
「こんな時に喧嘩か?」
 ふふ、と笑う魔女が立ちふさがる。
「少し彼を怒らせてしまっただけだ」
「ご機嫌取りは余計にあいつの逆鱗に触れるぞ」
 お前なら、尚更な。一時始終をみていた訳ではないのにすべて悟られてしまっている。
「ふれたくてふれてるわけじゃない」
「若いな」
 魔女に比べたらね、と精一杯の皮肉。自室に戻ったスザクは鏡の中の自分と対峙する。ゼロの服をきた自分。仮面をかぶってしまえば正体はそう簡単にバレることはないだろう。
「そんな顔をしないでくれ、ゼロ」
 本当の君は、もっと自信に溢れてるんだろう。
「そんな顔、似合わないよ」
 


 静かな空間に響く足音。その音を聞いてルルーシュはため息をついて玉座から立ち上がった。振り向きは、しない。そこにいるのが誰かを知っているから。
「戻ってきたのか」
「命令に背いたことをお許しください」
 下げられた頭。ゼロの衣装ではない、騎士の服。
「スザク」
「はい」
「やめても、いいんだぞ」
 ルルーシュは振り返り、スザクの顔をじっとみつめる。引き返すなら、今だぞ。なんて思っているんだろうなぁとスザクもルルーシュを見つめる。

「いや、これは誰かがやらないといけない」
 それにね、とスザクは笑う。
「それは、嘘でしょ。ルルーシュ」
 やめてもいいなんて、君らしくない。
「目をじっとみながら話すのは、君が嘘をつく時の癖」
「嘘なんかじゃ」
「それも嘘。ねぇ、ルルーシュ」

 君が好きなんだけど。

 唇を押し付ける。ルルーシュの目が見開いて、そして閉じられる。長く長く感じられたその一瞬、二人の視線が重なり合う。
「嘘だと思う?それとも真実だと思う?」
「嘘だな」
 即答なの、とスザクが笑う。吐息が唇にかかって、とても扇情的になる。
作品名:True end. 作家名:新羅あおい