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氷雲しょういち
氷雲しょういち
novelistID. 39642
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黒子のメモリ 桃井のナヤミ

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残念に思いながら、赤司たちが来る前に、と仲裁に入る桃井であった。
ちなみに、聞いたには聞いたから、と、紫原は桃井の苦悩を知らず、まうい棒を腹に納めたのだった。

紫原の代行、失敗。

さて、実に困った。
自分では恥ずかしすぎて聞けず、青峰たち以外の部員は黒子を見つけることから困難といった具合である。
かといって、諦めるのも悔しく。
悩みながら、なんとなく図書館に向かった。
そこには、司書の先生と、図書委員であり桃井と仲のよい真田佑理がいた。
真田は栗色の髪を背中に流して、椅子に座っていた。
彼女は桃井に気付くと手を振って、「桃井〜」と呼んだ。桃井もそこへ向かう。
「どうしたの、佑理?」
「いやあ、貸し出しの統計あるでしょ。あれが大変すぎて、あまりの3クラス分、やってるの。良ければ、手伝って。頼む!」
と拝まれては退けない。
桃井は自分の学年の1クラス分を担った。
40人強の貸し出しカードを片手に、もう片手にはシャーペンを持って、手を動かした。
出席番号が25を越え、男子が終わるところで、
「あれ?」
と桃井はカードを見直した。
クラスの表とカードを見返し、ようやく彼の、黒子のカードを見落としていたことに気づいた。
クラス番号を見ても忘れていたとは我ながら迂闊である。
(テツくんのは、最後に見ようっと)
そう思って、女子を終わらせ、黒子のカードを見た。
乙女としては、かなり嬉しい場面である。
(さあ、テツくんはー、なにを借りてるのかなー……うん?)
桃井は肝心なことを思い出した。
そして、カードを見やり、こっそりスカウディングを開始した。
そして、黒子の借りた本の題名から、ジャンルを回想・類推し、次に借りるであろうジャンルを見極め、貸し出し日数から読む速度を鑑み、貸す本を見つけた。
「よしっ!!」
桃井は大きなガッツポーズを決め、表を渡して、自分の知っている、かつ先程のスカウディングの結果に該当しうる本を選び抜いた。

そして、翌日。
「テ、テツくん!」
桃井は部活中の黒子を呼び止め、渾身の勇気を振り絞り、本を差し出した。
その本は、運命か偶然か、桃井が一番好きな本であった。
「はい、これ、私の一番大好きな本なの!今度の読書の時間に読んでみて!」
黒子は本を見て、桃井を見て、笑顔でそれを受け取った。
「ありがとうございます。大切に読みますね」
黒子の優しい言葉と温かい眼差しに心を打たれ、桃井は本が手から離れた途端、彼女の思考は停止した。
黒子はそんな桃井をいざ知らず、バスケットボールを左手に、右手には桃井からの本を抱え、更衣室に入っていった。
刹那、桃井はパタンッと倒れ、嬉しさに躍る心臓を必死に諫めた。
しかし抑えきれず、「やったー!」とその場を飛び上がったのだった。

桃井の実行、大成功。



NG
桃井の図書カードの手伝い中。
桃井「あ、ミドリンのだ」
カードには、
『最強占い列伝』
『漢詩大百科』
『先取り必勝勉強術』
などがびっしり。
桃井(ミドリン……すごっ)