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気まぐれ天使の異世界記録 2

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 恥ずかしさで顔がカァーーっと熱くなる。そんなオレの顔を見て医者の人は朗らかに笑う。



「ハッハッハッ!別にお金なら気にしなくていいよ。お店の物を持っていくよりは安心だ」

「うっ、すみません。今度お金で返しに行きます…」

「それならもういいよ。それにその返す当ても無いだろうから」

「え、それってどういう―――」

「それより少し栄養を取った方が良い。確かもうすぐ午後だった筈だ。少し早めに彼に食事を持ってきてほしい」

「分かりました」


 看護婦の人は病室から出て行く。


「何から何までありがとうございます…」

「それでは食事が出来るまで少し待っていてくれないか?何、すぐに出来上がるさ」

「はい。ありがとうございました」

「それじゃ、良い子にして待っているんだよ」


 最後にそう言って医者の人と警察官は出て行った。


「ふぅ………」


 ポスッ、と柔らかい枕に頭を沈める。

 予想していた反応よりもずっと優しく対応してくれた。
 正直、ここまで丁寧に対応されるとは思わなかった。こんな事ならもっと早く見つかって轢かれれば良かった。


「いや流石にそれは無い無い」


 自分で一瞬ヤバい方向に思考が向いてしまったがその考えを頭の中から削除する。

 取り敢えず暫くは1年振りの衣食住が確保された生活なんだ。今は休めるだけゆっくり休もう。





  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 病室から二人で退出する。


「どう思う?」


 病室から出るや否や唐突に主語の抜けた質問を投げかけてくる。
 だが、それについては予測済みだ。故に俺は包み隠さず答える。


「怪しすぎる。今まで出会った中でも一際裏がある、と断言出来る」

「………」

「普通あの歳ぐらいの子供はあそこまで落ち着いていない筈だ。子供は初対面の大人に対して何らかの恐怖を抱く筈だ。なのにあの子は寝起きでも冷静に対応してくる」


 何よりあの身体能力はおかしい。
 今はしがない地方交番所に移転されてしまったが、これでも一応実力で本局まで昇り詰めた身だ。子供どころかそこらの青年を一度に複数逮捕出来ると自負している。

 なのに何処の世界にその現役警察官の全速力より速く、かつ遊べる余裕がある子供がいるのだ。

 ―――極めつけはあの跳躍力だ。あれはもう子供が如何とかいうレベルじゃない。人間か人外か如何かの話になってくる。


「僕は君の話を聞いた時は何かの冗談だと思っていたよ。少なくとも助走無しで2mの塀を軽く跳び越え、大型トラックに撥ねられて600ccは出血していたが2km離れた廃屋まで移動した………なんて有り得ないどころか鼻で笑うような話だよ。……そういえばそのトラックの運転手捕まえたの?」

「勿論な。つっても俺はもう限界だったから応援呼んだんだけどな」


 背けていた顔がこっちに振り向く。
 こいつは俺の高校まで一緒に通っていた幼馴染だ。今では少し距離が開いたがそれでもよく話はする仲だ。

「そう、なら良いが…。あの子供の体重は推定30kg前後、人間は体重の約12分の1が血液で、出血量が10%を越えるとまともに立てなくなる。つまりあの子供は血液の20%は無くした状態で2kmも移動したという事になる」

「へぇ……それは知らなかったな。流石は人気イケメンお医者様ってか」

「茶化さないでくれよ。君は無重力空間で地面を歩くように普通に歩ける?」

「…なるほど……そういう事か…」


 宇宙になんざ行ったこと無いが、そういう言い方をするって事は多分そういう事なんだろう。


「それに、ほら。これ見てよ」


 紙を渡される。それはさっきの子供の名前が書かれた紙だった。これが何だ?


「『砂野 莢』って書いてあるでしょ。あのくらいの子供がこの漢字を書けるとでも思う?それも立場があんな悲惨な子供が」

 ―――なるほどな。学校じゃ習わないような漢字を使っている。学校で教わらないなら親にでも聞くしか無い。しかし"子供を捨てる"ような親がそんな事するとは思えない。じゃあ何故知っている?


「一つ分かった事がある」

「え?何だい?」

「お前、絶対俺より刑事向いてる」

「…ありがとね。そういえば万引きのお金のあれってどういう意味なの?」

「ん?あぁ、そのままの意味だ。俺が立て替えてやったから心配要らないぞって」

「へぇ、随分とあの子供に入れ込んでいるじゃないか」

「別にあの子だけじゃねぇよ。ただああいう子供の為に俺は警察官になったんだからな。取り敢えずこの話はまた後でだ。それで?あの子をどうするつもりなんだ?」


「そうだねぇ…。ひとまず暫く此処に居させて様子見かな?本当に脳に障害が有るかもしれないし。というか普通ある筈なんだけど…。あとは適当な孤児院に頼もうかな?」

「そこまで考えてたのか……。まぁその孤児院は任しとけ。俺の知り合いが兼営している所がある」

「……僕からしたらいつの間にそんな伝手が出来たか知りたいけど…、よろしく頼むよ」

「あいよ任されましたっと。んじゃ今度向こうの受け入れ準備が出来たらまた連絡するわ」

「はいはい、その時はちゃんと有給取ってから来るようにね」


 ―――ハッハッハッ、下っ端なりには善処はするぜ。それじゃあな。