二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

たとえばこんな間桐の話

INDEX|11ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 



蛇足と言う名のおまけ

 ──十年後。

「兄さん!!ちょっと遠坂さんモグモグしてきます!!」
「変なもん食べちゃいけません!!ぺっしなさい!!……どうした、またおじさん関連か」
「あんなおじんやめろとかゆった!!許さない!!」
「うっわあ馬鹿かあの似非優雅」
 慎二が呆れて溜息を吐く。
 妹と冷戦してるのはいいが、いつまでおじさんとの仲を認めない気なのか。
 反対してるのアンタだけだよ、いい加減にしたらどうなの?常々そう思ってはいるが、あちらも意地なのだろう。どうしたって聞き入れない。
「まぁ、そろそろお前も結婚出来る歳だしな。焦ってんだろ、他に味方いないし」
「……兄さんはどうなの?そろそろいい人いないの?」
「めんどい」
「四文字!?もう、兄さんもてるのに勿体無い!!」
「財産目当ての連中なんて御免だね。大体今を余生として生きてる僕にどうしろと。枯れてるぞ、僕は」
「余生長すぎる!!もう、じゃあ余生でいいから一花咲かせようよ!!」
「えー……よし、じゃあ士郎に告白してこよう」
「先輩にっ!?」
「そして振られてふて寝しよう。そうなった僕に気を使って二度とそんな事言えない様にしてやるぞ桜!!」
 慎二、ダッシュ!!
「何その後ろ向き発言っ!?」
 慌ててその後を追う桜。
「士郎ー!!僕だー!!結婚してくれー!!そしてバッサリ振って桜に罪悪感を植え付けてくれー!!」
「思惑全部口にしてるーっ!?ああんもう!!お兄ちゃんのおたんこなすーっ!!」
「お前呼び方と悪口のレベルが昔に戻ってるぞ!?」
 今日も間桐の兄妹は、騒がしくも仲良しである。



「旦那ー、今日の飯、なんにしよっかー」
「そうですねぇ……。リュウノスケの作って下さるものであれば、私はそれだけで満たされるのですが」
「もー、旦那はいっつもそればっかりだなぁ」
「申し訳ありません、リュウノスケ」
「いいよいいよ謝んなくて。……旦那がそう言ってくれるのは、嬉しいし」
「リュウノスケ……」
「えへへっ」
 キャスター組、雨生龍之介とジル・ド・レェは現在監視を付けられ、某アパートの一室に押し込められている。
 アサシン達と共に教会の手伝いや、諸々の裏方の仕事に駆り出される事はあるが、他に大した束縛がある訳でもなく。
 再び殺人に手を染め様とすれば、その時点で適切な処置をされるのだろうが、それは当然で。
 物足りなさを感じながらも、相変わらず仲良く、まったりと過ごしていたりする。
 ……しかし、たまに。
「やあ冬木の殺人鬼達!!凛の事を考えていたらあの時の怒りがぶり返してしまったよ!!焼いていいよね!!」
「うわあああ旦那逃げてー!!逃げてぇぇぇー!!!」
「リュウノスケこそお逃げなさい!!」
「何だいその仲睦まじさ!!私に対する当て付けなのかい畜生葵も凛も桜も綺礼までもが雁夜の味方なんて何故なんだい悔しいよ酷過ぎるよふぁいやぁぁぁ!!」
「アンタ相変わらずだな!!」
「結界があるとはいえ加減くらいなさったらどうなのです!!」
 ……八つ当たりやストレス解消の為に時臣が凛の件を持ち出しつつ二人を焼きに来るのだった。
 最後は結局自身のうっかりですっこけて自爆する時臣を綺礼が迎えに来て終わるが。
「旦那ぁ、超COOLだったよ!!」
「久し振りに魔術を行使致しました……。宝具を奪われなかったのは僥倖でしたね……」
「……あー、ところでさぁ、旦那……今日はカップ麺でいいかな……」
「勿論、構いませんよ」
「そっか、良かった」
 笑い合って、隣の部屋へ。
 このアパート全体が貸し切り状態な為、住む場所には困らない。が、いちいち部屋ごと焼かれていたら、中にある食料や生活用品、雑貨その他がダメになる。
「……次からは、荷物とか他の部屋に移しとこうか」
「そうですね。無駄だとは思いますが、あの者への苦情も出しておきましょう」
「だねー」
 冬木の殺人鬼、雨生龍之介とジル・ド・レェ。
 聖杯の穢れの疑惑、聖杯戦争に関わる者達の集結、そして停戦の知らせ。
 それらが早まった結果、この二人が捕らえられたのも早く。
 満足のいくアートなどは作れなかったものの、二人は今現在、結構幸せなのだった。



「それにしても、士郎君凄いよなぁ。あの料理の腕!!切嗣さんが孤児院から引き取ったって聞いた時は驚いたけど、ほんといい子だし」
「慎二達とも仲良くしてくれるしな。そういや、衛宮家でそーゆーとこに援助もしてるんだっけ。贖罪とか罪滅ぼしで。まぁ、何が理由でもいーけどさ。……正義の味方、ではないかもしれないけど、そっちの方がよっぽど人助けになってるよな」
「だな」
 のんべんだらりとほのぼのと。間桐の兄弟は朗らかに笑いながら語り合う。
「そういえば、ウェイバー君からエアメール届いてたよ」
「征服王と世界中回ってんだっけか」
「なっついなー。俺もルポライターの仕事でいろんな所行ったもんだ」
「そうだなー。……行きたいか?」
「いや。俺はもう間桐だからな。此処を離れる気は無いよ。行くとしたら家族全員でかなー。あ、それもう仕事じゃねえ」
「ただの旅行だな」
 今も一応ライターの仕事はしているが、全て家で出来る類のものだ。
 雁夜としては、もう家族と離れる気は無い。諦観や何かに対する不安によるものではなく、ただ己がそうしたいだけなので。
 負の感情を欠片も持たずにからから笑う雁夜に、鶴野も笑う。
「あれ、そんじゃあの子、魔術師としての道は諦めたのか?」
「いや、それはそれでやってるらしい。征服王の傍らに在る為に、力は必要だからってさ。まぁ、人の指導とかの方が才能あるらしいけど」
「指導かー。雁夜も少し教わったんだっけ」
「うん、ケイネス先生と一緒にな。いやー、あん時は巻き込んだ巻き込んだ」
「戦争中はあんまり接点無かったけどなー」
 そして遠坂家の修羅場を見る事も無かったという幸運値の高いウェイバーであった。
「その後でフツーに会って、酒盛りしたのは良い思い出!!」
「それ兄貴と征服王の思い出だろ。あー、ケイネス先生達も元気かなぁ。国帰っちゃったからなー」
「まぁ、また来るだろ。子供連れて」
「デレデレで」
「子煩悩で」
 言い合って、笑い合う。
「ケイネス先生はいっつもしかめっ面で取っ付き難かったけど、実はいい人だったからなー。へー、ソラウさんとは政略結婚なんだー、とか言ったら、だが私はソラウを心から愛している!!とか叫んだし」
「おお、情熱的ぃ!!」
「それソラウさんに聞かれてわたわたしてたけど。恥ずかしがり屋でツンデレの、可愛い人だったよ、最初から」
「本人にそれ言ったらひっでえ事になりそうだなー」
「もう十年前にはソラウさんに何か言われたのか、結構吹っ切って開き直ってたから、顔赤くする位じゃないかな」
 いや、男に言われちゃ気色悪いってバッサリかな、と雁夜が微笑う。
 その様子を想像したのか、鶴野もけらけら笑って。
「やっぱアレだな、開き直って吹っ切ると、人間強いな」
 その言葉に雁夜は目を瞬かせ、そして。
「それを俺が知ったのは、兄貴のおかげだったよ」
 自慢の兄だ。
 楽しそうに、嬉しそうに、幸せそうに、弟にそう告げられて。