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幻の月は空に輝く0・転生の章

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 小さな子の名前がわからない私は、ここで言葉に詰まった。
 あれだけ追いかけていたのに、名前すらわからないなんてと衝撃を受ける私に、小さな子は多分だけど、私の横にちょこん、と座ってくれた。

《天禍。天の禍(ワザワイ)だ》

「(天禍…? ワザワイ? んんんんんー)」

《………》

 名前。
 天禍の名前。
 問題は禍の部分かな。
 こんな時目が見えないのは不便なんだなって思ったけど、私は目が見えない代わりに身体を使って天禍を抱きしめた。
 うん。暖かい。

「(じゃあ、天華で。天の華。髪の毛はふわふわ。肌はしっとり。テンカは可愛い。私の可愛い弟妹だ)」

 テンカの声が沈んでいたような気がして、私なりに動かない脳みそを使いまくったんだけど、テンカからの反応は特になかった。
 その途端不安になる心。
 
《天の華、弟妹か。我は…いや、ランセイ。今日より、我とお主は姉弟だ。その証として、そなたにのみ、我は天華となろう》 

 なんていうか、多分つっこみ所は色々とあったんだと思う。
 けれどこの時の私は、弟妹――どっちかわからないけど、まぁ、いっか――が出来た事に浮かれまくってて、まったく気にならなかった。
 ちなみに、弟妹が出来た喜びの次の日、私は衝撃的な事実を知る事になるんだけど、そんな事はまだもう少し先の話。
 私は、天華を抱きしめながら、穏やかな気持ちで眠りへと誘われていったのだった。