二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

凌霄花 《第一章 春の名残》

INDEX|20ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

「そうですなぁ…」




 二人の立ち話を見ていた早苗と助三郎は、大いに落胆した。
なぜならば、二人には『大石内蔵助良雄』は偉大であるいう人物像が有ったからだった。
 それは、助三郎が仕事の際、資料で『大石内蔵助良雄』の功績を眼にした事から来たものだった。
 
 内蔵助は、備中松山藩(*3)改易の折、城の明け渡しを拒み徹底抗戦の構えに入ろうとした水谷家家臣を説得し、無血開城に導いた(*4)。
 感心した助三郎は、家に帰るとこの事を早苗に語って聞かせた。
それ故、彼女も夫と同じく内蔵助に期待をしていた。
 
 しかし、現実は違った。

「…やっぱり、噂通りの、昼行灯か?」

 幻滅した様子の助三郎が、弥七に聞いた。
彼からは否定の返事が返って来た。

「いいえ、違いますぜ。あの方は、本物だ。昼行燈じゃねぇ…。闇を照らす行燈になる筈だ」

 人一倍、人の心、中身を見る彼の言葉に、早苗は期待した。

「昼間の行燈じゃなくて、闇夜の行燈か…」

 再び、内蔵助を見やると彼は家路に着く所ようだった。
それに倣い、四人も隠れ家へと足を向けた。

 その時、彼らの背後から大声が聞こえた。

「退いてくれ! 急ぎだ! 怪我したくなかったら退け!」

 驚いた四人は思い思いに身を守るため、道の端に寄った。
すると間もなく、猛烈な速さで二つの駕籠が走りすぎて行った。
 

「助さん!」

 早苗はすぐにその籠の意味を察知すると、高鳴る胸を抑えながらその名を読んだ。
これからは仕事。助三郎とは夫婦では無く、同僚。
 
 すると、すぐに声が返って来た。
彼もまた、早苗と心は同じだった。

「格さん! 行くぞ!」

 二人は弥七とお銀と共に、『浅野内匠頭切腹』の報せをもたらした早駕籠を追った。