零崎空識の人間パーティー 13話-18話
<第十三話 来訪する依頼>
空識は起動しているパソコンの前に座り、時々マウスを動かしたりクリックをしていた。
別にいま、空識が起動しているパソコンが、どこかの技術屋が作ったハイスペックコンピュータ―というわけではなく、ただの漫画喫茶に備え付けられている物で、調べていることも血なまぐさい裏の世界のことについてというわけでは全くなく、新しく始まるアニメについてという、なんともいえない物であった。
「おっ、めだかボックス二期かー。パーティーが楽しみだなー」
などと、空識が笑みを浮かべていると、ズボンのポッケットにしまっている携帯が震えた。
「? 誰からだろうー?」
ポケットとから携帯を取り出し画面を見ると、そこには《人類最強の請負人》哀川潤の番号が映されていた。
「…………………」
このまま切ってしまおうか……と一瞬考えたが切ったその後が、尋常なく冗談なく恐ろしいことが起きると思考なく想像できるので、空識は素直に出ることにした。
「ひゃっひゃい! こちらIndex-Libror―――。じゃなくてカミジョーです! ひゃいっっー」
「よし、ゼロスカイだな」
空識渾身の某大食いシスターのものまねは哀川潤に軽くスル―されてしまった。
「………それでなんの用ですかー? 潤さんー」
想像はすでについているが、空識は一応聞いてみる。
「ゼロスカイ、おまえの大好きな仕事の依頼だ、喜べ」
「本音を言わせてもらうと、潤さんの仕事は命に関わることなのでおことわりしたいんですがー、断った方が怖いのでお受けしますー。――それで、今回は何の仕事ですかー?」
そう、空識が聞くと哀川潤はすこし間を開け、含みを効かせるようにゆっくりと言った。 たぶん携帯の向こう側で哀川潤はシニカルな笑みを浮かべているだろう。
「異端中の異端、孤独にして孤高の戦国時代を最も支配したと言われる刀鍛冶。四季崎記紀(しきざききき)の変体刀を集めることが、今回の仕事だ」
<十四話 募集開始>
異端中の異端、孤独にして孤高の戦国時代を最も支配したと言われる刀鍛冶。 四季崎記紀の作り上げた『人が刀を使うのではない――刀が人を作るのだ』という思想を起源に制作された千本の刀。
その、日本刀と称すことが正しいのかためらわれる刀を総称して『変体刀』と言う。
「まっ、千本といってもー。時代の流れのせいでかなり数を少なくしているけどねー」
そして、空識は、いま、とある昔なにに使われていたか分からない古びた建物の前に立っていた。
昔の使用目的が分からなくても、今は分かる、
「ここに変体刀の一本をゲットしたやつ達がいるんだよなー」
そう今は、変体刀の一本を入手した戦闘集団のアジトなのである。
「話し合いをして変体刀を譲ってもらえればいいけどー。まっ、力ずくしか手段はないよなー」
空識が呟き、腰に差したサーベルに手をかけようとしたが、そこにサーベルはなかった。
「ありゃー。この前のでサーベル折れたんだったー、忘れてたー。詰手さんに頼んでおかないといけなかったなー」
頭を抱え悩むようにしたが、
「まっ、大丈夫だろー! 千刀流だしー!」
そう気楽そうに言い、空識は建物の中に入って行った。
<第十五話 突入>
「むっー!」
空識は建物の中に入って、すぐにそれに気づいた。
「これは、血の匂いだなー。しかも、ついさっき流れたー」
そして、そこから導き出される答えは。
「……戦闘中ってところかー。ああもうー、めんどっちー!」
空識はすぐに血の匂いがするほうに駆けて行った。
そして、けっこう広い部屋に血の匂いの元があった。
床に血まみれで転がる。
総勢二十二体の死体。
それは、変体刀を所持している戦闘集団の数と一致していた。
これを、誰がやったのかと空識は思考しなくてもよかった。
ただひとり、その場で生きていた、袖が異常に長い服を着た、血まみれの男を見るだけで充分かった。
血まみれの男は怪我をしているわけではなく。
傷一つ負ってなく。
すべて、床に転がっている奴の返り血だった。
「誰だ?」
その男は空識の方を見て言った。
「俺はただの、変体刀を取りにきた者ですよー」
「『変体刀』……、これのことか」
そう言って、男は肩に掛けている細長い鞄を揺らした。
「たぶん、それですねー。それを、すなおに渡していただければ嬉しいんですが―」
「無理に決まっているだろ、馬鹿か」
「まあー、そうですよねー」空識は溜息と共に軽く言う「『匂宮』の分家である蓬生が仕事を放棄するはけないかー」
「……なぜ、私が蓬生だと分かった」
男は自分の名前を言いあてられ少し驚いたが、すぐに平静を取り戻した。
「まっ、最近アンタと似た服を着た奴と会ったしー、そういうの、オレ分かるんだよなー」
その言葉に得心いったように男は言った。
「なるほど、お前が一春を殺したやつか。ちょうどいい、この蓬生四冬(よもぎうしふゆ)仇討とでも洒落こんでみるか」
そう言うと、男――四冬の袖から鎖につながった鎌が出てきた。
「鎖鎌ねー。おもしろそうじゃんー」
対するように空識は身体をかがめて、駆け出す体勢をとった。
「うじゃー、零崎を開催しようー」
<第十六話 かち合い>
「はっ!!」
四冬が腕をふるうと、鎖鎌がまるで生き物のように襲いかかってきた。
「よっとー」
空識は身体を低くしてそれを避け、そこから床に落ちている、戦闘集団の人間の所有物だったであろうサバイバルナイフを四冬に向かって蹴り飛ばした。
「無駄だ」
しかし、四冬がもう片方の服の袖からも鎖鎌が飛び出し、向かってきたサバイバルナイフを弾いた。
「二本の鎖鎌で遠距離と近距離をかー。すごいなー」
空識は身体を低くしたまま、四冬に向かって駆けて行った。 駆けている途中にサバイバルナイフを二本拾い、両手を地を滑らすように低く構えた。
「いっくよー。二刀・八文字切り」
二本のナイフで漢字の八のように振り上げた。 しかし、その攻撃も四冬が周りを守護するように高速で稼働された鎖鎌の鎖の部分で弾かれてしまった。
「くっー!」
「鎌だけではなく鎖も凶器だぞ」
さらに鎖が空識に襲いかかった。
「やばっー!」
堪らず空識は後ろに飛び退いた。
「これでも食らえー」
さらに、飛び退きながら空識は手に持っているナイフ二本を投擲した。
「無駄だ」
それもさっきと同じように鎖鎌で防御し、もう片方の鎖鎌で空識を追撃してきた。
「応用走法・地抜き後ろ飛びー!」
空識は後ろに倒れこむほどに重心を移して跳んでその追撃をかわしたが、勢いが凄まじ過ぎたため、壁に頭を激突させてしまった。
「痛ってー! やっぱり、この技はまだうまくコントロールできないやー」
頭をさすりながら呟いている空識の頭を狙って、鎖鎌が襲ってきた。
「のわッー!!」
「よそ見している暇はない!」
空識は寸前ところで身体を下してそれを避けた。
「……やるねー、本当にー」
そばに落ちていたサバイバルナイフを拾いながら空識は立ち上がった。
空識は起動しているパソコンの前に座り、時々マウスを動かしたりクリックをしていた。
別にいま、空識が起動しているパソコンが、どこかの技術屋が作ったハイスペックコンピュータ―というわけではなく、ただの漫画喫茶に備え付けられている物で、調べていることも血なまぐさい裏の世界のことについてというわけでは全くなく、新しく始まるアニメについてという、なんともいえない物であった。
「おっ、めだかボックス二期かー。パーティーが楽しみだなー」
などと、空識が笑みを浮かべていると、ズボンのポッケットにしまっている携帯が震えた。
「? 誰からだろうー?」
ポケットとから携帯を取り出し画面を見ると、そこには《人類最強の請負人》哀川潤の番号が映されていた。
「…………………」
このまま切ってしまおうか……と一瞬考えたが切ったその後が、尋常なく冗談なく恐ろしいことが起きると思考なく想像できるので、空識は素直に出ることにした。
「ひゃっひゃい! こちらIndex-Libror―――。じゃなくてカミジョーです! ひゃいっっー」
「よし、ゼロスカイだな」
空識渾身の某大食いシスターのものまねは哀川潤に軽くスル―されてしまった。
「………それでなんの用ですかー? 潤さんー」
想像はすでについているが、空識は一応聞いてみる。
「ゼロスカイ、おまえの大好きな仕事の依頼だ、喜べ」
「本音を言わせてもらうと、潤さんの仕事は命に関わることなのでおことわりしたいんですがー、断った方が怖いのでお受けしますー。――それで、今回は何の仕事ですかー?」
そう、空識が聞くと哀川潤はすこし間を開け、含みを効かせるようにゆっくりと言った。 たぶん携帯の向こう側で哀川潤はシニカルな笑みを浮かべているだろう。
「異端中の異端、孤独にして孤高の戦国時代を最も支配したと言われる刀鍛冶。四季崎記紀(しきざききき)の変体刀を集めることが、今回の仕事だ」
<十四話 募集開始>
異端中の異端、孤独にして孤高の戦国時代を最も支配したと言われる刀鍛冶。 四季崎記紀の作り上げた『人が刀を使うのではない――刀が人を作るのだ』という思想を起源に制作された千本の刀。
その、日本刀と称すことが正しいのかためらわれる刀を総称して『変体刀』と言う。
「まっ、千本といってもー。時代の流れのせいでかなり数を少なくしているけどねー」
そして、空識は、いま、とある昔なにに使われていたか分からない古びた建物の前に立っていた。
昔の使用目的が分からなくても、今は分かる、
「ここに変体刀の一本をゲットしたやつ達がいるんだよなー」
そう今は、変体刀の一本を入手した戦闘集団のアジトなのである。
「話し合いをして変体刀を譲ってもらえればいいけどー。まっ、力ずくしか手段はないよなー」
空識が呟き、腰に差したサーベルに手をかけようとしたが、そこにサーベルはなかった。
「ありゃー。この前のでサーベル折れたんだったー、忘れてたー。詰手さんに頼んでおかないといけなかったなー」
頭を抱え悩むようにしたが、
「まっ、大丈夫だろー! 千刀流だしー!」
そう気楽そうに言い、空識は建物の中に入って行った。
<第十五話 突入>
「むっー!」
空識は建物の中に入って、すぐにそれに気づいた。
「これは、血の匂いだなー。しかも、ついさっき流れたー」
そして、そこから導き出される答えは。
「……戦闘中ってところかー。ああもうー、めんどっちー!」
空識はすぐに血の匂いがするほうに駆けて行った。
そして、けっこう広い部屋に血の匂いの元があった。
床に血まみれで転がる。
総勢二十二体の死体。
それは、変体刀を所持している戦闘集団の数と一致していた。
これを、誰がやったのかと空識は思考しなくてもよかった。
ただひとり、その場で生きていた、袖が異常に長い服を着た、血まみれの男を見るだけで充分かった。
血まみれの男は怪我をしているわけではなく。
傷一つ負ってなく。
すべて、床に転がっている奴の返り血だった。
「誰だ?」
その男は空識の方を見て言った。
「俺はただの、変体刀を取りにきた者ですよー」
「『変体刀』……、これのことか」
そう言って、男は肩に掛けている細長い鞄を揺らした。
「たぶん、それですねー。それを、すなおに渡していただければ嬉しいんですが―」
「無理に決まっているだろ、馬鹿か」
「まあー、そうですよねー」空識は溜息と共に軽く言う「『匂宮』の分家である蓬生が仕事を放棄するはけないかー」
「……なぜ、私が蓬生だと分かった」
男は自分の名前を言いあてられ少し驚いたが、すぐに平静を取り戻した。
「まっ、最近アンタと似た服を着た奴と会ったしー、そういうの、オレ分かるんだよなー」
その言葉に得心いったように男は言った。
「なるほど、お前が一春を殺したやつか。ちょうどいい、この蓬生四冬(よもぎうしふゆ)仇討とでも洒落こんでみるか」
そう言うと、男――四冬の袖から鎖につながった鎌が出てきた。
「鎖鎌ねー。おもしろそうじゃんー」
対するように空識は身体をかがめて、駆け出す体勢をとった。
「うじゃー、零崎を開催しようー」
<第十六話 かち合い>
「はっ!!」
四冬が腕をふるうと、鎖鎌がまるで生き物のように襲いかかってきた。
「よっとー」
空識は身体を低くしてそれを避け、そこから床に落ちている、戦闘集団の人間の所有物だったであろうサバイバルナイフを四冬に向かって蹴り飛ばした。
「無駄だ」
しかし、四冬がもう片方の服の袖からも鎖鎌が飛び出し、向かってきたサバイバルナイフを弾いた。
「二本の鎖鎌で遠距離と近距離をかー。すごいなー」
空識は身体を低くしたまま、四冬に向かって駆けて行った。 駆けている途中にサバイバルナイフを二本拾い、両手を地を滑らすように低く構えた。
「いっくよー。二刀・八文字切り」
二本のナイフで漢字の八のように振り上げた。 しかし、その攻撃も四冬が周りを守護するように高速で稼働された鎖鎌の鎖の部分で弾かれてしまった。
「くっー!」
「鎌だけではなく鎖も凶器だぞ」
さらに鎖が空識に襲いかかった。
「やばっー!」
堪らず空識は後ろに飛び退いた。
「これでも食らえー」
さらに、飛び退きながら空識は手に持っているナイフ二本を投擲した。
「無駄だ」
それもさっきと同じように鎖鎌で防御し、もう片方の鎖鎌で空識を追撃してきた。
「応用走法・地抜き後ろ飛びー!」
空識は後ろに倒れこむほどに重心を移して跳んでその追撃をかわしたが、勢いが凄まじ過ぎたため、壁に頭を激突させてしまった。
「痛ってー! やっぱり、この技はまだうまくコントロールできないやー」
頭をさすりながら呟いている空識の頭を狙って、鎖鎌が襲ってきた。
「のわッー!!」
「よそ見している暇はない!」
空識は寸前ところで身体を下してそれを避けた。
「……やるねー、本当にー」
そばに落ちていたサバイバルナイフを拾いながら空識は立ち上がった。
作品名:零崎空識の人間パーティー 13話-18話 作家名:okurairi