緋弾とニートと愚昧な武偵
「で何しに来たんだよ?」
「あのね、昨日まで合宿で伊勢神宮に行ってたでしょ?、それでキンちゃんのお世話何にもできなかったから」
と白雪はもってきた風呂敷の封を解く、中は弁当箱のようだ。
「しなくていいって」と素っ気なく俺は答える、男子寮なのだから見つかったらいろいろ拙いからな。
顔をやや俯いた後に顔を上げると
「(ウルウル、)クスン....」
(これ以上続きを言うのはやめよう、女泣かせにはなりたくない)
白雪は甲斐甲斐しくも俺の食事や洗濯物の面倒を見てくれる、嬉しいことには嬉しいのだが俺が抱えているあの体質が無ければもっと素直になれていただろう、忌々しいあの体質が無ければ....な。
「キンちゃん、どうしたのお弁当、美味しくなかった?」
俺の浮かない顔を見て心配そうにテーブル越しに顔を寄せてくる白雪、とてもしおらしい顔と相まってセーラー服の胸元に大きな二つの物がチラリと見える。
ドクンッ!と俺の体の芯が熱くなる。
ヤ、ヤベェ、お、落ち着け 落ち着け、俺、相手は幼馴染だぞ!そんな目で見るんじゃねぇ!
「わかったから、白雪、そんなに近くに寄らなくてもいいからさ、な?」
パァァァと顔が明るくなりそんなこんなで時計を見たら7:40分、あと18分後に武偵高行きへのバスが出る、今日も気が滅入るが武装の義務が武偵高の校則なので仕方なく準備をする。
制服の上着の内側にホルスターと拳銃、戸棚の引き出しからバタフライナイフを取り出し開閉動作を行いズボンのポケットに押し込む。
白雪にパソコンのメールを確認してから寮を出て行くと言って行かせ、俺も余裕と言っても二分ぐらい早く寮を出た、な〜に、バスの停留所は寮のすぐ前だ遅れる訳が無い、とたかをくくった挙句。
ブロロロロ〜
バスは行ってしまった、まぁいいだろう今日は始業式だけなのだから授業は無い、自転車でも使ってのんびり行こう、と俺は自転車に跨る。
この時俺、遠山キンジはこの7:58分のバスに乗り遅れたことを一生後悔することになることを俺は気付けて居なかった、そして空から降ってきた女の子によって俺の平穏が音を立てて崩れ落ちていくこととなる。
自転車こぎ続け数分、俺の隣に妙な乗り物が併走してくるが、人は乗っておらず二輪で立って操縦する乗り物、確かセグウェイと言ったか?が近づいてくる。
『ソノチャリニハ バクダンガ シカケテ アリヤガリマス』
ほほう、これは巷で大流行中のボーカロイドで合成した声か、って 爆弾!?おいおい、悪戯にもほどがあるぞ
まさか「武偵殺し」か、いや奴はもう逮捕されたはずじゃ...。
『武偵殺し』その名の通り武偵ばかりを狙った殺人犯だ、主な殺害方法はターゲットを逃げられない状況におびき出し、最後は爆弾でドカン!といった狡猾かつ残忍な奴で犯人と思われる人物は逮捕されたと聞いている、武偵殺しとは俺にとっては因縁があった、俺の兄さん遠山金一がそいつに狙われたのだ。
だがそれは今は問題ではない、何故俺が今 狙われているかなのだ 俺はただのEランク武偵、落ちこぼれだ なんで狙われるんだ? こぎながら理由を考えながらセグウェイから逃げるが
『ソレイジョウ ゲンソク シヤガルト バクハツ シ ヤガリマス』
げ、これより速くかよ、なら誰かに助けを
『ケイタイデンワヲ ツカイヤガッタリ タスケヲ モトメヤガルト バクハツ シ ヤガリマス』
万事休す、ならどこか人気の無い所に行って自転車から飛び降りるしか、そんな考えを見透かされたかセグウェイのハンドル部分に搭載してあるIMI社 短機関銃UZIがその銃口を向けてきた
「文字通り死ぬまで走れか....。」
俺は生涯、この日のことを忘れない、この不幸で奇妙な始まりを...。
鳴海side
四代目からの話が終わり少佐から例のものの説明を軽く受けて、武偵高に向かって自転車をこぐ、路地を抜け、橋を渡り、東京武偵高のある、人口浮島にたどり着くここまでの距離は思った以上に長かった。
地図を見ながら武偵高に続く最短ルートを検討し、わかった上でまたこぎ始めたそのとき目の前を自転車で猛スピードで駆け抜ける、武偵高の生徒と思しき人が目の前を通過した、ここまでなら遅刻寸前の生徒が急いで学校に走る、と言った事だろう。しかし神様のメモ帳にはこう書かれていたのだろう。
「今日ここに、二つの人生の分岐点(ターニングポイント)が示される」と
僕はその人の自転車に引っ付いていた機関銃を乗せた乗り物に物々しさを感じ取り、その人のあとを追いかけた。
「あの、大丈夫ですか!?」
僕はそう問いかける、その人はすごい形相で言い放つ
「来るな!このチャリには爆弾が仕掛けられている!!、お前も巻き込まれるぞ!!」
ば、爆弾?僕はそのとき、この武偵という仕事がどれだけ危険なことなのか正直後悔した、逃げたかった、でも
「ほっとくわけには行かないでしょう!!」
と僕は懐にしまっておいた拳銃を抜くけど、彼に引っ付いている二輪の機関銃の銃口が僕のほうを向き発砲される
ダダダダダダダッ!!
僕は電柱の影や減速を駆使してこれを辛うじて避けるが、防弾制服でない前の高校の制服に銃弾がかすめ、ところどころに血が滲む、それでも何発か二輪に発砲するがさっぱり当たらない。
「クソッ、なんで当たらないんだ!?」
僕はとにかく目の前の状況を見過ごすことができなかった。
鳴海side end
キンジside
(なんだあいつは武偵高の制服でもないのになんで拳銃を持っているんだ?それも俺を助けようとしている?)
だが、仮にセグウェイを破壊したとしてもどうやって離脱する?そんな思考をめぐらせて上を見上げると、
走っているビルの谷間から見えたのは屋上のフェンスの上にたつ桃色のツインテールの女の子だ。おいおい、新学期の日から投身自殺か?命、粗末にすんじゃね〜よって冗談を言ったつもりだったのだが....。
その子は飛び降りたのだ、なんの迷い無く、しかし急降下した所でバッ!とパラシュートが開くそして
「ちょっとアンタ達、さっさと頭下げなさい!!」
その子は降下しながら太ももに仕組まれたホルスターから拳銃を二丁抜き、俺を追っていたセグウェイに打ち込むパラシュートの不安定な体制で、一発も外さず
ダウッ!ダウッ!ダウッ!ダウッ!ダウッ!ダウッ!
計6発撃ち込まれたセグウェイがバランスを失い横転し、その動きを止めるこれで撃たれる心配はなくなったがまだ爆弾を抱えている、この状況からどうやって脱出するか?
「この自転車には爆弾が付いてる!!、お前も巻き込まれるぞ!!」
俺ってバカだよなぁ、自分じゃどうしようもできないのに他人が出してくれた手を振り払う、しかしその子は気にすることなくパラシュートの手で持つ部分を足に引っ掛け空中で逆立ちの状態になる。そして
「武偵憲章一条!『仲間を信じ、仲間を助けよ』だからアンタのことを助ける!いくわよ!」
作品名:緋弾とニートと愚昧な武偵 作家名:札守