二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪割草

INDEX|146ページ/206ページ|

次のページ前のページ
 

助三郎相手にやっていた通りのことをやった。
一応、義勝は木刀を木刀で受け止めてはいたが、屁っ放り腰になっていた。
反撃を待ったが、返ってきたのは木刀ではなく、泣き言だった。

「手加減を!ごめんなさい!わたしの負けです。」

「おや?」

「へぇ。助さんじゃありませんね。やっぱり。」

「ウソ!ぷっ…。」


光圀はあっけにとられ、新助は平然と受け止め、由紀は失礼なことに笑いをこらえていた。
早苗は、手に持っていた木刀をとり落としそうになった。

「ごめんなさい…私、剣術はからきしダメでして。」

「なぜ?」

「苦手で、全くできません。刀が子どもの時からなぜか怖くて…。」

「そうですか…。」

わたしも真剣は怖いから人のこと言えない。
でも、助三郎さまと瓜二つなのにこうも出来ないと…。
剣術がダメでも、他がある。
列挙して聞いてみた。

「柔術はどうです?」

「ダメです…。」

「槍術は?」

「まだ剣術よりはマシですが上手くありません。」

どんどん表情が暗くなってきた。
可哀想になり、やめようかと思ったが最後に一つ確認した。

「では…。弓術は?」

「それは唯一得意です。」
やっと笑顔が戻った。

「さすが若様。見てみたいですね。」

助三郎は弓はやらない。
弓を射る姿を一度見てみたい。
かっこいいかな?


場は和んだが、問題は山積だった。
光圀と相談した上、藩の内情詮索と情報収集はお銀と弥七に任せることになった。
光圀と、義勝の身を守るのは早苗だけ。大変な使命。
ここ最近、仕事中は男でそれ以外は女に戻って自然と女の方が多かった。
しかし、義勝があまりにも心もとないので、一日中男でいることにした。
何かあった時の為。

「格さん。申し訳ありません。私が弱いばっかりに。」

「いえ、構いません。これが私の仕事ですので。」

「そうですか?何かあったら、なんでもおっしゃってください。力になります。」

「フッ。」

「どうしました?」

「いえ、余りに上品なので…。姿が助さんにそっくりなのに。」

「心配ですか?」

当たり前、昨日の晩怖くて眠れなかった。
でも、そんなこと言ったら義さんに迷惑。

「いえ、大丈夫です。あれはあれで命は自分で守るはずですので。」

そうでないと困る。
元気に帰ってきてほしい。
このままお別れなんてイヤ。


しばらく何の手がかりもつかめないまま日が過ぎて行った。
日に日に早苗の心配は募って行った。

夜もあまり眠れない。
怖くてたまに目が覚める。
ふと光圀の隣に寝ている義勝を見て、助三郎が戻ってきたのではと希望を抱く。
しかし、中身が違う。

気休めにクロと遊んでいても、義勝は近寄ろうとしない。
犬が怖いらしく、撫でることができない。
クロも歯を剥いてうなり、吠えかかる。

義勝は将棋が強いので対戦すると面白いが、剣術の稽古はできない。
助三郎とできたことができない。

何より、『早苗』って呼んでくれない。
ほとんど男の姿なので当たり前かもしれないが、『格さん』も調子が全然違う。
声もそっくりなのに…。

新助もやり辛いようだった。
ただでさえ身分が高い方、今までふざけ合っていた助三郎とは違う。
助三郎には睨まれたり、軽く殴られたり絞められたりしたのに、義勝は全然怒らない。
いつも穏やかに過ごしている。
話しかけられる時も、絶対に丁寧な言葉。緊張してしまい、上手く会話できていなかった。


そんなある日、早苗は違和感を覚えた。
くしゃみをしただけで、早苗に戻った。
かと思えば、突然何の前触れもなく格之進に変わっていたこともあった。
なんだろな?

ぼーっとしながら、夜一人考えていた。
寂しさを紛らわすため、助三郎からもらった櫛を荷物から出して、眺めていた。
綺麗な櫛。どうしてこの白い花の柄にしたのかな?聞いてみたい。


そこへ新助がやってきた。

「格さん…。」

「なんだ?」

「心配ですか?助さんのこと。」

「ああ、少しな…。」

「格さん。本当に助さんが好きなんですね…。」

「あれは俺の大切な人だ。俺の命に代えても守る。死んで帰ってくるなんて許さない。」

「あの、おいらにも出来ますかね?そういう大切な人。」

「…ああ、心配するな。新助は面白いし優しい。助さんと違って人の感情がちゃんとわかる。良い娘がきっとみつかる。」

「はい。その時は手引きお願いしますよ。」

「女の子説得してやるな。新助はこんなやつだって。男のほうは助さんに聞くんだな。俺はよく分からないから。」

「やった。でも、格さん、しっかり休んでください。疲れてるみたいですから。」

「ありがとな。」

新助さんなりに励ましてくれた。少しほっとした。
あの人なら本当にいい娘が見つかるはず。
手伝ってあげよう。

「…お前はいま何してる?助三郎…。」

会いたい。無事を確かめたい。



由紀が今度はやってきた。

「ずっと格さんね。疲れない?」

「疲れたが、いつ怪しいやつが侵入してくるかわからない。女だったら危ないだろ。」

「休憩しましょ。早苗、お風呂行こ!」

「……。」

「あ、心配?」

「あぁ。イヤだろ?男とお風呂入る事になったら。」

いきなり変わったり戻ったり不安定になっていることを
由紀には一応言ってあった。

「大丈夫よ。そんなお風呂で上手く変わったりしないわ。」

「そうか?」

「良いから行きましょ。」

ちょっと心配だったが一緒にお風呂へ行った。
久しぶりに早い時間に、暖かい湯に入って、落ち着いてゆったりした気分になった。

「…やっぱり由紀の方が体型良いね。」

「そう?お銀さんが一番よ。」

「そうね。どうやったらあぁなれるかな?」

「さぁ?こうやればいいんじゃない!」

「きゃあ!くすぐったい!やめて!」

「減るもんじゃないから良いでしょ!」

調子に乗って二人でふざけあっていたが、突然由紀が驚いた。

「え?なんで!?」

「…どうした?うわ!」

声が低いことに気付き、視線を恐る恐る下げると、見慣れた女の身体では無かった。

「イヤー!触らないで!」

「お前だって見るな!」

急いで風呂から上がろうとした。

「変態!きゃーっ!」

さすがの由紀もそこまでの免疫は無かったらしく目を覆い叫んでいた。

「騒ぐな、隠してあるから平気だ!」

念の為、自分でも見たくないので隠していた。

「良くない!」
と由紀は言いながらも指の間から覗いていた。

「おい、見るな!」

「見てない!きゃー!」

少し時間がかかったが、元の姿に戻った。

「由紀、もう大丈夫だから。叫ばないで。」

「また勝手に変わったみたいね。」

「うん…。なんでかな?」

「まぁ。気に病まない方がいいわ。さてと、くすぐり合いの再開といきましょうか!」

「キャー!やめて!」

そこへ、血相を変えた新助が風呂場の扉を開けた。

「由紀さん、早苗さん、叫んでどうしたんですか!?大丈夫ですか!?賊ですか!?」

「変態!!覗くな!!」

手元にあった桶や椅子を手当たりしだい彼に投げつけた。

「ごめんなさい!見てません!!」


作品名:雪割草 作家名:喜世