雪割草
激突というか、思いっきり抱きしめられた。
「怖かった。会いたかった。無事で良かった…。」
必死になっているせいか、外見は格之進だが、中身が完璧女の子の早苗だった。
「予定より殿様が早く帰ってきて、お前に連絡がいかなかった。危なかったのに、何もできなかった。でも、でも…。」
どんどん力が強くなってきた。
「わかった。わかったから、離せ!絞め殺す気か!?」
ほんとに死ぬ、このままだと殺される!
「ひどい!俺が心配してたのに!ひどい!」
離してくれたと思ったら、今度はバシバシ叩き始めた。
手が大きいし、力が強いからたまったもんじゃない。
「叩くな、痛い!馬鹿力でやるな!」
甘い感動の再会のはずが、周りに大笑いされることになってしまった。
それから、義勝と小夜を祝福し、家老に藩政の改善を任せ、別れを告げた。
助三郎は、気になった事を許嫁に聞いてみた。
「…早苗、俺と義勝殿のどっちがいい?」
「当たり前にお前だ!」
「味気ないな…。お前って言われても…。」
なぜか彼女の姿は男のままだった。
早苗に戻ってくれなかった。
「俺が好きなのは助三郎だけだ!な、クロ。お前も助三郎が一番だよな?」
「ワンワン!」
真っ黒の塊もくっついてきて離れなかった。
女だらけの城の奥の次は、男だらけの旅の道か…。
「なぁ、格さん、さっきからなんで腕にしがみついてる?」
腕が重く、歩きにくかった。
「良いじゃないか?ずっと一人で寂しかった。やっとお前に会えたんだ。
当分、離さない!ずっと一緒だ!」
余計重くなった。
「ワン!」
「クロもだって。」
「はいはい、格之進殿、クロ殿、わかりましたよ。はぁ…。」
「なんでため息をつく!?」
「何でもない!」
二人と一匹の様子を見ながら、こそこそ話す者がいた。
「新助さん、やっぱりあれは変ね…。」
「ですね。見た目、男同士ですもんね…。」
「よいよい。 仲良きことは美しきかな。はっはっは。」