二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪割草

INDEX|168ページ/206ページ|

次のページ前のページ
 

聞かれるとまずいからの。」

「はい。」





部屋の隅で、許嫁が突き返してきた贈り物だった櫛、手作りしてくれたお守りを手に、一人でぼんやりと考え事をしていた助三郎に光圀は声をかけた。

「助さん。ちょっといいかな?」

「何か私に御用ですか?」

「お前さんに言いたいことがある。嫁についてじゃ。」

「…え?」

「お前さんに新しい縁談を探さねばならんが。どうじゃ、希望はあるかの?」

「縁談など無用です。私には早苗がいます!」

「そのことじゃが…早いうちに婚約破棄して、早苗は忘れて、新しい普通のおなごを探しなさい。」

「なぜです?そんなことできません!」

「…どうしても早苗に諦めがつかないなら、茜さんを嫁にすれば良いではないか?
あの娘となら身分も釣り合う。藩の為にも良い話だ。立身出世も夢ではないぞ。
それに、彼方もお前さんを嫌いではなさそうであったしの。
どうじゃ?ワシの力でどうとでもなるが。」

「お言葉ですが、茜さんは早苗ではありません。姿が瓜二つでも中身が全く違います。
…わたしが好きなのは橋野早苗です。彼女の代わりは絶対にいません!出世の為の結婚などしたくありません!」

「そうは言ってもの…。早苗の中身は消えかけておるではないか。
もうあきらめたほうがお前さんのためじゃ。」

「いいえ、彼女の心は健在です。彼女に『嫌いで顔も見たくない』と言われるまでは諦めたくありません。機嫌が直るまで、謝るつもりです。」



まったくわかっていない。早苗は怒って助三郎を避けているのではない。
心はすでに病んでいる。
女に戻れない恐怖に押しつぶされ、好きな男にとんでもないことを言われ傷ついた。
本心を押し殺し、助三郎を遠ざけたせいで疲れきった。
今にもおかしくなりそうなことに全く気づいていない。

「…口でそう言っておってもの、らちがあかない。わかっておろう?」

「はい。しかし…。」

「あれから何も変わってないではないか。余計悪くなるっておる。
早苗に一方的に投げ飛ばされたそうではないか。それが証拠ではないのか?あれは心まで男になりつつある。」

「……失礼します。」

助三郎は、耐えきれなかったようでどこへともなく足早に去って行った。


脅しをかけてはみたが、何の進展も望めなかった。
早苗が危ない。一刻を争う。
どうしたものか…。


光圀が一人考えているところに早苗が外出から戻ってきた。

「…ご隠居、明日の晩、助さんと二人だけで話させてください。」

「何をする気だ?」

無性にイヤな予感がした。

「これ以上助さんに近寄られたくないので…口ではっきりと言います。
ですから、明日一晩時間をください。」

「わかった。」








早苗が去った後、光圀は弥七をひそかに呼び寄せた。

「…弥七。早苗を明日丸一日見張れ。イヤな予感がする。」

「へい。お任せを。」



作品名:雪割草 作家名:喜世