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雪割草

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約束はしたが、心が病んでいる。不安定なまま。
油断はできない。




それから早苗は昏々と眠り続け、夕方になってやっと眼が覚めた。
つきっきりで様子をうかがっていた助三郎は彼女に声をかけた。

「…大丈夫か?」

「…うん。」

「何か、食べるか?」

「…要らない、食欲ない。」

「喉は乾かないか?」

「…ちょっと。」

白湯を飲ませたが、一口二口だけで済ませ、心此処に有らずの様子でボーっとしていた。



夜も更けてまだ目を開けていた早苗に、助三郎はそっと聞いた。

「…もう寝るか?」

「……。」

なぜか返事は返ってこなかった。


「…おやすみ。何かあったら呼ぶんだぞ。隣にいるからな。」

「…うん。」



ウトウトし始めたころ、隣の部屋から女の泣き叫ぶ声が聞こえた。

「イヤ!行かないで。置いてかないで…。イヤ!!!」

助三郎は飛び起きて、女たちが寝ている部屋のふすまを開けた。

「どうした!?」

「うなされてるの。どうにも落ち着かなくて…。」

「来ないで!いかない!もう行かない!」

眼をつぶったまま叫んでいた早苗を抱き起し、呼びかけた。

「早苗!俺だ、聞こえるか?おい!」

しばらくすると、眼を開けた。
その眼は、恐怖で満たされていた。

「…誰?」

「助三郎だ。安心しろ、夢だ。」

「…本当?居なくならない?置いてかない?」

しがみ付き、良く分からないがぼそぼそとつぶやいていた。

「本当だ。俺はここにずっと早苗の隣にいる。」

強く抱き締めると、早苗は安心したようだった。

「ありがとう…。」

そう言うと気絶するように眠ってしまった。


「…助さん、その子布団に戻しますか?」

「無理だ。がっちり掴んで引き離せない。どうしよう。」


一緒に寝るとご隠居に怒られるだろう。
でも、引き離せない。
無理にやっても、また泣き叫ぶ可能性もある…。

悩んでいると、光圀が起きてきた。

「助さん、早苗が治るまでは一緒に寝なさい。
念のためにお銀と由紀もつける。何かあったら呼びなさい。では、おやすみ。」

「ありがとうございます。おやすみなさい。」





その晩、助三郎は苦しそうに眼をつぶり、自分の着物をがっちりと掴んだままの早苗に詫びつづけ、一睡もしなかった。


「早苗…ごめんな。本当にごめんな。…俺が絶対治してやるから。元のお前に戻してやるから。」



作品名:雪割草 作家名:喜世