二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪割草

INDEX|200ページ/206ページ|

次のページ前のページ
 

「ああ。母上の小言を考えると気鬱になりそうだ。」

「花嫁修行を途中でほっぽりだして男になってたんだもんな。ハハハハ!」

男三人で思い出話に花を咲かせ、楽しい時間は過ぎて行った。
夜中、寝る直前に早苗は助三郎を引き留めた。
返事を猶予していた、例の件だった。

「助さん。そういえば返事を聞いてなかったな。」

「何の話だった?」

「御父上のことだ。会いに行くか?」

「……。」

「怖いのか?」

「……。」

「なぁ、なんで前より怖がりになってる?」

「……。」

なにも話さなくなった許嫁に、なすことがない早苗は突っ込んで聞くのをやめた。

「…すまん。もう聞かない。」

しかし、助三郎はぼそっと一言返した。

「…怖くないか?」

「お前の親だ。祟ったりは絶対ない。俺が付いてるから。行こう。」

「わかった…。墓参りだと思えばいいよな?」

「そうだ。結婚の報告もしないと。」




西山荘から提灯を持ち、夜道を歩いた。
墓場に夜中行くのは、初めてだった。
墓地に近づくにつれ、震えだす助三郎が可哀想でもあり、情けなくもあった。

佐々木家の墓の前までくると、助三郎は観念したようだった。
しかし、念のために念を押した。

「逃げるなよ。」

「わかってる。お前だって脅かすなよ。」

「気絶するんじゃないぞ。ちゃんと義父上呼び出すからな。」

「あぁ…。」


しばらくお墓に手を合わせ、会いたいという気持ちを念じ続けると、功を奏したのか、人の形が現れた。

「龍之介殿ですか?」

『そうだ。何しに来た?』

「貴方の息子連れて来ました。」

『助三郎を?』

次第に形がはっきりしてくる幽霊に、早苗は眼を凝らした。
助三郎に似た若い男が姿を表した。
息子の助三郎はそれに向い勇気を出して話しかけた。

「父上、近々早苗と祝言を挙げますので二人で報告に参りました。」

しかし、返事は拍子抜けするものだった。

『お前男色か?確かに良い男だがまさかお前が…。』

「違います!」

『…ハハハわかってるさ、姿が男だが間違いなく早苗さんだ。よくみるとわかる。綺麗になったな。』

「ありがとうございます。」

やはり蛙の子は蛙。
性格が一緒。おふざけが好き。
少しうれしくなった早苗だった。

『…早苗殿、息子を頼む。』

「はい。義父上。夫と佐々木家を盛りたてる所存にございます。」

『うん。男らしくて気に入った。頑張るんだぞ。』

「はい。」

龍之助は早苗に頼みごとをした。

『早苗殿、息子と二人だけで話したい。外してくれるか?』

「わかりました。じゃあな。しばらくしたら戻ってくる。」


二人きりになった父子は水入らずで話し始めた。

『しっかり大人になったな。俺に似て男前だ。』

「ありがとうございます。」

『小さかったのに。美佳のおかげだな。礼を言ってくれ。』

「はい。」

『千鶴にも会いたいな。また今度連れてきてくれ。』

「あの、ここから離れられないのですか?」

二三度幽霊を見た。
墓があってもなくても変な所に出てきた。
なのに自分の父親は一度も出てこなかった。

『ちょっと障りがあってな。どうしてもしたいことがあって神様と約束したせいで、なかなか出て来られないし、離れるなどともってのほかなんだ。』

「そうですか。では、今回は?」

『特別らしい。』

「へぇ。いろいろあるんですね。」

『助三郎、しっかり家族を守ってくれ。』

「はい。」

『…くれぐれも親戚どもに気を付けろ。いつか必ず相対する時が来る。』

「…わかりました。」

『夫婦ケンカはしないにこした事は無いが、すぐに仲直りするんだ。』

「はい。」

『…美佳によろしくな。花をありがとうってな。』

「…はい。」

『じゃあな。』


さまざまな訓示をもらい、必ず守ろうと心に誓った。
しかし、しこりとして残ったのは、父と母は仲が良かったのか否か。
昔から疑問だったが、わからずじまいだった。
いつかわかるだろうか?
少し期待をもった助三郎だった。

そうしてるところへ、早苗がやってきた。

「どうだった?」

「父上に会えて良かった。ありがとな。」

「そうか。さぁ、かえって寝るか。明日は家に帰れるぞ!」

「そうだ!早苗にも会える!」


作品名:雪割草 作家名:喜世