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雪割草

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 早苗はその言葉に一理あると思った。

「……競争は大事です。でも、それで人に迷惑をかけるなんて間違ってる」

「そうですね」

 早苗は思っていることを、口にした。

「……女は自分の思い通りになるのが当たり前って、押さえつける男は最低なやつだ」

「確かに。おっしゃるとおり」

「でも、そういうやつ多いんですよね……。そうだ、三百年後も今と変わりませんか?」

「……はい、まだこの国には女人に差別が残ってるようです」

 早苗は溜息をついた。
今彼女が男でいなければいけない理由の中に、少なからずその差別があった。
 
「女だって、男と同じ人間だ。もう少し、頭が柔らかくならないんでしょうか?」




 それから二人は思うところを話し合った。
互いの考えを言い合い、有意義な時間が過ぎて言った。
 しかし、いつまでもやっているわけにも行かない。

「まだ少し冷えますね。そろそろ休みましょうか?」

「はい。では、おやすみなさい。格さん……」

「お休みなさい。千代さん……」

 去って行く千代の姿を見て、早苗は思った。
千代は、女の早苗から見ても魅力的だった。
 お淑やかな身のこなし、穏やかな話し方。

 自分には無い物を持つ彼女をうらやみ、深い溜息をついた。
すると突然、彼女の肩を何者かが叩いた。

「よう。格さん。どうだ? その後」

「ひっ!」

 突然のことに、早苗は妙な声を上げ勢いよく振り向いた。
そこにいたのは、助三郎だった。

「何に驚いた?」

「あ、いや、なんでもない…… 何か用か?」

「あぁ。もう寝よう。明日、張り込みだとさ。家老の近辺に俺とお前で」

 早苗はピンと来た。
この事件の解決に向かって、事が動き始めたのがわかった。

「ということは、手筈決まったんだな?」

 助三郎は他の重要な決定事項も彼女に伝えた。

「ああ。ご隠居が藩主に、家老が悪だくみしてるって内容を文に書いた。で、それをお銀が届けに行く」

「そうか。だけど、千代さんは? ほっとくのか?」

 早苗と助三郎、そしてお銀がいなくなれば誰が千代を守るのか。
助三郎は淀みなく答えた。

「心配するな。ご隠居は由紀さんと千代さんと一緒に出かける。親御さんのところで一緒にあの子匿うってさ」

 しかし、早苗はなぜかわからないが小さな不安を感じた。

「……大丈夫なのか? それ?」

「大丈夫だ。弥七いるし」

「あ、そうか。弥七がいれば大丈夫だ」


 仕事の話は終わり、二人は寝所に戻った。
すでに主は布団の中。
 その布団をはさんで、二人はこそこそ喋り始めた。

「……でさ、千代さんとはどうだ?」

「……へ? まぁまぁ、かな?」

 助三郎はその答えに満足顔。

「……いいねぇ。頑張れよ」

「……はぁ? 何を、どう?」

「……男を磨くいい機会だ。できることはなんでもやっとけ」

 早苗は何も返さなかった。
彼の意図するところがわからなかったし、彼が自分を完全男扱いしているのが少し悲しかった。
 それ故、黙ったまま何も言わなかった。


 暫く沈黙が続いた。
そこで助三郎は相棒が話さなくなったことに気付いた。

「……寝たのか。早いな」

 そう言った彼だったが、その次に早苗が聞いたのは規則正しい寝息だった。
 あまりの速さに早苗は驚いて身を起こした。

「もう寝てる。……絶対お前のほうが早いって」

 早苗も布団にもぐり、明日に備えることにした。


作品名:雪割草 作家名:喜世